雪透かしのメカニズム
2020年12月22日

雪載りを抑えるために透かしていたヒマラヤスギが、風の力を借りて雪を振るい落としています。
正確には、着雪した枝が重みで下がったところに風が吹いて、雪が振るい落とされている状態です。

ヒマラヤスギの向こうには杉木立がありますが、雪はわずかしか載っていません。
これは、人の手が入っていない自然形の樹木には雪を受け流せる機能が備わっているということですが、そうした木を人間が整形に仕立てる過程で雪を受け流す力が弱まってしまうために、雪囲いや雪吊り、雪落とし等の世話が必要になる。
樹木には、自律的に環境と共生する力があるので、このヒマラヤスギの透かしは、その共生力を取り戻してもらうための手入れでした。

樹木は本来、自分が生きるために必要な枝しか出さないので、枝と枝の間には適度な空間があります。
着雪した枝が雪を落とせるためには、雪の重みで下がる枝が雪を落としきれるまで下がれる「縦の空間」と、隣り合う枝が絡まって枝下がりを邪魔しないようにするための「横の空間」が必要。
自然界の木々の枝はそうした空間を本能的に持っているということで、枝を透かすことで、樹木本来の空間を確保します。

枝に雪が載っているのがわかりますが、これは、適度な空間があることで、雪が枝の間をすり抜けてきているということ。
雪が載りにくいように左右の空間を作りつつ、それでも載った雪は上下の空間で落とすということですが、これも樹木の自然の理。

こちらは剪定前。
見るからに風通しが悪そうですが、このぐらい混んでいると、雪はすり抜けられずにすべて積もります。


剪定前(6月)と、剪定から半年後の今。
枝が混んでいると林床に光が届きませんが、木の中に光が通るようになると風も雪も通ります。
光と風と雪が通る状態はとても健康的で、樹木が自律的に生きるための機能を発揮できるということ。
『雪透かし』は、そのために行っています。
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