鐘型水琴窟と太鼓橋のある庭~宝勝寺さんの庭②
2019年06月18日

前記事では、宝勝寺さんの鐘楼前の庭(右側)を紹介しました。
続いて今回は、通路を挟んで向かい合う地蔵堂前の様子を。

地蔵堂は以前、大きな杉木立に包まれていたのでしょう。
周囲に残る切り株から昔の様子がしのばれますが、竹垣も古くなったことから、対面する庭の雰囲気と調和するよう、多少の手を加えていきます。

お寺といえば釣鐘ですが、向かいの鐘楼には大きな梵鐘があり、その大鐘と呼応するように、こちらの庭にも鐘をこしらえてみました。

この鐘は水琴窟になっていて、釣り手となる馬蹄に水を掛けると細かな水音を奏でます。

庭には三方から入れますが、鐘を囲むように伝いを配したので、グループで行っても同時に音を楽しめます。
席が二つある露地などでは、両側から柄杓を使えるように役石を配した「両使いの蹲踞」を見掛けることがありますが、この水琴窟は『四方使い』と言えるでしょうか。

こちらには、焼酎甕でつくった小さな水琴窟もありますが、二つの水琴窟の後ろには石のベンチがあり、一休みしながら音を楽しめます。

ベンチに腰掛けると、鐘越しに石庭が見えます。
今回はこの石庭にもサツキを移植しましたが、ちょうど今の時期が花の見頃です。

石のベンチはリバーシブルになっていますが、反対側に座るとこの景色が飛び込んできます。

ベンチの後方には、六地蔵が祀られたお堂があります。

お堂に向かう道は、太鼓橋風の石畳。

通路の両側で向き合う達磨像。
小さい方は庭石を見立てたものですが、達磨が弟子に教えを説いているようにも見えます。

最後は、ベンチ越しに見る紅葉山。
中鐘は、アオダモやリョウブ、ドウダンツツジに囲まれていますが、この木々がフレームとなって、対面する二つの庭が一つに見えます。
宝勝寺さんの庭は、檀家さんでなくとも拝観できます。
庭を楽しみつつ、お寺の文化や心に親しんでいただければと思います。
※作庭の詳細を、ブログカテゴリーの『庭づくり』の方で紹介しています(5月23日「石のベンチ」~6月16日「天堂苑樹」)
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