天堂苑樹
2019年06月16日

お寺の庭にサツキが咲いてきました。
春に、密生していた寄せ植えを移植、石組周りに分散させていたものです。
庭を直させてもらう時、大切にしているのがその庭の意味を知ること。
こちらの考えだけで直さず、持ち主の思いや作り手の意図を尊重するということですが、このサツキの移植先を提案した際にも、石組の本意や理想とする雰囲気を壊してはならないと感じて、作庭当初のコンセプトを伺っていました。

その時に見せていただいたのが、平山郁夫の『天堂苑樹』。
森の中で、お釈迦さまが弟子たちに教えを説いている絵で、この絵が庭のモチーフになっていました。
金色の諸仏が緑の木々の中に浮かぶ光景はとても幻想的で、絵を見てから庭を眺めると、石組の印象も変わっって見えるから不思議なものです。
絵には、釈迦の母親を表した白い象も見えますが、庭の中にも白い石があり、よくこんな石を探してきたものだと、巨石を組まれた苦労と併せ、庭をつくられた庭師さんへの敬意が湧いてきます。

移植前の庭。
絵を見て、ご住職のお話を聞いて、あらためて、ここにサツキが存在する必然性はあるか、サツキが石を取り巻くことで、絵の雰囲気に近づけるか、そんな自己問答の末に、木を植えていきました。

庭に樹々が入ることで石組に活力と繋がりが増し、菩薩さんたちをやさしく包みこんでくれるような存在。
個々の石を光らせつつ、森の中の風情も増す。
時とともにそんな味わいが深まっていくよう、これから手を入れていきたいと思います。