白神に続く雑木の庭

先月より、能代市内で取り掛かかっていた庭づくりが完了しました。
塀の無い平坦な芝庭の改修ですが、広い芝生面を活かしながら、近景・中景・遠景に植栽スポットを作り、樹木のカーテンで周囲を目隠ししています。
近景は、コナラやアオダモなどを高木層にして、その下に、マンサクやオオカメノキ、ナツハゼ、クロモジ、リョウブなどの中低木を植え、林床にはヤブランやショウジョバカマを添えるなど、身近な里山の風情を表しています。

雑木林の中を行く小道。
この場所にはもともと砕石の道があり、そこに芝生が侵入していた状態を、そっくり剥ぎ取ってまた道にしました。

森の小道を抜ければ、そこは草原。
そしてまた森に入り、抜ければ里に出て、また野原に出る。そしてまた森へ。
この庭にはそんな物語を付けてみましたが、隣に草地や鎮守の杜があるおかげで、どこまでも野原と森が続いているように見えます。

草原を抜けると、森の入り口は散策路になっています。
右側にはエゴとヤマボウシの株立ち林があり、道を挟んだ左側にはブナの林。
エゴもヤマボウシも里山に生える木で、株立ちは里山の木を萌芽更新してできる樹形ですが、ブナは深山に多いことから1本立ちの木を植えています。
このスペースは、散策路の右側が里山で、そこから深山に繋がっていくような、そんなイメージです。

こちらの園路は、山中の散策路の風情を出したいと思い、枕木(擬木)の道にしています。
所々に隙間を空けているのは、将来、左右の木の根が行き交えるようにするため(根にやさしい道)。
そして、道を下ればレンガのテラスがあり、ベンチで一息付けます。

石のベンチは十和田石の古材を現場で組み合わせたものですが、小さなお子さんでも座れるように、段差を付けてみました。
テラスは広いので、お友達が集まった時などは、ここにテーブルチェアーを置いてもいいでしょう。
テラス周りにはジュンベリーやブルーベリーを植えたので、その場で摘んで食べることもできます。

木々に包まれるテラス。
テラスをレンガにしているのは住宅との調和ですが、葉が茂れば建物や外の道路は見えなくなり、ちょっとした戸外室になるでしょう。

ベンチからの景色。
ここからは本物の野原が見え、その向こうには桜堤と里山が広がり、晴れた日には白神山地を望めます。
白神山地の象徴といえばブナの原生林ですが、左手の樹木が里山にある木々からブナに変わるのは、外の緑の移り変わりに合わせたものです。

ベンチとテラスは斜めになっていますが、それは、この絶好のロケーションを借景として眺めるため。
ここにいると、庭から公園(桜堤)、里山から白神山地へと繋がる緑の回廊が見えるという、なんとも贅沢な場所です。

庭の朝。
植栽を終えた翌日から、毎朝のように迎えてくれたのがこの景色です。
晴れてお引き渡しとなり、今度は訪れる人たちを歓待してくれるでしょう。
芽吹きの春が楽しみですね。
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