ゼニゴケ発生の考察と対処1~庭の伝いと苔の遷移
2021年11月07日

2013年につくらせていただいた露地の延段(石畳)。
30歩ほどの伝いの中で、ここだけが石畳になっています。
前後の飛石も同質ですが、小石が連なる風情には独特な美しさがあります。

延段の先にある中門は、主客が向かい合って黙礼を交わす所(迎付)。
立ち止まって一礼し、方向転換をして戻るといった動作を行うために、足の自由が利く形にしています。

迎付の後は、手水を使って席入り。
中門のそばに蹲踞があるため、この時も外露地の延段で待ちます。
露地の飛石は、履物が濡れないようにとの配慮。
ここに延段があるのは、列をなして立ち止まる所を歩きよいようにという心遣いでもある。
短い石畳には、客を招く側のやさしさが込められているようで好きです。
※中門から蹲踞の間を広く取れる所では、内露地に延段を設けています。

延段の右側には、現場発生の土を突き固めた低い崖(版築塀)。
これは、傾斜地につくった歩行路を広く取るための垂直土留で、周辺の暖斜面には敷地内の地苔を移植して、土が流れないようにしていました。

その後、空いた部分にも苔が増え、年月とともに、景色も格段に良くなりました。

庭の各所には今、スギゴケやスナゴケ、ハイゴケなど、さまざまな苔が繁殖。
多種類の苔が生えているのは、同じ庭の中でも、場所によって湿度や風や日照の程度が違うからでしょう。
苔は環境を選ぶ生き物。
その場所に合えば増え、合わなければ消えていく。
樹木の生長で木蔭が深まれば林床の光量も変わり、そうした環境の遷移に合わせて、苔も様相を変えているようです。
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