土塀のある庭

取りかかっていた土塀工事がひとまず完成しました。
この土壁にはセメントが入っていないので、土そのものの風合いをそのまま楽しめます。
なるべく予算がかからないよう、壁土には自社の畑の赤土を使いました。
繋ぎのわらスサは、雪囲いで使った縄クズを刻んで再利用したもの、柱も、昨冬、「新月伐採」を試みた畑の栗の木をチョウナ掛けしたものです。

石積みの表情。
腰積みは男鹿寒風石の溶岩です。
採石場で苔むした石を選ってきたこともあり、以前からここにあったような落ち着いた風情を出すことができました。
苔やシダは裏庭に生えていたものを使わせていただきましたが、これもまた素材の馴染みを助けてくれています。
ここは、奥行きが狭いことやコンクリート地盤のため、木を植えることができません。
狭い空間でも緑の潤いを感じられるようにと、既存の下草で柔らかさを出せたらと思いました。

今回は、和室前のコンクリート擁壁の目隠しとして作りました。
土塀は試作で数回作っていますが、現場では初めての経験です。






この土塀づくりには、昨年、安諸定男さんの土塀講習会(日本庭園協会東京都支部主催)に参加してきたヤングボーイの提案が随所に取り入れられています。
ワラの刻みから土の採取、土練り、栗の木の伐採から柱のチョウナ掛け等、素材の支度から加工、構造設計まで、この土壁づくりのほとんどの作業に彼の手間暇が込められました。
自分の手が入った仕事が形として庭に残っていくことは、庭職人としてとても嬉しいものです。
いつ来るかわからない本番のために練習を積み重ねてきた中でのこの仕事、彼にとっても感慨深いものになったことでしょう。

濡れ縁に座って見た景色です。
土、木、石、苔、シダ、砂利、それぞれに質感の違う者同士が馴染み合い、一つの空間の中で穏やかに繋がってくれています。
狭い敷地の中のただの壁ですが、こうしたわずかなスペースにも地球を感じることができますね。
仕事を終え、ヤングボーイと濡れ縁に腰掛けて見たこの土塀は、土から生まれた自然素材でつくる庭の優しさや温もりを、あらためて私たちに教えてくれているようです。
土が乾いてくればまた風合いも変わってくることでしょう。
時の経過を楽しめるのもまた土塀の魅力ですね。
素晴らしい機会を与えていただいたお施主さんには本当に感謝です。
- 関連記事
-
-
庭の命を繋ぐ 2011/09/11
-
3つの素材を繋ぐアプローチの庭 2011/06/25
-
土塀のある庭 2011/05/12
-
地元小学校の植栽工事完了 2011/04/22
-
柿の木のある庭 2010/09/30
-