木蔭で涼めたらおかげさま

このブログのサブタイトルでもある「木陰で涼めたらおかげさま」。
いつかそんなことを感じられる庭をつくれたらと思いつつ、新しく植えた木ではまだ十分な木陰はできなくて、庭の中で木陰のありがたみを感じられる庭はまだつくれないでいた。
今回作庭させていただいた庭には、大きく枝を張る柿の木がある。
あまり剪定していないので徒長も少なく、柿の木らしい本当にいい樹形をしている。
長い間、ご家族の成長を見守ってきた、この庭の守り神だ。
庭が完成間近になった時、「どこかに座る所がほしくなってきたね。」というご主人の言葉を聞き、テラスとベンチをつくってあげたくなった。
既存の石を利用すれば、なんとかなりそうだ。
つくる場所はというと、やはりここしかない。
そう、柿の木の下。
秋らしい日が続く中、今日は久々に暑い日だった。
一服はいつも縁側をお借りしていたが、主庭が完成した今、今日はこの木陰のベンチでいただくことにした。
柿の幹を背もたれにして座ると、なんだか木と一体になれているような錯覚を覚える。
静けさの中、トンボが遊びに来た。
大樹の懐に抱かれ、包み込まれるような優しさの中にいると、人も鳥も、虫も花もみな、同じ生き物であることを実感する。
見上げると、空がどこまでも青い。
青い空と白い雲、色づき始めた柿の葉のコントラストが美しい。
石のベンチに腰掛け、景色を見ながらながらいただくお茶はことのほか美味しかった。
移植や石積みなど、難儀した分だけこの庭には思いがある。
これまでの蓄積を活かし、次へと繋がる新しい試みもできたので、技術的にも、とても充実した庭づくりだった。
それでも、そんな技術的なことなどどうでもいいと思わせてくれるのがこの柿の木の存在感であり、この木陰であり、木漏れ日だ。
人知を超えた樹木と時間の力は本当に尊い。
夢をかなえてくれたお施主さんに、あらためて感謝したい。
