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秋田県能代市で作庭を行う福岡造園のブログです。 日々の仕事や活動等の最新情報を載せていきます。

プラタナス巡礼 ―学問の木を訪ねてー上

2011年04月27日
街の緑2(緑の提案と啓蒙:地元紙・専門誌掲載記事) 0
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本日付けの北羽新報文化欄に拙文が掲載されました。
今冬、ブログに書いたプラタナス巡りのことを加筆修正したものです。
以下に原文をご紹介いたします。


プラタナス巡礼 ―学問の木を訪ねて ― 上

桜の季節になりましたね。小学校の校庭などには桜が植えられていますが、桜と共によく見かけるのがプラタナスです。
プラタナスは枝に垂れ下がる実の姿が山伏の装束である「篠懸(すずかけ)」の丸い房に似ていることから、和名をスズカケノキと言います。原産はヨーロッパや北アメリカなどですが、日本で多く見られるのはモミジバスズカケノキという樹種で、明治時代に街路樹の文化とともに入ってきました。学校などに植えられるのは、古代ギリシャの哲学者プラトンがアカデメイア(プラトンが創設した学園、アカデミーの語源)のブラタナスの下で講義を行ったことから、「学問の木」とされていることが要因のようです。

プラタナスの実 (市立図書館前のプラタナス)

東京の大学には、この木の由来にあやかり、最寄り駅や大学までの通りに「すずかけ」の名を付けるなど、地域とともに学問のまちづくりを進めている所もあります。ブラタナスの花言葉は「天才」ですが、これもプラトンから来ているという説があり、こんなことからも、文化や教養を感じさせる木として、世界中で親しまれているようです。

私は閉校となった旧富根小学校のブラタナスが好きでよく見に行きますが、この木は人の手がほとんど入っていないこともあり、この学び舎で育った子供たち同様に、伸び伸びと枝を広げています。プラタナスといえば、短く刈り込まれた街路樹を連想される方が多いと思いますが、大きく枝を広げた姿こそがプラタナス本来の姿で、こんな木に出会うと本当に嬉しくなるのです。旧二ツ井小前のプラタナス(街路樹)は数年前に短く切られてしまい、とても残念に思いました。この富根小の木を見ていると、「僕は、本当はこんな形をしているんだよ。人の都合で僕たちを切らないでくれよ。」と、そんなことを言われているような気がしてきて、なんだか申し訳ない気持ちになります。ブラタナスという名前はギリシャ語の「プラティス(『広い』の意)」が語源ですが、広い場所で枝を広く張らせてあげることがプラタナスの名前を活かすことになり、プラトンが木陰の下で弟子たちに教えたように、学問の木としての役割も果たせるのではないかと思いました。

伸び伸びと枝を伸ばす旧富根小のプラタナス
(富根小のプラタナス)

今冬、能代市内の知人に富根小の木のことを話すと、「朴瀬にも大きなプラタナスがあるよ。」と教えてもらい、プラタナス巡りを行ってみました。朴瀬のプラタナスは道路沿いにあり、枝を大きく張らせて堂々たる姿を誇っています。この木の脇には「開校100年」と刻まれた石碑があり、山の上には朴瀬小学校がありましたので、昔はここが校舎で、この辺りが校庭だったのでしょうか。母校の思い出とともに、この木を愛でる地域の方々の愛情が感じられる素晴らしい木でした。

その足で峰浜の野球場へ。こちらのプラタナスは列植となっていますが、この並木が街なかにあり街路樹となっていたらどんなに素晴らしいだろうと、いつもこの木たちを見てそう思います。木が自然状態でどれだけ大きくなるかを知り、それに適した場所に植えてあげれば、剪定などは枯枝を外すぐらいで十分、能代の街路樹のように毎年切る必要はなくなります。管理費を掛けない街路樹としてのブラタナスの理想形がここにあるのです。

自然状態の木を見ることが街路樹計画の根本(峰浜のプラタナス)
(峰浜野球場のプラタナス)

見渡せば、この一帯は、隣接する学校や道路の木もプラタナスで統一されており、文化と教養が香る美しい空間となっています。樹形も自然な姿をしていますので、数年後は、大きなプラタナス並木で有名な旭川(北海道)の「ロマンティック街道」のようになるのではないでしょうか。国県町道がケヤキの街路樹で統一されている五城目町同様、この峰浜のプラタナス群は、秋田が誇る緑の景観ではないかと思って見ています。

続いて、能代市総合体育館のプラタナスへ。ここには大きなプラタナスが2本ありますが、この木は能代地区でも一番大きなものではないでしょうか。本当に立派な木で、よくこのような自然な状態で残してくれたものだと思います。こちらは河畔公園の一角のようですが、隣接する市道の街路樹もプラタナスなので、もしかしたら、この木たちも元々は街路樹として植えられたものなのかもしれません。

総合体育館前の大きなプラタナス

この公園と街路樹のプラタナスはほんの数メートルしか離れていませんが、管理する課の違いが木の大きさや樹形の違いに現れています。市が樹木管理に関する共通認識を持つようになり、街路樹も公園も建物の緑も、連続する緑の景観として一元管理できるようになれば、能代はもっと美しい、緑に囲まれた公園都市になるのではないかと期待しています。

二ツ井町 緑の景観を考える会 福岡 徹
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FUKU
Author: FUKU
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