杜の木漏れ日

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幻の原稿~「大灯籠と大木の共演 ~祭りに加えたい緑の視点~] 

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今回ご紹介する拙文は、昨年9月に、地元紙に寄稿予定だった原稿です。
送稿直前にPCが不調を起こし、寄稿を断念していたものですが、今回、データ整理の最中に偶然出てきました。

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この新聞記事は、2013年の6月30日付の地元紙に掲載された、私の質問に対する能代市の返答
質問は天空の不夜城の運行についてのものでしたが、今回出てきた原稿もまた、それに関する提案です。
なにか、今日のこの日に出てきたということに縁を感じます。
時機を逸したので寄稿はしませんが、このままお蔵入りさせるのも気の毒。
せっかくなので、ここにこの一文を残しておきたいと思います。
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「大灯籠と大木の共演 ~祭りに加えたい緑の視点~]  

お盆休みに五所川原を通りかかった時のこと。大きな建物が気になって覗くと、そこは立佞武多の館でした。初めて目にする大灯籠は噂にたがわず大きく、豪壮でいて繊細。暗い館内に浮き上がる鮮やかな武者人形は幻想的で、まるで、芸術作品を見るようでした。
立佞武多は電線普及と共に小型化し、かつての巨大灯籠の図面が発見されたことを機に80年ぶりに再現されたとのこと。こうした経緯は、100年ぶりの復元を果たした天空の不夜城と似ています。立佞武多のほうが一回り以上先輩(平成10年の復元)ですが、この先例の存在は、不夜城復活を目指した能代にとって、大きな励みになったことでしょう。角館が桜日本一の弘前から学んだように、能代もまた、五所川原から多くのことを学んだように思います。恩は超えて返すのが礼儀。二号機の高さが立佞武多を越えたのは、偉大な先輩に対する恩返しなのかもしれません。
館内説明を読むと、驚いたことに、五所川原も能代と同じく、戦後に二度の大火を経験していました。共に巨大灯籠の復活を成し遂げた先輩後輩は、大災害から復興した街でもあった。五能線の両端に立つ真夏の大灯籠は、市民の底力を示す象徴のようです。

〇運行路に見る五所川原と能代の違い
立佞武多も不夜城も、中心市街地での運行。立佞武多は近代的な街並みを行き、不夜城は古木の多い通りを行く。五所川原では、運行路の電線を地中化し、可動化式の道路標識を設置するなど、佞武多運行を前提とした整備が行われました。一方の能代では、電線地中化を機に復元が検討され、街路樹や道路標識など、既存の道路環境に合わせた運行をしています。
双方の街を見て感じる大きな違いは、運行路に樹木があるかどうか。能代は大火後、防火対策として積極的に街路樹の植栽を行いました。それが現在の緑豊かな街並みとなっていますが、同じく大火を受けた五所川原は中心部に緑が少なく、目にする街路樹も小さく切り詰められています。運行路に街路樹が無いのは、成長すれば支障をきたすであろう樹木を、はじめから植えなかったということでしょう。運行第一の非常に合理的な街づくりですが、外気温が30度を超える真夏は、木蔭の無い街を歩いてみたいという気持ちが失せてしまいます。その点、祭りが終わった後も大きな木蔭で来訪者を歓待するけやき公園の通りを見ると、天空の不夜城は素晴らしい環境で開催されていると感じます。街路樹を祭りの支障となる「マイナス」と捉えるか、街の景観や木蔭をつくる「プラス」と見るか。緑の潤いや街の風格という点では、能代の方に軍配が上がるようです。

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(白神山地を背景に、緑濃い街並みを練り歩く天空の不夜城)

〇祭りに緑の景観を加える視点
街なかに緑があるのとないのとでは、景観に雲泥の差が生じます。緑の中を灯籠が通るのと、構造物の中を通るのとでは、観客が受ける情緒や印象がまるで違うのです。不夜城が通る国道101号には、樹齢300年の大ケヤキが街路樹となっています。これらの大木は、先人が国道を曲げてまで残した緑の遺産であり奇跡。日本の街路樹の歴史が150年の中、中心市街地の国道にある街路樹としては日本一の威容を誇ります。以前、本紙に「横綱たちの潜む森~けやき公園の知られざる魅力(2014年2月18日付文化欄)」という記事を寄せましたが、天空の不夜城もまた、灯籠の中の横綱。能代では年に一度、日本一の城郭灯籠と大木の街路樹が「そろい踏み」をするということです。この祭りの期間を、静と動の東西の横綱が「共演」する機会と捉えたらどうでしょう。五所川原とは違ったオリジナリティを持たせられるように思います。

yokoduna (2) yokoduna (1) (緑があると、大灯籠の姿もさらに生える)

〇常在横綱の存在を活かす
祭りは一年に一度きりで、終われば日常。しかし、日本一の街路樹はその日常の中で立ち続け、樹齢と価値を重ねていく。古木は長生きするほどに価値が上がります。大灯籠が不在の間も、一人横綱として、通年観光の役を担っていけるでしょう。この日本一の街路樹の隣には、能代大火を食い止めたケヤキたちが並んでいますが、能代地区の人でさえ、その経緯を知る人は少ないようです。これらの大木を『能代の古木名木30選』に加えて由来を知らせれば、能代が緑を大切にする街であることが内外に伝わります。祭りも緑も、ふるさと能代の宝物であり、市民の誇り。不夜城の開催を通して、能代のイメージアップがさらに図られればと期待します。

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(静けさの中、街なかに大きな木蔭を落とす常在横綱)

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※「立佞武多」の様子は、キーワードで検索すると、様々な画像が出てきます。併せてご覧ください。