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作庭紹介

居ながらにして深山幽谷を楽しむ

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大館市で作庭させていただいた庭です。
手前の木製デッキを川に掛かる木橋に見立て、そこから渓流の風情を楽しむというコンセプトでつくりました。

砂利の部分が渓流で、その外側が川岸、真ん中の島は、川の中の岩を表しています。
川や道路などの両側に生える樹々は空間のある上空に枝を伸ばしてきますが、室内から見ると、川岸にあるカエデやアオダモが左右から枝を伸ばし合い、トンネルになるようにしています。

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奥入瀬渓谷を歩いていると、川の中の岩に樹木や山野草が生えている姿を見ることができます。
水量が安定している奥入瀬ならではの景色ですが、そうした岩の連なりを正面から見られる所が、散策路にある木橋。
この庭では、そうした奥入瀬の趣を庭にしています。

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流れは大小の軽石で表していますが、この軽石は十和田湖の噴火の際にできたもの。
奥入瀬は十和田湖を水源にしているため、軽石は奥入瀬を表現するのに最適な素材と言えるでしょう。

渓流なので、奥から手前に勾配が付いています。
下流の底には1m以上の深さで軽石が入っており、浸透桝の役目をしています。
庭を囲む擁壁から排出されてくる戸外の水や屋根の雨水、両岸の表面排水や土中の水などがここに集まり、地下へと浸透していく仕組みです。
川を表現しつつ水はたまらない仕掛けになっていますが、軽石の層は敷地全体に埋設しているため、庭自体が盆栽のような構造をしています。
真ん中の岩島も盆栽に似ていますが、実は室内にも盆栽があり、内外の景色を盆景で繋いでいます。

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こちらは、大館市内にある長走風穴の構造図ですが、植生土壌の下に石の層があるという点では盆栽と同じ。
図では、地上から暖気が入り、地下の冷気が地上に出ていますが、地下に空気が通り、大地がこのような呼吸をしていると、植物が良く育ちます。
この庭にも通気管を設けており、地下の軽石層と繋がっていますが、この図を見ていると、盆栽とはよくできているものだなと感心します。
この庭の構造を考える時のヒントになったのが、お宅にある盆栽と、市内にあるこの風穴。
家を見て土を見、土地を見ることの大切さを学ばせていただきました。

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この部分は、薄手の石を山並みのように組んでいます。
大きな岩が風化して摂理に沿って割れ、硬い部分が残った所に植物が侵入してきたというイメージ。

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手前の石積みは、表土が流れてその下の岩がむき出しになり、横方向に割れが入った様子。
石積みは名の如く石を人工で積んでつくるものですが、この庭では逆に、自然界にある岩や崖が風化して崩れていく様子を表しているので、あまりキッチリとはつくらずに、植物が入り込める隙間を残しています。

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反対方向から。
石積みや石組、飛石は、十和田石と呼ばれる大館産の凝灰岩で統一しています。
軽石も十和田石も作庭地からほど近く、今回は良い素材が揃いました。

手前の植木鉢は通気管の蓋ですが、土中に空気をもたらしつつ、雨水の浸透を助ける装置
風穴の構造のように、地上と地下を空気で繋ぐ仕掛けです。
石組の裏や下草に隠れながら、大小15本程度の管が埋設されています。

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庭の導入部。
庭の奥行きは2m弱しかなく、建物と塀に囲まれた空間は、崖の迫った渓谷のように見えます。
樹木は、ハウチワカエデやヤマモミジ、アオダモなど、奥入瀬で見られる樹種を多用、雪で鍛えられた根曲がりの木が、雪国の風情を高めてくれています。

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こちらは施工前の様子。
樹木が植わることにより、電柱や隣家、塀などの構造物が穏やかにカバーされてきました。

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導入部の伝いと雨落ち、土留めの様子。
屋根からの雨は直線に落ちますが、建物と塀との距離が近い中に雨落の縁を平行に設けると、直線ばかりで庭が硬くなります。
その回避として、伝いや雨落ちのアウトラインをランダムにしています。

割れ肌の一枚岩のあたりがこの庭で最も高い部分ですが、雨落ちとの差は40cmほど。
雨落ちの軽石は約10㎝の厚みがあるので、元地盤から50㎝の土盛りがされています。
これは、樹木の根底は元地盤より高い所にあるということで、その下に、土壌改良した土が1mほど続き、さらにその下には40㎝程度の軽石層があり、その位置まで浸透管が降りていっているため、根は地下の停滞水に触れることなく、酸欠による根腐れも起こりにくい環境ができています。

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ひび割れた露頭岩が道になったような石畳。
この先には下水桝が散在するため、小石の道で対応しています。

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デッキ下は、茶庭の腰掛待合にある、連客石のような配石。
腰を掛けて足を置くための石であり、庭に出るための沓脱石であり、先に向かう通路でもありますが、この部分は木橋の前の渓流になるので、室内から飛石が見えるのは無粋。
目立たないように、真っすぐに通しています。

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庭奥からの振り返り。
左右に植栽スペースがあるため、軽石の雨落と飛石を共存させています。

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ふたたび導入部へ。
庭の入り口には薪小屋がありますが、薪は山の木でつくるもの。
山のような庭なので、ここに薪小屋があるのはとても自然な感じがします。

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今回は奥入瀬渓流をイメージした庭ですが、デッキで一休みさせていただいて頭に浮かんだのが、
『庭は家に居ながらにして、深山幽谷の景趣を体感できるもの。』
という言葉。
修業時代の一服で聞いた師匠の話を、30年ぶりに思い出しました。
この庭も、庭が苔生し、樹々が森になってくるにつれて、徐々に深山幽谷の様相を呈してくるでしょう。
そうした経年変化を楽しんでいただければと思います。
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