剪定講座開催
前日の新聞に開催案内が掲載されたこともあり申し込みも急増、ありがたいことに、市内外から20名ほどの参加をいただくことが出来ました。
不慣れな素人講師の講座によくもこれだけの人がと、ご参加いただいた皆さんには本当に感謝です。
今回は一般市民向けの講座ですが、参加者の中には役所関係課や議員さん、以前に支柱講習会を開かせていただいた自冶会の方々も来られていてhttp://www.shirakami.or.jp/~niwaya/niwa-kai-07-0501.htm、これまでの会の活動が繋がってきていることを感じます。
このような機会を機に、官民業の連携や協働がさらに深まり、自分たちの手でふるさとの緑を守るという機運が高まってくれたら嬉しいです。

開会寸前に降り出した雨のため、急遽、室内での勉強会に変更となったのは残念でしたが、晴れればお蔵入りの運命だったスライド資料が活かされたので、良しとしましょう。
日が差さなかったおかげで日の目を見ることが出来たこの資料、製作にかなりの時間を掛けたので、役に立ててよかったです。

ということで開会です。
講座は「木に剪定は必要ない。」という話から始めましたが、それではこの講座をやる必要も無く、植木屋が存在する必要も無くなくなってしまいますので、皆さん不思議に思われたかもしれません。
「自然の淘汰に任せなければならない山の木には手を入れてはいけないけれど、人が植えた木に対しては、ある程度の手入れが必要。剪定は、人の暮らしと木の都合の折り合いを付ける調整法で、木を守るためのものでもある。」と続けて、ようやく私も植木屋でいられるようになりました(笑)。

スライドとともに、手作りの紙芝居も併用しましたが、経費節減のため、カレンダーの裏に書いてあります(笑)。
この紙芝居と写真は外での説明用に作ったものですが、せっかくなので使いました。
会場予定だった公園は完成以来15年の間手付かずのまま、園内の樹木には人為的な剪定がされていませんので、今回は参考のため、剪定で傷んだ実例写真を用意していました。
以下は紹介した事例の一部です。


公園や街路樹で見かける良くない切り方


ブツ切りで枯れていく枝


木の生理を無視した強剪定は幹枯れの元になり、倒木の原因となる
ここでは、ブツ切りするとどうなるかを説明しながら、自然の枝枯れは徐々に進行するので、枝が枯れるまでの間に木が自分で防御層を作って腐朽菌に対抗しますが、予告のない人為的な剪定は木に防御の間を与えないので腐朽が進行してしまうことなどをお話しました。
では、自然に枯れる枝はそのままでもいいのではないかという疑問も出てくるのですが、いくら防御層が出来ても幹や枝には穴が空いて、それが木の強度を弱める原因になるので、枯れによってできる穴を未然に防いであげるためにも、剪定が必要になるということです。
街路樹の木の枝などが枯れて路上に落ちると大変です。
剪定は、木を丈夫で長持ちさせながらも、人の暮らしの安全を守るという役割もあるということをお話しました。

参加者の皆さんには、このような図解の資料をお渡ししています(またまた手書きですいません)。
この日のメインは,樹木医が採用するCODIT理論を応用した剪定法ということで、腐りが入りにくく樹皮が早期再生できる切断の位置や角度を紹介させていただきました。


適正な角度で切らないとカルスが巻きづらく、腐朽が進行する元になる


適正な角度で切るとカルスが均等に巻き、やがて樹皮は再生する
たいがいの剪定本などには、「木の幹や枝の付け根で切るとよい」と書かれているのですが、その「付け根」がどこなのかは意外とわからないものです。
どこまでが幹でどこまでが枝なのか、従来のフラッシュカットの剪定とブランチカラーを残した剪定ではどう違い、どんな影響がでるのかなども説明しました。
また、この日は、木に負荷を掛けない剪定法として、徒長や不定芽をできるだけ抑えるやり方も紹介しました。


同じ時期に剪定しても,剪定の仕方によってこれほどの違いが出る
「切ったことがわからないのが本当の剪定で、そんな剪定をすると木も切られたことがわからずに、これまでと同じく生きられる。徒長や不定芽が出るのは木が異変を感じている信号。
剪定後も木が樹形を崩さず、木に木らしい姿をさせるのが木に優しい剪定で、それが出来たら、木から植木屋として認められた証拠。でも難しくて、私はまだ、たまにしか木から褒められません。」なんて話をしています。


木に負荷を掛けずに病害虫を防ぐやり方として「透かし」の技法を紹介しましたが、雪国では特にこの剪定法が有効であることをお話しました。
当地では刈り込み物の多いオンコを透かす例はあまりないのですが、「枝の中に入れた腕が枝に引っかからずにスッと抜けるぐらいに透かすと雪害を受けない。」ということには、皆さん驚かれていたようです。

1時間半ほど説明していたら喉が渇いてきました。
外を見ると、なんだか晴れてきています。
よしっ!とばかりに車で3分移動、第二部は、当初の予定の公園で行なうことに。

ということで、紙芝居で学んだことを実際の木を見て確認していきます。
指差す先には何がある?

あ、ホントだ。枝の枯れが幹の盛り上がりの所で止まっている!!
皆さんから、そんな声が聞こえてきました。

樹皮が裂けないように、2回で切るやり方を実演。

胴吹やヒコバエを切るか切らないかの話をしています。
水分を上部の枝先まで送るためには地際や幹に近い枝は切るという考えが多い中、胴吹きやヒコバエはじめ、徒長や不定芽も、木が生きるために出している枝で、養分を作るために大切な枝。
条件が許すなら、枝葉が充実して樹勢が回復してから外したほうがいいという話をしています。

園内にはクロマツやソメイヨシノ、ヤマモミジやエンジュ、コナラなどがかなり近い間隔で混植されていますが、枝張りの出るソメイヨシノに押されて、クロマツの枝がかなり枯れてきていました。
近くの山にはクロマツよりもアカマツが多く、ヤマザクラも生えていますから、土地の自生樹を混植していたら放任状態でももっと違っていたのではないかと思います。
アカマツ林を抜けるとモミジの林になり、川を渡るとコナラの林になる、など、樹種ごとの群落を作ってあげても良かったかもしれません。
またこれは、角館の樹木医さんも言っていたことですが、ソメイヨシノ同士を近く植えれば競合して上に伸び、枝先に付くテングス病などが取りづらくなりますので、木の性質や管理を考えた植栽設計が大切です。
今回は、人と木の共生、木と木の共生を考えて剪定していきましたが、剪定以前に大切なのはやはり設計で、適正な樹種の選定や植栽配置がされていれば、剪定も最小限ですみます。
自然の植生は一番のお手本。
木は生きて成長していくものなのだから、ただ紙の上に○印を付けていくのではなく、公共造園の設計者には、もっとその土地の自然を見て、現場に足を運んで実際に木に触れ、人と木が快適に暮らせる将来を考えてもらいたいと、そんなこともお話しました。

ということで、気が付いたら終了時間を30分オーバー、閉会式となりました。
天候不順で臨機応変な対応に気を使いましたが、室内と野外の両方で出来たので、結果的には良かったのではないかと思います。
拙い講師にお付き合いいただいた皆さま、本当にお疲れさまでした。
今度は、皆さんの近くの公園で会いましょう。
また、講座にあたり、いろいろとご指導いただいた弘前の樹木医の皆さん、本当にありがとうございました。

今回の参加者には、遠く群馬県から参加された方もいて驚きました。
本当にありがたい。
せっかくなので帰りの時間まで、いろいろと庭を見てもらいました。
向上心と問題意識を持っている人は成長します。
君は必ずいい庭師になれる。
これからも応援しています。頑張って下さい。
追記

講座の翌日は、残った木の剪定と、支柱を外しに行きました。
ようやく、役を終えて10年以上経った支柱を、全て外すことができました。
写真は、剪定完了後の姿。
時期と目的、場所に合わせた剪定が大切ということで、樹冠はそのままに自然形を保つこと、成長期なので太い枝は切らないこと、枯枝と病害枝、下枝などを外すことなどを心がけて行ないましたが、公園にも木の内部にもかなりの空間ができてきました。
これで、子供たちも安心して遊びに来れるのではないかと思います。
この日は、主催の公民館の方、公園の管轄課の方も片付けに来られたので助かりました。
皆さん、2日間に渡り、本当にお疲れさまでした。
追追
会場を移動したためご紹介するのを忘れておりましたが、この日の話をわかりやすく書いた本があります。

樹木医さんを指導する先生が書かれた本で、透かし剪定のことなども載っています。
能代の市立図書館にも置いてありますので、興味のある方はどうぞご覧下さい。
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