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街の緑2(緑の提案と啓蒙:地元紙・専門誌掲載記事)

桜が守った能代の緑 ~自然樹形10年目に思うこと~(地元紙寄稿)

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今日の北羽新報に拙文が掲載されました。
下記が、掲載記事(クリックで拡大できます)と原文になります。

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『 桜が守った能代の緑 ~自然樹形10年目に思うこと~』

 人々に桜の枝を届けるのが春の恒例。手渡す枝の蕾は硬いのに、不思議と相手の顔はほころぶ。「咲」という字には「笑う」という意味があるが、咲く前から人を微笑ませるのが桜の力。笑顔の配達はとても楽しい。桜嫌いだった昔がウソのようだ。

 「花をのみ 待つらん人に山里の 雪間の草の 春を見せばや(きれいな花が咲くことばかりを待ち望む人に、雪間に芽吹く若草の息吹を教えてあげたい)」という歌がある。派手さよりも静けさや自然味を尊ぶ、茶道の精神を表す言葉だ。満開の桜は派手なものの代表格。茶庭に傾倒していた若い頃は、桜にそんな印象を持っていた。
 桜は日本の国花であり、誰からも愛される。反面、そうではない木もあって、一昔前の能代では、イチョウもプラタナスもブツ切りだった。街路樹でも公園でも、桜以外の木は木の形をさせてもらえない。桜だけが特別扱いされているのではないかと、桜のことが嫌いになっていった。

 桜があまり咲かなかった年の春、本紙記者から原因を尋ねられたことがある。よりによって桜のことかと思いつつ、桜のことを知らない自分がいた。そんな時は学ぶチャンスが巡ってくる。その翌月、「全国さくらサミット」が角館で開かれた。桜の先進地が集まり、事例報告や情報交換をする場。そこには、桜を学びたい街や人がたくさん集まっていた。閉会後、講師を務めた角館の樹木医から、「うちは弘前から学んだ」と教えてもらった。弘前市は、サミットの加盟団体ではなく来賓として招かれていた。「桜日本一」の弘前は、別格の存在だった。上には上がいる。どうせなら、日本一の話を現地で聞いてみたいと思った。
 弘前公園を訪ねると、その徹底ぶりに度肝を抜かれた。弘前では、「桜切るバカ」の常識を覆し、積極的な剪定で桜を管理していた。切れば腐る桜を切ることは矛盾する。でも弘前の発想は違っていた。腐らない切り方をすればいい。弘前は、その方法を知っていたのだ。「弘前方式」の根幹を成す剪定理論は、「CODIT理論」と呼ばれる。これは、枝や幹の正確な付け根の位置を知り、そこで切れば腐りが入りにくく切り口も塞がりやすい。剪定の3大原則は、「切る時期、切る位置、切る量」への配慮。その「切る位置」を示すものがこの理論だった。街路樹などは、付け根ではなく枝の途中で切られることが多い。その切り方は桜でなくとも枝を腐らせ、幹の空洞化を招く。腐朽が進行すれば枝折れや倒木を起こし、道路空間では大事故に繋がる。これまで、市県国に「ブツ切りをしてはならない」と言い続けた理由はここにある。
 能代はこの頃、街路樹も公園も「自然樹形」管理に変わっていた。しかし、その後もブツ切りは後を絶たない。適正剪定を制度化し、全庁に徹底させなければ同じことが繰り返されるだろう。桜の剪定理論は、ブツ切りそのものを禁じていた。ブツ切りを撲滅し、適正管理の道を拓くためにも、能代にこの方法を根付かせたい。善は急げ。弘前のやり方を市内の公園で実演し、市県に理論の採用を提案した。

 それから5年。能代市は2017年度から、街路樹、公園樹、施設の樹木に「CODIT理論」による剪定の施行を決めた。時間が掛かったのは、施設を管轄する課が多岐に渡り、指定管理となっている施設もあること。連絡の不備が懸念されるが、逆に、そうした末端まで徹底管理することができれば、能代の街からは完全にブツ切りが消える。
 全国的に見て、市管理樹木のすべてにCODIT理論を施行する自治体は少ない。さすがの弘前でも整備できていない現状にあって、能代では今や、県国道の街路樹にも実施されている。行政の枠を超えて緑の保全を行うのが市の緑の基本計画。実際の街並みに、それが反映されてきているということだ。市外の公共樹の姿を見ればわかるが、能代の緑化管理の体制は今、間違いなく県下一。「ブツ切りの無い街」が実現できれば、日本一も夢ではないだろう。

 市が「街路樹は自然樹形」を表明してから10年目。ブツ切りだらけの能代の街は大きく変わった。桜を守る知恵が街の木を救ったと言っても過言ではない。桜のことを知らなかったおかげで、桜以外の木を守る方法と出会えた。嫌いだった桜のおかげで、街の木を守る体制ができた。今年の春は、大きな感謝を持って満開の桜を眺めたい。
                                    能代市二ツ井町 福岡造園代表作庭者

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ご精読ありがとうございました。
下記は、関連の新聞記事です。

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弘前方式の剪定を実演した時の記事と「CODIT理論」の解説(2012年)