杜の木漏れ日

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隠と蔭の使い方~植栽の工夫がもたらす緑の効果

隠&蔭 (1)

窓を開けると飛び込んでくる緑の景色。
5月も半ばを過ぎ,自邸の庭も、日ごと、葉色や木蔭が濃くなってきました。
暮らしの中で木々の変化を体感できるのも、身近に木があるからこその贅沢。
これも、庭に樹木を植えることの特権ですね。

隠&蔭 (1) -2

この庭の植栽は、石組同様に「安定感」を意識していますが、この安定感が生み出されている秘訣は、木々の群落がこんもりとした林冠を形成していることにあります。

隠&蔭1-3

こちらは、山並みの前にあるケヤキの並木です。
自然の山々は穏やかに連なって、なだらかな稜線を描きますが、樹木もまた同じ。
自然界にある形はすべて必然なので違和感が無く、そのような状態が「安定」といえるでしょう。

こうした木の植え方は、『庭暮らしのススメ』で私が担当させていただいた「庭を育み守る」でも紹介していますが、小さな植栽群落を展開させながら全体景観をつくり、大きな森へと導いていく手法です。
この庭の向こうには里山が見えますが、庭を森にすることで、里山という大きな森に繋げる。
既存樹を活かした庭ですが、そんなイメージで配植しています。

隠&蔭 (8)

落葉高木の多いこの庭、葉の無い時は丸見えだった車庫や倉庫、お隣のビニールハウスなどが、葉が茂るにつれて気にならなくなってきました。
家や庭で、気兼ねなくゆっくりしたい時などは、周囲の気配を遮断したい時もある。
塀などで隠す方法もありますが、ここでは硬い構造物ではなく、樹木の重なりで自然に隠すという方法を用いています。

隠&蔭 (9)

園路があっても、見通しが利かないように道を曲がりくねらせ、そこに樹木を配すると、かなりの目隠し効果を得られます。

隠&蔭 (3)
隠&蔭 (7)

作庭前の状態と現在。

隠&蔭 (4)

『庭を育み守る』には、「樹木の適性や特性に合わせた『棲み分け』を考え、植えた後は、木々が順調に『空間の分け合い』を行っていけるような生育を手伝ってあげる」と書いていますが、これが作庭前に設計した成長のイメージ。

隠&蔭 (5)

そしてこちらが、枝張りの様子を上から見たところ。
黄緑が現在の枝張りで、緑が将来的な枝張りです。

隠&蔭 (6)

立面で見たところ。
緑線は、上の写真にある将来的な枝張りの予想です。

「目隠し植栽は立面のカーテンをつくるようなものですが、木蔭を落とすための植栽は、平面に絨毯を広げていくようなイメージでしょうか。
木蔭の下には、日当たりが好きな草花もあれば、木蔭が好きな山野草もある。
今後は、それらの成長に必要な光量を確保するために、時々枝を抜いて木蔭の量を調節しつつ、絨毯の面積は広げていきます


隠&蔭 (5)

先ほどの写真を再掲。
造園設計の平面図では樹木の枝張りはきれいな円形をしていますが、実際の庭では、空間を分け合えるような調整をしていくので、樹木の枝張りは楕円であったり、片側や左右が狭かったりなどします。
それが、この木たちがここで果たす役割であり、この庭に環境適応していく自然樹形であるということです。

隠&蔭 最後

「隠」と「蔭」。
庭の条件はその庭で様々ですが、樹木の効用効果を最大限に使って、心地よい庭暮らしを楽しめたら素敵です。
これは自邸の庭ですが、生活の中ではいろんな視点があり、四六時中暮して見てわかるということもある。

今回、目隠しが不足している箇所には、多少の補植を行いました。
妻に訊いてみると、やはりその部分が気になっていたらしく、それが生活者の視点。
作り手の視点だけではなく、暮らし手の身になって庭を考えるという点では、暮らしながら作る自邸の庭はとても勉強になります。
こうした気遣い、今後の庭づくりに活かしていきましょう。

※参考  
木立をめぐる庭]
空間調整の工夫(落葉高木のスペース配分)  」 

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