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秋田県能代市で作庭を行う福岡造園のブログです。 日々の仕事や活動等の最新情報を載せていきます。

県管理樹木の剪定にガイドラインを(県知事への手紙)

2020年10月20日
街の緑2(緑の提案と啓蒙:地元紙・専門誌掲載記事)
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所用で秋田市まで。
空き時間を利用して、秋田県庁に行ってきました。

今回の大館市や北秋田市の県道街路樹のブツ切りを受け、秋田県全体で良好管理が行われるための方針を作ってもらうべく、提案書(県知事への手紙)』を提出してきました。

下記はその原文です。
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秋田県知事 様
秋田県の緑化管理について、下記の提案を致します。
ご返答のほど、よろしくお願い致します。

○提案
①能代市は、『市管理樹木(街路樹、公園樹、施設の樹木)にブツ切りを行わず、樹木が腐朽しにくく切り口が再生しやすい方法で剪定を行う』ことを昨年の市議会で表明し、市の緑を保護育成するべく全庁で連携を強めていますが、秋田県は各課や各振興局によって様々で、不適正な剪定が各所で起こっています。剪定の基本は『切る時期、切る位置、切る量』への配慮と言われていますが、休眠期(冬期)に行うべき剪定を春夏秋に行ったり、樹木が腐朽を起こし倒木に至るような剪定をしたり、枝葉をすべて刈り取るような度を超えた剪定が度々見られます。この、『切る時期、切る位置、切る量』について、秋田県のガイドラインを設け、県全体で施行することはできませんか。

②秋田県には樹木の専門職員がおらず、専門知識の欠如がこうした事態を起こしています。専門職員の採用や育成を行いつつ、県全体の関係課職員が学ぶ場を作ることはできませんか。

③街路樹のブツ切りは、適正な仕様書を作成し、それを現場で担当課と剪定事業者が確認して見本剪定を行うなどの体制があれば、ある程度は防ぐことができます。山本地域振興局はそうした体制で行っていますが、この基本体制を全県で行うことはできませんか。

④山本地域振興局主催の街路樹講演会で講師を務めた際、秋田県庁のサイトにある唯一の街路樹の記事を紹介しました。真夏に葉を一枚も残さずに木を丸坊主にし、「きれいになりました」という道路維持の報告書ですが、これが、「美の国秋田」を掲げる秋田県の意識であることを話し、好例の紹介もするよう、昨年一昨年と県庁担当課に要望しています。県サイトで、県職員や県民の意識や知識が高まるような記事や、街路樹の役割を伝える記事を掲載することはできませんか。


○提案の経緯
2016年に山本地域振興局の道路アダプトに登録いただき、二ツ井の県道街路樹の里親となって見守り活動をしています。能代市の県管理街路樹は2008年の5月にブツ切りとなり、当時の知事より「樹木への配慮を欠いた剪定となった。今後、適正管理に努める。」との返事をいただいていたものの、2015年秋の剪定で活動区域の街路樹がブツ切りとなったことから、再度、県知事と振興局に提案を行い、現在は改善されています(問答を添付します)。
このような不適正剪定は県に樹木管理の専門職員がおらず、知識が不足していることから起こっているため、提案の中で県職員の勉強会を要望、2017年10月に、山本地域振興局が県北地区の振興局や市町村に呼び掛けて、街路樹講演会を開催し、私が無償で講師を務めました。また翌春は、東北電力によってブツ切りされた県道街路樹の直しを申し出、そこに振興局の関係職員や電力会社及び下請け業者が参集して講習会として実施されるなど、能代市管内の街路樹管理は、理論、実技ともレベルアップの傾向にあります。
そうした中で、今冬、北秋田振興局前の県道街路樹がブツ切りとなり、この街路樹ではこうした状態が何年も続いていたため、当局建設部と話し合いを持ち、上記講演会の資料や参考図書をお貸しして、知識の習得と体制の見直しを求めたところ、「これまでの土木業者への発注から造園業者に変えたい」との返答を得ていました。それが今秋、再度のブツ切りとなったばかりか、今度は大館市の県道街路樹も電柱のような姿となりました。問い合わせたところ、造園業者に発注をしたとのことですが、業者任せとなっていることから担当課は現場立ち合いを行っておらず、最悪の事態となったようです。
こうした不適正剪定は鹿角市や小坂町の県道でも見られますが、街路樹は街の顔です。秋田県は「景観を守る条例」を策定し、『美の国秋田』を謳う県。街の緑もそれにふさわしい姿となり、本来の役目を果たせるようお願いをするものです。

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2009年1月に届いた県知事からの回答

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上記の提案は2017年2月に行った山本地域振興局建設部長への手紙の全県版と言えるものですが、この時の手紙は当初、知事への手紙として県庁に出し、回答をいただいていました。
山本地域振興局内の事案ではありますが、本庁もこの手紙を確認しているため、地域支局の問題を秋田県全体の問題として対策を講じていれば、大館や北秋田の街路樹も改善へと向かっていたかもしれません。
ただ、言われたことしかやらないのがお役所でもあり、今回は全体を良くしてくださいと改めて提案をした次第です。

下記は山本地域振興局建設部長からの回答書ですが、山本地域振興局の取り組みを本庁に知ってもらうために、この手紙も参考資料として添付しました。

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福岡様からお寄せいただきました御意見についてお答えします。

1二ツ井小学校前のケヤキ並木について
①街路樹が置かれた環境は通りによって違うため、この並木に即した個別の仕様書を作成する必要があります。その作成をお願いするとともに、仕様書の作成に協力させていただけないでしょうか。

A(秋田県) 福岡様からは、以前「横浜市道路局」の資料をいただきました。その内容を参考に、道路機能の確保を基本とした仕様書を作成し、今後の街路樹管理に活用していきたいと思います。

②剪定を行う際には、担当課が必ず現地の下見を行って下さるようお願いいたします。

A今後は、剪定前の状況把握のため、下見を徹底してまいります。

③剪定前に、担当者と事業者との間で仕様の確認を行ってくださるようお願いいたします。

A県と受注者は、剪定前に仕様の確認を行います。

④仕様書に従って、「見本剪定」を行ってくださるようお願いいたします(③の確認を行ってから剪定者が木に登り、剪定を開始する。離れて見なければ樹形の全体がわからず、木に登って見なければわからないこともあるため、下にいる担当者と上にいる剪定者との間で協議をしながら行う。また、樹勢が弱まっている木や枝が少ない木、他より樹高が小さな木、近年に強剪定されて枝が密生している木、他と樹形が異なる木、電線に接する木、公共地に隣接する木(理解が得られれば、双方の樹木が越境してもよい場合もある)などはそれぞれ手の入れ方が変わるため、見本剪定は1本だけでなく、そのケースに合わせて数本に行うこと。そのためにも、担当課が下見を行う必要性がある。また、仕様に即したチェックリストを作成し、見本剪定終了後に事業者と確認する。担当者、事業者共に専門知識を持たない場合は、それを理解する専門者が立会い、助言すること。)

A限られた予算と人員のなかで、可能な限り見本剪定を実施します。

⑤本剪定の際には、剪定技術を持つ者を2人以上配備し、④の見本剪定のように、下から見る者と剪定する者が交互にそれを行うことが望ましいと考えます。

A当該業務の入札に参加出来る業者は、建設業法上の「造園」の許可を有するものとなりますので、企業として十分な技術力を有しているものと考えております。

⑥担当者と剪定事業者は並木の由来と役割をよく理解し、樹木への慈しみを持って業務に努めることを確認されてください。

A並木の由来や役割などについては、管理者として理解するように努めてまいります。

⑦引継ぎミスを防ぎ、担当者・事業者が意識して業務に臨むために、上記③④を契約書に盛り込んでいただけないでしょうか。

A③は仕様の確認を徹底することを、④は見本剪定の実施方法を、それぞれ特記仕様書に明記します。なお特記仕様書は、契約図書の1つとなっておりますので契約に係る効力を有しております。

⑧仕様書の剪定を行う実際の技術・知識・意識の確認として、業者選択時に技量審査を行われてはいかがでしょうか。
 A業者選定の際に技量審査を行うことは、現在のところ考えておりません。県の業者選定のルールでは、当該業務の入札に参加できる業者の条件として、
 (1)建設業法上「造園」の許可を有すること
 (2)格付けは「A級又はB級」
 (3)主たる営業所の所在地は「県北ブロック(鹿角、北秋田、山本の3管内の造園業者)」
 となっております。
 「造園」の許可を持つ業者であれば、剪定作業に係る技術力に問題は無いものと考えております。

⑨高圧線の電線支障などは、電力会社から打診があった時に、県の管理方針と仕様を伝え、不適正剪定が起こらないように、剪定時には担当者が立ち会って指示することはできないでしょうか。また。これが剪定不適期(葉のある時)である時は、支障となる細い枝の剪定にとどめて冬季に太枝で剪定すること。やむおえない場合は、必ず腐食の入らない切り方を行う(切口が再生する切り方)。電線支障は予測できることであり、電力会社から剪定の要請が来ないように、通常の剪定時に、あらかじめ電線支障対策の剪定を行っておくことが必要です。

A電力会社等の作業については、福岡様の御意見を参考に、作業前には道路管理者として立会い、作業の内容を定めてまいります。


2 銀杏並木について
➀街路樹の樹種選択や樹形は、土地の文化や歴史性を反映させるものです。現在、この通りの銀杏は「円錐形」をしており、円錐形は神宮外苑に代表される大都市の樹形としてあります。件の銀杏並木がある立地を考えた時、周囲は里山であり、米代川があり、田園があり、こうした田舎の風景が広がる所に、整形的な大都市の樹形は不似合ではないでしょうか。
自然樹形管理を方針とする能代市でも「銀杏は円錐形」としていますが、銀杏は本来、円錐形とはならず、円錐形は自然樹形ではなく人工樹形です。この並木は銀杏山神社に由来するものなので、その神社の銀杏に習い、旧二ツ井町管理の時のように自然形にしておくほうが、二ツ井の風景に即していると考えます。「円錐形」としている理由と併せてお答えください。

A地域の歴史などを理解し、道路機能の確保を最優先に考えて、地域の意見も取り入れながら管理に努めてまいります。

3 能代市管内の県管理の街路樹について
➀担当者が異動したり、入札で業者が変わると、同じ通りの木の姿が変わったり、これまで改善されてきたことがまた元に戻ったりということが何度もありました。管理体制の引継ぎを強化することはできないでしょうか。

A管理方法については、確実に引継ぎを行うとともに、県や市など関係機関の調整を十分に行います。なお、地域住民からの要望や関係機関との調整などにより、やむを得ず街路樹を強剪定しなければならない場合も考えられますので、その際は、御理解と御協力をお願いします。

②街路樹はなぜ良くなれないのか、管理者である秋田県や山本振興局内で、問題点を話し合う機会を持たれてください。問題点や原因がわかれば、それをクリアするための勉強を行い、対策を講じていくことができます。街路樹の問題点を洗い出し、改善策を講じられてください。

A今回の福岡様からのご意見やご要望を受けて、山本地域振興局内では、関係部署(総務企画部、農林部、建設部)の職員による打合せを行いました。今後も局内で担当者による打合せを行い、街路樹の必要性や管理のあり方、問題点の洗い出し等について引き続き研究してまいります。

③不適期に不適切剪定を行うなど、秋田県の街路樹管理には、樹木の生理や景観に関する知識が不足しています。剪定業務の担当者が専門知識を持っていないと適正な検査ができず、樹木についての知識や関心、興味が無ければ、樹木の異常にも気付くことができません。職員を街路樹の先進地研修や街路樹のフォーラムに派遣するとか、講師を招いて勉強会を行うなど、樹木を学ぶ機会を設けられてはいかがでしょうか。

A機会を利用して先進地研修に参加するなど、樹木の知識の習得に努めてまいります。
④以前、真夏に木蔭の出来ない姿にされた県管理の街路樹を見た市民の意見が地元紙に掲載されたことがありました。山本振興局の答えは、「虫の苦情などによる住民要望に応えたものであり、理解をお願いする」というものでした。街路樹管理者は、街路樹の役割や効果、存在意義を県民に周知啓発することも責務のひとつとしてあり、街路樹があることへの理解を求めるのが本来。県のHPなどでも、街路樹の役割などが掲載されている所はありません。啓発が一番の苦情対策であることを知り、街の木が何のためにあるのかを県民にお知らせください。

A国土交通省や他県自治体のホームページには、「景観向上」、「生活環境保全」、「自然環境保全」、「緑陰形成」、「交通安全」など、街路樹の効果がとてもわかりやすく掲載されておりますので、秋田県で独自にホームページに掲載しなくても、ネット上ではすでに十分な案内になっているのではないかと考えております。過去に地元紙で取り上げられた強剪定の事例は、害虫処理のため地域住民から強い要望があったものと聞いております。道路管理者としては、街路樹の効果や必要性等を把握し、道路機能の確保を第一に考えながら対応していきますので、御理解と御協力をお願いいたします。

⑤局の森づくりの課では以前、角館の桜の樹木医さんを招聘し、樹木を腐朽から守る剪定講習会を開いたことがありました。局内には、こうした緑の専門知識を持つ課があり、専門家とのルートも持っています。また街路樹は、まちづくりや観光にも活かせる資源の一つであり、緑の課や観光の課と連携することで、専門知識と多角的な視点から見る感性を得ることができます。同じ庁舎の中にそれらの課がある利点を生かし、枠を超えた課の連携を持たれてみてはどうでしょうか。

A②の対応のとおり、山本地域振興局内で、関係部による検討会を行うなど横断的な対応を行っております。

⑥能代市は、国県市の枠を超え、市内全域の緑の保全を目的として、「緑の価値に気付き・守り・活かす」という「緑の基本計画」を定め、街路樹や公園樹を「自然樹形管理」しています。市内には国県市道がありますが、それぞれがめいめいに管理をするのではなく、行政間が連携を持ち、統一感のある緑の街なみにしていくことはできないでしょうか。

A今後は、能代市の「緑の基本計画」を参考にしながら、街路樹管理に努めてまいります。
⑦けやき公園の歩道を木橋にし、並木を「景観重要樹木」に指定できませんか。
日本の街路樹の歴史が150年程度の中、県が管理するけやき公園沿いの街路樹は樹齢300年を誇り、中心市街地にある街路樹としてはとても希少、その存在自体が日本一です。天空の不夜城でその枝が切られたことは大変残念でしたが、この巨木の街路樹を能代が誇る名物として、観光に活かすことはできないでしょうか。この公園や街路樹は一つのお寺の境内林でしたが、公園と街路樹では生育環境が違い、街路樹は頂部の枝枯れが目立つなど、樹勢が弱まっているようです。頂部の枝枯れは根の異常から起こります。歩道の舗装の中にある街路樹は根に必要な水や酸素を受けにくいため、それが枝枯れの原因と思われます。樹勢回復の対策としては、通気管の設置や(竹筒でも応用できます)、路面をふさがないように歩道を木橋(木製デッキ)にするなどすれば、根を傷めずに、地下部に水や空気が行き渡りやすくなります。木の橋にするということは木都能代の技術を活かすことであり、地場の産業を活かしながら樹木を守ることになり、新たな観光スポットにもなることでしょう。秋田県が、天空の不夜城による大木の枝切りを許可したことは、県内外にあまり良いイメージを与えていません。これまでの街路樹管理も含め、街なかの樹木を保全するという観点が秋田県には不足しています。この並木を「景観重要樹木」に指定するなどして、保全の姿勢を見せていくことはできないでしょうか。

A景観重要樹木の指定について能代市に確認したところ、現段階では、指定する予定は無いとのことでした。また、ご提案のあった「歩道への木橋(木製デッキ)設置」は、イニシャルコスト、ランニングコストの面からも不可能と考えております。なお、現地歩道には、融雪施設が整備されており、冬期間の歩行空間を安全で快適なものとしております。過去のけやきの枝切りについては、県が能代市に許可したものですが、「天空の不夜城」は、約100年ぶりに復活した能代市の新たな観光資源です。にぎわい創出や経済効果の波及など、地域の活性化のため大いに期待されております。

以上
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FUKU
Author: FUKU
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