杜の木漏れ日

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庭185号

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庭185号が発売になった。http://www.ksknet.co.jp/book/search_detail.asp?bc=05002185
今号のタイトルは「作庭家 中野和文の流儀」ということで、熊本県の中野和文さんの特集。

「自然環境再生型庭園」を提唱される中野さんのつくる庭は、本当にこれが人の手でつくられたのかと思うほど、阿蘇の風景を再現したかのような、作為を感じさせない庭だ。
特に、表紙の庭(副題の「市中の森に暮らす」の庭)の水と緑の織り成す「情景」は圧巻で、その美しさには思わずため息が出る。
苔むした護岸と浅く清らかな流れ、水を包み込むようにして生える苔やシダの中に、渾然と林立する大小の幹と、その樹木たちが創り出す木陰と木漏れ日・・・。
こんな景色がどこまでも続いているのではないかと思わせるほど、広がりのある空間。
訪れた人は、ずっとここに佇んでいたいと思うのではないだろうか。
住宅の姿が見えなければ、本当に、どこかの山沢ではないかと錯覚するほど、庭とは思えない光景が広がる。


そんな中野さんの作庭で、今の自分の目を特に引いたのが、山道の砂利と溶岩の扱い。
これまでも、鳥海山や寒風山で産出する溶岩系の軟らかい石を使ってきたけれど、ここまで自然な扱いは出来なかった。
文中では「役石」についても触れているが(全ての石が役を持つという意味で)、中野さんの流れの「岩組」などを見ると、自分のつくる庭はまだまだ、既成の庭の中の役石の扱いから抜け切れていないことを実感する。

上記の庭の砂利の山道には本当に目を奪われ、息を飲んだ。
風雨の浸食で礫混じりの土がむき出しになり、人や獣が歩いて自然に踏み固まったような、細く素朴な山沢の小道。
同じ大きさに揃えられた砂利をただ敷き詰めるのではなく、大小の小石をランダムに敷き、時には敷くというよりも据え、組み、下草や苔との境があるようでないような、そんな山道。

せっかくの園路、石張りやタタキにすれば自分の技術の見せ場も作れ、作り手としての楽しみも満喫できるが、それをすることによって庭の雰囲気を損なうということもある。
自分にもまだ、技術を見せたいと思う欲があるせいか、そんな時はまだ悩む。
石張りやタタキは、庭師にとって高度な技術ではあるけれど、それよりも、なんでもない小石を使って、昔からそこにあったようなさりげない道を創ることのほうが、はるかに難しいのではないかと思う時がある。
通常の庭作りでは、石を張る予算が無くて、仕方なく砂利の園路にすることのほうが多いのではないかと思うが、そんな時の仕上げ方はやはり、同じ大きさで袋詰めされた小砂利を、ただ敷き詰めるだけではないかと思う。
そこにふさわしい道の創り方の選択や技は、頭で考えるよりもずっと難しい。
昨年、自分が意識的に取り組んだのが砂利の山道であったことからも、中野さんの砂利の道は大いに参考になった。


中野さんの庭は、卓越した植栽や流れ、石加工の技術にどうしても目が行ってしまうが、その根底にある一本の筋が、とても素晴らしいと感じた。
「人々の心に『自然を敬う』という種を植え付ける行為が真の庭づくり」と語る中野さんの言葉には、強い共感を覚える。
「庭は自然界への入り口」、「自然界に境界線は無い」、「地球に生かされている」等、作庭私論や作品解説には、我々若い世代への教えとなるような言葉があふれていた。
若いスタッフや仲間にも、ぜひ一読することを勧めたい。


最後の「樹土愛楽」でも、地球を汚し続けてきた我々人類は、今こそ、善の力で地球に貢献しようではないかと結んでいる。
作ることを楽しむだけが庭づくりの醍醐味ではない。
街や自然の環境を守り、再生することも、我々作庭に携わる者に課せられた使命なのだということを、あらためて感じた一冊だった。


※中野造園さんのHPはコチラです。http://www.nakanozouen.co.jp/sakutei/sakutei01.html

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ということで、185号は、自分にとって大変勉強になった一冊でした。

また、今号で「街路樹は泣いている」のコーナーは記念すべきパート⑩を迎えましたが、その中で、私たちのこれまでの活動や取り組みが紹介されたのは、本当にうれしいことです。
地方の片隅のブログから発信する活動に目を留めていただいた編集の皆さまに、この場をお借りして、あらためてお礼を申し上げます。

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<お知らせ>
今日は底冷えのする日でした。
あんまり寒かったので、暖かそうなテンプレートに衣替えしました。

Comments 6

紅の葉  

よっちゃんさんへ

今気付いたのですが、東北は山だらけですね(笑)。
一つ一つ回りたいと思いますので、その節はよろしくお願いいたします^^。





2009/01/09 (Fri) 02:16 | EDIT | REPLY |   

よっちゃん  

NoTitle

安達太良山の次は 蔵王山に来てくださいね(笑)

2009/01/08 (Thu) 21:40 | EDIT | REPLY |   

紅の葉  

メグスリさんへ

毎回は、キツイっす(笑)。
今回は本当に感動したので、ぜひ皆さんにもお知らせしたいと思いました。
感動すると、人にもおすそ分けしたくなるのです(笑)。
これを書くのに5回ぐらい読み返しましたが、作品解説や作庭私論を読んでからまた写真を見直すと、「そうだったのかぁ~!」という部分が出てきて、さらに勉強になりました。

なんにしても、謙虚な気持ちと感謝の心が大切ということを、あらためて教わったような気がします。

2009/01/08 (Thu) 20:02 | EDIT | REPLY |   

紅の葉  

しんぼうさんへ

中野さんの庭、本当に素晴らしいですね。
モウ、はじめから最後まで唸りっぱなしでした。
思いが深まれば深まるほど、庭も深まっていくんでしょうね。
それにしても、17年も自分の考えがブレないというのも凄いです。
後どのぐらい頑張れば、ブレない所までいけるのでしょうね。

中野さんは九州中の山を回られたと言われてました。
まずは、東北の山を見ることから始めなければならないようです。
南からということで、福島の山から見ていこうかな(笑)。

2009/01/08 (Thu) 19:53 | EDIT | REPLY |   

メグスリ  

NoTitle

庭にかかわる者として欠かさず手には入れますが
写真ばかり見て文面はあまり読まなかったりします。
紅さんの解説は親切丁寧なのでとても理解しやすい
ですね。
毎回頼んでもいいですか?^^。

2009/01/08 (Thu) 17:31 | EDIT | REPLY |   

しんぼう  

NoTitle

中野さんの庭、前回特集されていた時から虜でした。次回はどんな庭が見られるのだろうとずっと待っていた甲斐がありました。一気に読んで、また夜な夜な読み返しています。自分も同じ年になった時に中野さんのように貪欲でいられるだろうか・・・またも自分の生き方を反省して見直す機会を与えてくださいました。中野和文さん、編集者各位に感謝であります
街路樹のコーナーも読みがいがありました。秋田から日本中に広まっていますね。すばらしいことでとても感動いたしました

2009/01/06 (Tue) 21:39 | EDIT | REPLY |   

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