ランダムな街路樹~市街地植栽の可能性~

異動の途中に寄った大館市の商業施設.。
駐車場外周に植えられた樹林の林冠がなだらかで、とても気持ちがいい。
樹木は、自然発生でも人による植栽でも、寄り集まれば、競合したり空間を譲り合ったりしながら成長し、山の稜線のように穏やかな流線形となる。
これが自然の摂理で、樹木の自然樹形。
樹高や枝張りを均一に揃えようとする街路樹など見ていると、何か息苦しさを感じるけれど、このような、木が木らしい姿をした植栽を見ると、心の底からほっとする。

近づいてみると、コナラ、トチノキ、ケヤキ、ブナなど、土地の自生樹が植えられている。
そして、足元には、梅雨を彩るガクアジサイ。
上部は切り詰めずに下枝のみを払い、適度な空間があるから、見ていてうっとうしさを感じない。


道路側から。
商業施設の外周植栽ではあるけれど、道路に面しているから、街路樹とほぼ同じ条件。
この景観を見て、「街路樹を『自然生態系の一部』と捉えて樹種や大きさに多様性を持たせ、街路樹から街路樹へと野鳥が移動できるような環境を目指した」という、1月の街路樹サミットで聴いた、埼玉県久喜市の街路樹条例を思い出した。
街路樹は、同じ樹種を等間隔に植える並木である必要は無い。
建築限界を満たしていればそれでいい。
樹種も間隔も樹高もランダムであっても、何も問題が無い。
街路樹を計画する側や管理する業者の意識が転換され、落ち葉を受け入れる度量と体制ができれば、市街地での自然植栽も可能。
この景観は素晴らしい。
街路樹の、新たな可能性を見つけた思い。