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秋田県能代市で作庭を行う福岡造園のブログです。 日々の仕事や活動等の最新情報を載せていきます。

酸欠土壌の改善

2023年07月12日
土の手入れ
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昨年、傾倒を起こしていた桜の木。
この木は9割の枝が枯れていて、周囲の木も一様に梢が枯れていました。

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雨の日は芝生に水がたまり、晴れた日に掘ると水が湧き出します。
そして表土の下は硬く、スコップも刺さらない。
土壌環境の悪化が、樹木を衰弱させたようです。

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解決のための土壌調査。
表土は、芝の床土の山砂が約20㎝、その下はグライ化しています。
ただ希望はあって、グライ層は2.5mで茶色い土層に変わりました。

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青線部分がグライ土層(酸欠硬土)。
ここに径300mmの有孔管を立て入れて、地中の停滞水を浸透させます。

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同時に、既存樹周りの土を地下3mまで耕運し、土中に空気を入れます。
掘っていると、木の下から水が染み出てきました。
植栽時の良質土層に降りた雨水が、その下の硬土層に浸透できずに淀んでいたのでしょう。

「淀む」を辞書引きすると、
・水や空気などが流れずにとまって動かない。
・ 底に沈んでたまる。
・動作などが順調に進まない。滞って動かない。

と出てきますが、「グライ化」はまさにこの状態です。
「動作=浸透」。
これが順調に行われるようになれば、樹木の生命活動も順調になり、樹勢が回復する。
因みに、「順調」は『滞り無く捗ること』ですが、土中水の滞りを無くし、通気通水を捗らせることが今回のミッションです。

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瀕死の桜は、地下3mまで木炭を漉き込んだ土層に移植。

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重機を返した後は、さらに手作業で根周りの土壌改良と竹筒の通気管を設置。
浅層は丁寧に改良して、養分吸収を行う細根の発生を助けます。

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仕上がり。
支柱は、昨年応急で取り付けたケヤキの枝をそのまま使っています。
これで十分。
お金を掛けて過剰な支柱を付ける必要は全くありません。

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通気管は通常1mほどにしていますが、今回は3倍の深さ。
強度、耐久性、機能性、施工性、安全性を考えて、これまでのヨシズボイド管を進化させました。
管内には地下3mまで県産の軽石が入っていますが、これが地中に酸素を送る細管の泥越しとなりつつ、雨水や空気をゆっくりと地下に降ろします。

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この浸透管は4カ所に設置。
発生材(小石)を積んで、人工物を隠しています。

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樹木スペースの前につくった空堀。
これで表面水と深さ20~50㎝までの地中水をのり面下まで導きます。
既存樹はもともと、周囲よりも高く植えられていました。
耕運すると土の体積が増え、溝(堀)を掘ると残土が発生します。
この余剰土を改良して樹木周りの低地に盛り、根を広く張らせるという仕組みです。

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のり面外から見ると、高低差がわかります。

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ただ、表面帯水が顕著なこの部分は樹木が近く、かつ、街灯とマンホールもある。
重機で深層改良はできないので、手掘りで浅層に暗渠を通し、根周りに帯水しないようにしています。
軽石を通って暗渠に入る雨水は浸透管で地下に降り、豪雨で管内があふれれば空堀を流れていくという仕組みですが、樹木がある部分には、管上に有機材(木炭、バーク堆肥)の層をつくり、対岸に根が伸びられるようにしています。

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全体。
街灯(左上の茶鉄柱)の右部分に水がたまるのは、雨天時、舗装面を下る雨水がここに流れ込むからですが、この右隣にあった木が枯れたのは、この部分が最も水がはけにくい所だったからでしょう。
その水を抜くために、黒矢印の方向に暗渠を通し、浸透管で地下に誘導しているわけですが、豪雨時の雨水が一気に集まると、管周りが陥没する恐れがあります。
その水量を少なくするために、手前にも暗渠を作って、たまりに集中する雨水を横方向に逃がし、のり面下に導きます。

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掘削と配管状況。
晴天でも、掘っているそばから水が左右から集まり、溝の低い方へ流れていきます。
そこに有孔管を通し、泥越し用の軽石を巻く。
一般的に、暗渠には砕石を巻くケースが多いですが、多孔質の軽石はスポンジのような含水機能を持っているため、暗渠内の水の容量が大きくなることと、水が管に到達するスピードを和らげることができます。

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完成後の水の流れ。

今回は、根が通れる暗渠、開渠(空堀)、強度と耐久性のある通気通水管等、様々な技術と工夫を凝らしましたが、これらはすべて樹木を生かすため。
木々が快気していけるよう、見守りたいと思います。
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FUKU
Author: FUKU
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