作庭展レポート2

昨日に続き、今朝の北羽紙にレポートの「下」が掲載されました。
下に紹介しますので、ご覧いただけたら幸いです。
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「庭から繋がるもの ~作庭展を開催して~」(下)
今回の個展では、一般の方々が庭をどのように捉え、何を求めているのかを知るためにアンケートも実施しました。
作庭には芸術的な感性も求められ、作り手は自身の美的感覚と創作意欲の元、庭に思いを込めて創っていきますが、あまり思いが強すぎると、庭は家族が毎日過ごす暮らしの場であることを忘れがちです。
その家に本当に必要な庭は何なのかを考え、永く家族に愛される庭をつくるためにも、広く市民の皆さまのご意見を伺いたいと思いました。
アンケートでは、「あなたにとっての庭 好きな庭 庭に対するご意見」などを年代別にお聞きしていますが、庭に求めるものとしては、
「家族との団欒や癒し、休息、心の住処、ずっと佇んで居たくなる場所、緑豊かな環境での子育て、虫や鳥など自然界の生き物との共生、樹木の四季折々の変化や草花の彩り、木陰や水音を楽しめる静かな空間、森のような雰囲気、里山の風情、和と洋の調和、飲食を楽しめる場、子供の頃の思い出を感じられる場」
などがあり、年代を問わず庭に求めるものには共通するものがあることや、家族構成やライフスタイルで庭への嗜好も変化すること、眺める庭よりも暮らしの中で楽しむ庭が求められてきていること、庭に自然の雰囲気を求める方が多いこと、木の形よりも樹木そのものの効果を生活に取り入れたいと考える方が多いことなどがわかり、今後の作庭を考える上で大いに参考になりました。
また、いただいたご意見の中には、「せっかく庭に来た虫を農薬で駆除するのを疑問に思う。人も虫も木も共生できる、全てに優しい庭はつくれないものか。」、「人間は自然破壊の一方で庭に自然を求める。」というような、非常に考えさせられるものもありました。
庭は自然そのものではなく人の楽しみのために造られるものですので、田んぼや畑のように、求める姿を守るためには多少の犠牲も必要となるのですが、自然の生態系を取り入れた庭などでは実現できるものもありますし、無農薬での庭の管理も研究されてきている現在、もっと環境に配慮した庭づくりもできるのではないかという思いを持ちました。
二次製品を使わず、自然素材を使って庭をつくることはいいことのように思われがちですが、庭の素材となる木や石などは自然界から産出されるものもあり、庭づくりは自然破壊と隣り合わせであるという側面も持ちます。
我々庭を作る側はこのような現実も踏まえ、自然の復元に対しても取り組まなければとの思いから、私自身、数年前より白神山地の植樹などにも参加していますが、今回のご意見に接し、環境再生もまた庭師としての責務であることを、次代の若い人たちにも繋げていかなければとの思いを新たにした次第です。
最後に、「繋がり」をキーワードに開催した作庭展でしたが、会場となった市民プラザという場所もまた、市民が集い繋がる場として開設された所であり、こちらで様々な市民サークルの皆さんと知り合え、能代にはいろんな活動があることを知りました。
会期中も多彩な展示やイベントがありましたが、人と人との繋がりが大きな輪になっている様子を目にし、これは庭の繋がりと一緒だなと、思わぬ所でまちづくりと庭づくりの共通性を発見できたことも嬉しいことです。
庭の繋がりを知っていただきたいと開いた個展で、人と人との繋がりの大切さを知ることができたことが、今回の一番の収穫だったのかもしれません。
能代市二ツ井町 植木屋 福岡 徹
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