杜の木漏れ日

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ふるさとがマイリゾート ~身近にある素敵な光景を探そう~(地元紙寄稿)

mairozo-to (1) mairozo-to (2)

昨日の今日ですが、本日付の北羽新報に拙文が掲載されました。
原文を下記にご紹介いたします。
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『ふるさとがマイリゾート ~身近にある素敵な光景を探そう~』   福岡 徹

 昨秋に発刊された『庭暮らしのススメ』(豊藏均氏編著 建築資料研究社刊)という本に、『庭でマイリゾート』というコラムが掲載されていた。「リゾート」を辞書引きすると、「避暑地、行楽地、保養地」などと出てくるが、イメージとしては、景色のいい海辺や高原などの別荘地を思い浮かべる。日々の喧騒を忘れ、心身共にリラックスできるのがリゾートの魅力。本書では庭を「楽園」と捉え、そんなリゾートの快適さを、自宅で満喫する工夫を書いていた。

◇マイリゾートを探す
 さて、では、自分にとっての「リゾート」とはいったいどんなものだろう?能代に住んでいれば、この言葉で思い浮かぶのは「リゾートしらかみ」。車窓から見える景色が大好きで、時々、妻の実家に行く時に利用する。この、五能線沿いの景色で最も気に入っているのが、深浦町にある「行合崎海岸」。美しい海岸線と、そこからそそり立つ岩壁、その上には草原が広がり、無数の石群が点在する。それだけでも絵になるのに、この草原にはニッコウキスゲの大群落もある。こうした海岸草原地は日本でも珍しく、初めてここに来た時は、昔、『MASTERキートン』(小学館)という漫画で見た、イギリスの海岸風景を思い出した。地名を忘れたので調べてみると、「ペンブロークシャー海岸国立公園」という所が、この行合崎とよく似ている。そんなわけで、リゾートしらかみに乗って妻のふるさとに行き、イギリスの風景に思いを馳せる。それが自分にとってのリゾートだった。

マイリゾート (1) マイリゾート (2) (行合崎海岸)

◇庭をマイリゾートに
 「作庭の源流は自然にある」とはよく言われるが、自然の風景を庭に表すことを「縮景」という。よし、ではこの風景が家にあれば、「庭がマイリゾート」になるのではないか。善は急げ!とばかりに、「妻にふるさとの光景をプレゼントする」ことを建前に、小さな花壇をつくってみた。庭を眺める定位置は、狭いベランダ。そこに折り畳みの椅子を置き、リンゴ箱で作ったテーブルでコーヒーを飲む。休みの日にはコーヒーが缶ビールに変わり、ここでイカでも焼いて食べれば、まさに深浦の風景、海辺でBBQをしているかのような気分になれる。「家に居ながらにして深山幽谷を味わえるのが庭の醍醐味」とは、修行時代の師匠の教え。でもこれからは、家に居ながらにして「海に出かけたつもり」になれるということも、庭を楽しむ醍醐味に加えたい。

マイリゾート (3) マイリゾート暮らし (2) 
(行合崎をモデルにつくった庭と、庭を眺めるベランダ)

◇ふるさとがマイリゾート
こんなふうに、庭暮らしを楽しんでいたある朝、ふと、この「行合崎海岸」の向こうに目をやると、昨日までと違う景色が目に飛び込んできた。水の張られた田んぼに映る里山の、なんと美しいことよ。眼下に広がる水鏡に目を奪われ、思わず、「おお~!」と声を上げてしまった。心が洗われるとは、まさにこんなことを言うのだろう。
『山水に得失無し。得失は人の心にあり(夢想国師)』
この絶景を前にして思い出したのがこの言葉。この言葉はよく、「自然そのものには美は無い。美は、自然を美と思える人の心の中にこそ存在する。」と訳される。毎日目にする何気ない風景の中にも美は転がっていて、そこに自分が気付けるかどうかなのだということを、この景色が教えてくれているような気がする。
この光景は、朝の日差しと静けさ、田植え前のわずかな時間が生み出した一瞬の美。そして、ここに山があり田んぼがあり、田んぼをつくる人がいてこその美。そんなことに感謝しながら、身近なふるさとが一番美しく、心休まる保養地なのだということを実感した。

マイリゾート (4)
(田んぼの水鏡に映る里山)

◇ふるさとは近くにあって気付くもの
妻に、ふるさとを身近で感じてもらいたいと庭をつくったら、実は、近くにあり過ぎる自分のふるさとがマイリゾートだったというこの顛末。ふるさとは、遠くにあって思うものではなく、近くにあって気付くもの。きっとまだまだ、わがふるさとには、自分が気付けずにいる光景が隠れている。今年はそんな美を、もっと見つけてみたい。そうだ、今度は地元で、マイリゾート探しの旅に出よう。近場だから、もちろん歩きで。     (能代市二ツ井町 作庭者)

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yukiaizaki (24)

追記
こちらは、今週見てきた行合崎海岸
ニッコウキスゲは今がちょうど見ごろです。