剪定の強弱が紅葉(黄葉)や葉の大きさに与える影響
まずは、今夏に見た市内の街路樹(イチョウ)を二例ほど見てみたいと思います。


左は、しばらく手を入れていない自然樹形のイチョウ、右は、4年前に強剪定されたものを昨年再度剪定したものですが、ブツ切りではなかったものの、強めに切られたことにより萌芽が促進され、枝葉の混み方にこれほどの差が出ました。

上の二つの木の葉を比べてみました。
左が自然樹形の葉で、右が剪定を行った木の葉、タバコと比べてみると大きさが分かります。
手を入れた木と入れていない木では、葉の大きさと色の濃淡にこれほどの違いが出ます。
切られたことにより萌芽が促進されるということは、養分を作るための葉が剪定により減らされたことから、これまでと同じ量の養分を確保するために、急激に枝葉を増やしているということです。
葉は光合成によって養分を作りますが、切られた木は葉の少なさをカバーするために葉を大きくしているのではないかと思います。
また、葉色が濃いということは葉緑素の量が多いということで、木は葉の面積を大きくするとともに、葉緑素を増やすことで光合成の量を増やそうとしているのではないかと思われます。
これほど枝葉が増えてもまだ葉が大きく緑が濃いということは、木が切られたことから回復できずにいて、まだ常の生命活動に戻れないでいるということを示しているようです。
次に、手を入れていないイチョウと、剪定されたイチョウの黄葉の程度を比較してみます。

市民プール前のイチョウの黄葉です。
両側とも、きれいに黄葉しています。

次は、若松町のイチョウです。
左は5年前に強剪定されその後放任されたもの、右は、やはり5年前に強剪定され今冬剪定されたものです。
左側はきれいに黄葉していますが、右側はまだ青いままです。
これもやはり、剪定によって急激に葉が少なくなったことから、まだ養分の蓄積が足りず、もうすこし光合成をしたいがために葉が青いのではないかと推測されます。
また、黄葉している側のイチョウは、5年間放任されたことによって十分な休養期間が取れ、通常の活動に戻れたということだと思います。
これらのことから、葉が大きくなり色が濃くなるのも黄葉が遅れるのも、木が必要以上の剪定によって異変を感じ、通常の生命活動ができなくなったことが原因ではないかと考えられます。
木は自分が生きるために必要な枝葉しか出しませんから、下手に手をつけなければ枝葉が異常に増えたり樹形が乱れることはありません。
人が暮らす街中では剪定を余儀なくされる場合が多々ありますが、いくら自然樹形の透かし剪定を行っても、必要以上に枝葉を少なくしてしまうと、木に異常が現れてしまうのだと思います。


そんなことを考えて、今回、個人邸のイチョウの剪定を行ってみました。
左が剪定前で、右が剪定後、時期は11月中旬、落葉してからの剪定です。
この木は4年ほど前に強剪定されたそうですが、そろそろ徒長枝が太くなり枝が絡み出す直前の状態でした。
このまま枝を絡ませると、数年後に絡み枝を外した時、それまで絡み合うことで枝同士が支えあっていた枝は支えを失い、自身の重みで垂れ下がるという事態が起こります。
そうなる前に手を打たなければならないということですが、必要以上に枝を抜くと木に異常をきたすので、交差する枝のみを幹元や枝の付け根から外し、残した枝の小枝には極力手をつけないという、「野透かし」に近い剪定を行いました。
剪定量は全体の4分の1ぐらいでしょうか。
木に切られたことを意識させない切り方をすれば、これまでと同じ生き方ができるはず。
これが成功かどうか、答えは翌年まで待たなければなりません。
来年のこの木の葉色や大きさ、黄葉具合が楽しみです。