杜の木漏れ日

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街路樹講演会(あきた白神アダプト)

県講演 (3)

今日は、かねてより依頼を受けておりました、街路樹講演会(秋田県山本地域振興局主催)に出かけてきました。

県講演 (4)

こちらが開催趣旨。
県の関係課(農林部、建設部)や国、周辺市町の担当課が対象なので、行政向けの勉強会です。
杜守Clubは、「あきた白神アダプトプログラム」の協働パートナーとして県道の街路樹ボランティアをしていますが、活動内容には「緑の啓発」もあり、本講演をお引き受けしたのもその一環です。

県講演 (1) 県講演 (31) >

講演のタイトルは、『制約を逆転する知恵と工夫~自然界から学ぶ街路樹のあり方』。
これは、庭誌『街路樹礼賛』に連載記事を書かせていただいた時の、第三回目のテーマ(庭215号)ですが、従来の街路樹の常識から話すのではなく、自然樹形の意味や樹木の理など、自然界の木々の有り様から街路樹のあり方を考えるという、ちょっと違った角度からのお話を交えつつ、これまでに学んだ先進地の取り組みなども併せて紹介しました。

今回は50点ほどの写真と図を用意しましたが、下記にその一部をご紹介します。

県講演PW (5) 県講演PW (6)

講演の趣旨は、この3つのキーワード。
「管理体制」を整備するために大切なことは、しっかりとした方針を持つこと。
ここでは、能代市が打ち出している「自然樹形管理」を例として取り上げました。

県講演P

つづいて、では、「自然樹形とはどういった状態のことを言うのか」を言葉の意味から分析。
同樹種同樹齢の木でも、置かれた環境が違えば違う形になることを紹介しながら、
「自然樹形は、樹木が自ずから環境に適応していった姿」
であるとして、時間を掛けて適応していく自然界の木々に対して、人間の生活支障と共存しなければならない街路樹などは、木々に十分な適応時間を持たせてあげることができない状況にあるため(支障が出たら切らなければならない)、人の側が、この環境では樹木はこんな形になっていくだろうという姿に導いてあげなければならない。
その手段が、「剪定」であるという話をしました。

県講演 外苑 増田町

街路樹をどうしていくかの方針が決まれば、今度はどんな樹形にするのかの目標を定め、目指す樹形に導くための具体的な仕様(方法)をつくります。
たとえば、街路樹で多いのがプラタナスやイチョウ。
一般的な自治体の仕様書では「プラタナスは卵型」、「イチョウは円錐形」とされる傾向がありますが、ここではその根拠を探る中で、イチョウは自然状態で円錐形にならないことを紹介、それでも「イチョウが円錐形」となってしまうことには、円錐形の代表格である神宮外苑の銀杏並木があまりにも有名なために、それがイチョウの理想的な形であるように思われてしまったのではないかと話しました。
加えて、街路樹はヨーロッパから伝わった文化ですが、その樹形は庭園様式の影響を受けており、神宮外苑の並木はフランス整形式庭園、自然樹形が壮観な横浜市の日本大通りはイギリス風景式庭園の雰囲気とよく似ています。
円錐形のイチョウは県内各地で見られますが、大都市の街路樹樹形を田舎の街路樹にそのまま持ち込むと、全国画一の形になり、地域性や街の特色が無くなってしまう。
これからの樹形を考える時は、その地の風景や風土、文化になじむものを考えていくことが大切です。

県講演 (2) 県講演 (6) 県講演 (4)

さてここで、「街路樹の自然樹形」を考える時の参考として、自然界の木々と街路樹の共通性を紹介、自然の有り様を街なかでどのように活かせるかを話していきました。
自然界の樹木には、崖や岩、大木などの障害物がある時、それらの方向に枝を伸ばさなかったり、避けて伸びるという性質があります。
街なかの建物や境界は崖、車は岩、電線は大木の枝と捉えることができますが、実際的に、車は移動するし電線は細い。
まして、物体の無い境界などはただの空間のため、樹木はどんどん枝を伸ばせますが、それでも、ここには崖があり岩があり大木の大枝があり、樹木はその方向に枝を伸ばさないという意識を持って、実際の境界で枝を切らずに幹元から外すと、樹木は越境や建築限界の支障を起こしにくくなり、制約とうまく共生しながら生きている自然界の樹木のような樹形になる。
すなわち、「自然樹形」になるということです。

県講演PW (17)

また、街路樹などは同形同大にされる傾向がありますが、樹木にも人と同じく個性や個体差があり、木々が寄り添えば字の如く『森』のような形となって、その連続は流線型の稜線を描きます。
個の個性や個が集まった集合体の個性を考えずに画一的な形にしてしまうと、樹形は乱れ、元の姿に戻ろうとする。
個を整えて整えた個の集合体にするのではなく、個や集合体がそこでなりたい姿を尊重すれば、個である木も集合体である全体も穏かな姿になり、そうした自然樹形の集合体は、自然樹形の森の様相を呈するでしょう。

県講演 (5) 県講演 (3) 県講演  県講演PW (23)

次に、能代市の街路樹は「樹木の生理に配慮する」ために「自然樹形」の方針を掲げていますが、ここでは、樹木の生理に適う「剪定」で大切なこととして、「切る時期、切る位置、切る量」を上げました。
たとえば、枝葉で樹体を冷やしている真夏の木を丸裸にすればどうなるか、養分を作り終えていない時期に大量の枝を落としたらどうなるか、樹液が動いている時期に太い枝を切るとどうなるか、そんな事例を紹介しつつ、樹木には一度に落とせる枝葉の適量があり、それを超えると、紅葉できなくなったり枝が大量に増えたり葉の大きさや色が変わったり腐食が進行したりなどの異常が起こり、樹木に異変を起こさせないような加減を心掛けることが大切だとの話をしました。

県講演PW (22)

そして切る位置。
これは、『庭暮らしのススメ(豊藏均 編著 建築資料研究社刊』に掲載いただいたものですが、市内公園の桜の剪定痕の変遷の様子。
自然状態の木の枝枯れがどこで止まるのかを観察すると、切り口が塞がる切り方がわかるという説明です。
この理論については、5年前、能代市に対して、市管理樹木の剪定に採用できないかと提案していたところ、今年度より街路樹と公園樹に適用する旨の返事をいただいています。
腐朽を起こす剪定は樹木を衰弱させて倒木に至らしめる危険があり、それは市民の安全に関わること。
この剪定方法は、市民と樹木を守るための、基本中の基本であると言えるでしょうか。

県講演 (1)

続いて、「管理体制」。
良好管理を行うための方法として、誰でもわかるようなわかりやすいビジョンを持つことと(絵でもよい)、仕様書を作成したら、現場でそれを確認すること。
それを施工者と担当者間でしっかりと行い、もし、異動や事業者の交代などで忘れてしまうことが予想される時は、契約書に明記するなど、確実に施行する体制を作ることが必要であることをお話ししました。

県講演PW (28)

そして、『連携』。
街なかには国県市町道の街路樹があり、各行政の連携無くして、その「まち」の緑は良くなりません。
また、街路樹の隣には公園や施設の木々があり、それらを管轄する部署との連携も必要になる。
そうした方々が集まる今日のような勉強の場はとても貴重です。

県講演 (32)

講演の最後は、「街路樹礼賛」の最終回のタイトルを紹介し、「皆さんの街の木々が『愛される街路樹』になれるよう、祈っています。」で締めくくりました。

最後になりますが、講演会の企画をしてくださった振興局の皆さま方と、資料配布のご快諾をいただいた「」誌の澤田忍編集長、ならびに、「庭暮らしのススメ」の編著者である豊藏均氏には、この場を借りて心からのお礼を申し上げます。
今後も、街の木が市民県民国民の『庭』となれるよう、微力ながら、「街路樹のある暮らし」をススメて行きたいと思います。

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追記
閉会後の記者取材の中で、「なぜ自然樹形がいいのか?」との質問がありました。
その答えは、『街路樹の役割である景観や木蔭の創出を実現し、コストや樹木に負荷を掛けず、市民と樹木を守れる姿。』でしょうか。
うまく答えられなかったと思うので、ここに記しておきたいと思います。