杜の木漏れ日

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街路樹と電線の共生を考える

今回、市道の街路樹がブツ切りされたのは電線の支障によるものと思われます。

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この写真は、2007年に剪定された若松町の市道のイチョウですが、市が方針を変える2年前までの市道の剪定法は、電線や通行の支障とならないようにと芯は全て電線の下で切られ、電線の支障とならない横枝も一様に短く切るというものでした。
それが景観面や木の生理にそぐわないことが指摘され、昨年ようやく市も方針転換をしたわけですが、今回、また昔のやり方に逆戻りしてしまったのはなぜでしょう。
発注側の引き継ぎが上手くいかなかったり、担当課の樹木管理に対する認識や知識が不足していたり、あるいは予算が無かったり、受注業者の技術が未熟だったり、専門外の業者が受けていたりと、様々あると思いますが、今回のやり方が電線と樹木が共生するための最善の方法では断じてありませんので、今日は、今回のような短絡的な強剪定が枝の成長や後々の管理にどのような影響を与えるかを紹介しながら、電線と街路樹の共生法について考えてみたいと思います。

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この写真は市役所向かいのイチョウですが、数年前に芯が止められ、2,3年経過して芯が数本林立してきた所を枝の途中から刈り込まれ、その後1,2年経ったものです。
「刈り込み」は萌芽を促進させますので切った所から枝が無数に伸びます。
よく見ると、上部だけが異常に枝数の多いことがわかりますが、これは、今回と同じく、電線の支障となる上部だけを刈り込んだことが原因です。

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これは、昨年私がこの木の剪定に携わった時のものですが、この路線の木は様々な高さの所に無数に電線が走っており、その周囲が全て短く切られたことから枝が混み合っていました。

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あまりに枝が混み合っているため下から枝を外していかないと登っていけないほどでした。
白いカバーは電線ですが、枝数がこんなに多いのは、やはり電線の支障となる枝を途中で切ったためです。

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外側に伸びる角度の良い素直な枝を残しながら上に登っていきます。
人が居る所とその上とでの枝数の違いがわかると思いますが、途中で枝を切り詰めるとまたそこから枝が増え伸びるので、枝先を詰めずに幹元から外していっています。

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この電線の多さ。
混んだ枝をかいくぐり、電線をかいくぐり、ようやく頂上までたどりつきました。
残した枝は電線と電線の間に伸びていけるよう、角度のいい枝を残していっています。
また、電線の多い個所などはすぐに枝が伸びて当たりますから、太い枝を元から間引くことで対処します。
こうすることで、電線との共生はできるのです。

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仕上がりはこのようになりました。

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このようにすれば、葉が出てきてからも支障にはなりません。

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せっかくなのでイチョウをもう一例。
芯止めされて出てきた枝を左右に分け、電線を交わせるような樹形に変えています。
イチョウというよりはウメのような樹形ですが、リンゴなどの果樹のように横枝を張らせることで、電線に対処しています。
これは、大潟村の銀杏ロードのイチョウをヒントにしたものです。

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これは今回行われたブツ切りですが、上の2例とどちらがいいでしょうか。

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そして、これも今回、全ての枝を短く切られたプラタナスです。

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次は、私が昨冬に剪定したプラタナスです(剪定前)

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電線の支障を考えて枝抜きしました。

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葉が出た状態です。

イチョウももプラタナスも、木陰を作るべく横枝はなるべく伸ばし、徒長枝が出ないように、なるべく「野透かし」で枝を抜いていきます。
細かに枝を切り詰めれば枝は毎年伸びて増え、その都度剪定が必要になりますから、能代のように毎年の剪定に掛ける予算が無い中では、野透かしの手法が一番適しているのではないかというのが私の結論です。
しかし、野透かしは透かしの中でも一番難しい技術ですから、能代の街路樹管理に欠かせないのは、剪定者の技術の向上以外にありません。
しかしそれも、管理者の知識や認識があってこそです。
ブツ切りを透かしに直すには3倍の手間がかかるのです。
いくら剪定者が一生懸命に技術を習得しても、大変な思いと奉仕の心で街の木を再生させようとしても、管理者が自らブツ切りしたり、電力会社のブツ切りを容認していたら何にもならないのです。

今回の剪定区域には、市から委託を受けた造園業者さんが毎年手を入れている路線もあり、あと1、2カ月もすればその地区の剪定が始まっていたはずです。
街路樹は市の公共物ですから電力会社の剪定には市の了承が必要になると思いますが、その時点で市の街路樹の再生方針を話し、連携協議ができていればと悔やまれます。
今回の街路樹の中には、ブツ切り後の樹形再生のために段階的に手を入れているものもあります。
この剪定に携わった方々の二年分の再生研究と奉仕、それに掛かる税金が水の泡となったのです。

街路樹と電線の共生に必要なのは、技術以前に、この街の木をどうしていくかの方針を行政がきちんと持つこととその徹底、職員の移動に左右されない明確な体制を作ることではないでしょうか。
そしてそれは、関係課同士の連携であったり、市内の国道県道の管理者である国県との連携であったり、今回のように電力会社との連携であったりと、街路樹に関する様々な問題を連携協議する機会をより多く持つことが、街路樹受難を防ぐために必要なことではないかと思います。

Comments 4

紅の葉  

けんさんへ

けんさん、はじめまして。コメントいただきありがとうございます。
>木が成長するのは当たり前なのに、何故電線のしたに街路樹を植えるのか?
本当に、なぜでしょうね。私も不思議に思います^^。
ここでは、既に電線と木がある状態の中で、どうしたら共生できるのかという管理面のことを書いていますが、「植える」ということになると、それ以前の都市計画の時点までさかのぼらなければなりませんね。いろんなケースが考えられると思いますが、私の暮らす能代市を例に、ちょっと考えてみたいと思います。能代の街路樹は戦後間もなく、前年の大火の復興として植えられたと聞いていますが、その頃の街路はどんな感じだったのでしょう。道は舗装されていたのか、電線はあったのか、あったとしても低い木の電柱だったろうな、電線と街路樹はどちらが先だったのだろうか、などと、60年前の街並みについて思いを巡らせています。被災して新たに植えた木のほとんどはイチョウでした。能代は何度も大火に見舞われたそうですから、当時の人々は、街路樹に街の復興の願いを込め、イチョウの木の防火効果にすがるような思いで植えたのかもしれませんね。残念ながら、私は実際の街路樹の植樹に携わったことも見たこともないのですが、昨年、こんなことがありました。アーケードを解体した商店街の通りに街路樹を植えよう!という機運が高まり、樹種選択や管理の相談を受けたのです。やはりここも電線がありましたので、自然状態で電線より高くならない木や、電線を分けて枝を伸ばせるような、なるべく剪定をしないで電線と共生できる樹種をアドバイスさせていただいたということがありました。全国でも街なかの商店街ににぎわいが失われてきていると聞いていますが、先に上げた防火対策としての植栽や街の活性化のために街路樹を植えるというケースもあります。昨夏のような猛暑では、やはり街路に木陰が欲しくなると思いますし、まっすぐ上に伸びる木を植えないようにしたり、歩道に余裕がある時などは植枡の位置をずらして真上の電線を交わしたり、高さを出さずに枝張りを出させる樹形にしていくなどの工夫をすれば、十分電線と共生していくことは可能ですので、一概に電線の下に木を植えることが悪いというわけではないと思います。初めから電線があるのなら電線と共生出来る木を選べばいいし、途中から電線が出来たのなら、その状態で共生できる方法を考えていけばいいのではないかと思うのです。予算があれば電線の地中化などができればいいのでしょうけれど、そこまでするのも大変ですね。
新しい道路などでも、交差点の信号機のすぐ横に植えられた木がブツ切りになっている姿を見かけますが、これも電線の問題と同じですね。木の枝が伸びれば信号の支障となるのはわかりきっていることですが、こんな所を見ると、都市計画をする側に木の知識が無いということがわかります。標識などは後から付くことがありますが、植枡は道路をつくる段階で設けられると思いますので、後々に不要な管理費を掛けないためにも、計画段階できちんと考えていただきたいと思います。そんな意味でも、道路管理者の方々には木のことをもっと知っていただきたいと思います。
この件は、市長さんに対談を申し込んだ時や緑に関係する課に集まってもらった時などにもお話ししていますが、行政は担当者が数年で代わることや、設計施工管理が一貫しないということも原因としてあると思います。けんさんはどちらにお住まいでしょうか?故郷の街の木はどんな形をしていますか?このようなことは日本全国で行われています。今回のような疑問を、直接行政にぶつけてみてはいかがでしょう。市民一人一人の声が故郷の街を変え、日本の緑が良くなることに繋がっていくのではないかと思います。

2011/01/30 (Sun) 11:06 | EDIT | REPLY |   

けん  

疑問点

木が成長するのは当たり前なのに、何故電線のしたに街路樹を植えるのか?

2011/01/29 (Sat) 21:00 | EDIT | REPLY |   

紅の葉  

鈴ちゃんへ

電線の支障対策は江戸川区さんから教えていただいたことです。実際に電線と共生する街路樹の写真を見て、こういうふうにやってもいいんだなと思いました。大潟村の銀杏ロードの樹形や弘前の桜からも学びましたが、他から学べること、ヒントになることはたくさんありますね。能代の街路樹行政に欠けているのは、他から学び能代に合わせて活かすという姿勢です。二ツ井との合併が無かったら能代の街路樹はブツ切りのままだったでしょう。従来の能代のやり方ではダメなんです。だから同じ過ちを何度も繰り返す。二ツ井から見たら能代は街路樹もある都会ですが、仙台や東京から見たら田舎です。田舎者とは「井の中の蛙」、大海を知って、己を知ることから向上が始まります。早くそれに気付いてほしいです。

2010/11/29 (Mon) 08:17 | EDIT | REPLY |   

鈴ちゃん  

為になるお話でした。

庭木に疎い者としては、『電線の邪魔になる=危険』なら切られるのも仕方ない事と諦める気持ちがありました。が、この記事を読んで、電線とケンカしないでも良い方法があるのだと知り、『それなら、それを実行したら良いだけの話ではないか。』と思いました。

それにしても、街路樹のテッペンまで登っての作業、大変ですね!落っこちないでくださいね!

2010/11/28 (Sun) 23:57 | EDIT | REPLY |   

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