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秋田県能代市で作庭を行う福岡造園のブログです。 日々の仕事や活動等の最新情報を載せていきます。

できない仕事

2017年07月03日
戯言
ポリシーに合わない仕事はしない。
などと言うと、とてもわがままに聞こえるかもしれないが、信念に反する仕事をすることほど嫌なものはなく、それを行うことは信用を落とすことにも直結する。
仕事において、信用は最も大切なこと。
植木屋として、ここは引けない部分というものもあるから、そんな意味では、仕事を選ばせていただいている。

たとえば、どんな仕事が信念に反するかといえば、樹木の生理や健全成長を考えない植栽や手入れの仕事。
検査が通り、工期に間に合えばそれでよしとするような仕事。
木が死んでもいいから植えてくれだとか剪定してくれだとかの、樹木の命や美観を損なうような仕事。

植木屋は、木を生かすため、庭を美しくするために仕事をしている。
それは植木屋にとっての当たり前であり、そこが生命線でもある。
だから、その当たり前を尊重してくれないような仕事はできないし、やらないことにしている。

街路樹の人」にも書いているが、役所にブツ切りの街路樹改善を提案したら、「仕事がほしいんでしょ」的なことを言われたことがあった。
あの時は、「ブツ切りの仕事など、クソも要らない(失礼)」と返したが、まさしくそのような、良くないとわかってやる仕事などは、植木屋の正義や良心に反する。

それでもそんなやりたくない仕事は来るもので、そんな時は、置かれた立場の中で苦しみ、葛藤する。
そして、苦渋の決断の末にすることはいつも、甘んじてその仕事を受けることではなく、それが良い仕事になるよう、変更の提案を申し入れること。
樹木が良くならなければ植える意味も手入れをする意味も無く、それは、そこで暮らす家族や市民のためにならない。
変更するためには自腹を切らなければならないこともあるが、思いが伝わらず、植木屋の責任でそんなことをする時には、この相手との付き合いはこれで終わってもかまわないという気持ちでやることもある。
職人は気持ちで仕事をするから、植木屋としての信念を通せない仕事は、モチベーションが上がらない。
それでも仕事はしっかりとやるが、植木屋の当たり前に理解を示さない相手とは、一緒に仕事をしたくないという思いがある。

なぜこのような依頼が来るのかというと、相手の心の中に、造園屋は誰に頼んでもみな同じという意識があったり、植木屋をただの下請け業者としてしか見ていなかったり、技術者である植木屋に対してあまり高いレベルでの仕事を求めていなかったりなど、その植木屋の技術や作風や考え方を理解しないままに頼んでいることが多い。
そんな状態での仕事は、お金はいただけても信頼関係は築けず、植木屋としての信用も高まらない。
植木屋の信用などはどうでも、「言う通りにやってくれればいいんだよ」的なことを、専門知識の無い行政や建築サイドから言われたこともあるが、植木屋としては、専門知識があるからこそ、言う通りにはできないし、そこは外せないという部分がある。
それが生命線だから、そこを外したら植木屋ではなくなる。
要は、そんな仕事はやらないということではなくて、人のため木のために、「いい仕事をしましょうよ」ということで、そんな思いを同じくする人と仕事をしたいということだ。

ということで、嫌な思いをすることの多い下請け仕事や、植木屋の当たり前に理解を示さない仕事などは、基本的に受けないことにしている。
これがうちのポリシーでもあるが、そんなポリシーを知ってもらうために、そんなポリシーの上に成り立つ技術や作風、考え方を知ってもらうために、ホームページを備えている。


そんな中で、最近、HPを見ての問い合わせで多いのが、樹木の伐採や庭の解体、それに関わる既存樹既存石の引き取りなどだ。
木や石は、庭を解体しなければ搬出できないが、それを無償で提供する代わりに解体と運搬に掛かる費用を持ってもらいたいとか、こちらが解体運搬の費用を持った他に木や石も買い取ってもらいたいなど、こちらが必要としていないものに対してこちら側の負担が大きいという、そんなわりに合わないお話をよくいただく。
木や石は活かしてあげたいし、それを活かすのが植木屋の仕事。
ただ、仕事は慈善事業ではないから、採算の取れないこと、仕事にならないことはできない。
引き取った石が売れるという確証も無ければ、掘り取った木が生きるという補償も無く、そうしたことに人手を掛け、重機や運搬車、保管場所を借りてまで行うことは、貧乏植木屋にとってはリスクが大きく、メリットも少ない。
それを正直に伝えると角が立つ場合もあり、こうした問い合わせは返答に気を遣う。

伐採や庭の解体は木や庭の命に引導を渡すことでもある。
自分が手掛けた庭であれば責任としてやるけれど、そうではない時はとても気が重い。
庭には、作り手や家族の思いがこもっている。
庭の改造なら、その庭で木や石を生かしてあげることができ、庭を生まれ変わらせることができる。
そうではない解体は、ただ庭を破壊するだけだから、あまり気が向かない。
というよりも、とても重くて気の滅入ることだから、こんな話が続くと、心が憂鬱になってくる。

うちのHPでは、木を植えたり手入れをしたり、庭をつくることを業務として紹介している。
ブログも含めて、伐採や庭の解体について書いている箇所も無い。
業務として行わないから、書いていないということだ。
それでも、そんな問い合わせを立て続けにいただくこの頃、できる仕事だけではなく、できない仕事も明記したほうがいいのかと悩んでいる。

komorebibennti (4)
既存の木や石を活かした仕事は嬉しい。
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FUKU
Author: FUKU
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