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秋田県能代市で作庭を行う福岡造園のブログです。 日々の仕事や活動等の最新情報を載せていきます。

土塀のある庭

2011年05月12日
作庭紹介 4
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取りかかっていた土塀工事がひとまず完成しました。

この土壁にはセメントが入っていないので、土そのものの風合いをそのまま楽しめます。
なるべく予算がかからないよう、壁土には自社の畑の赤土を使いました。
繋ぎのわらスサは、雪囲いで使った縄クズを刻んで再利用したもの、柱も、昨冬、「新月伐採」を試みた畑の栗の木をチョウナ掛けしたものです。

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石積みの表情。

腰積みは男鹿寒風石の溶岩です。
採石場で苔むした石を選ってきたこともあり、以前からここにあったような落ち着いた風情を出すことができました。

苔やシダは裏庭に生えていたものを使わせていただきましたが、これもまた素材の馴染みを助けてくれています。
ここは、奥行きが狭いことやコンクリート地盤のため、木を植えることができません。
狭い空間でも緑の潤いを感じられるようにと、既存の下草で柔らかさを出せたらと思いました。

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今回は、和室前のコンクリート擁壁の目隠しとして作りました。
土塀は試作で数回作っていますが、現場では初めての経験です。

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この土塀づくりには、昨年、安諸定男さんの土塀講習会(日本庭園協会東京都支部主催)に参加してきたヤングボーイの提案が随所に取り入れられています。
ワラの刻みから土の採取、土練り、栗の木の伐採から柱のチョウナ掛け等、素材の支度から加工、構造設計まで、この土壁づくりのほとんどの作業に彼の手間暇が込められました。
自分の手が入った仕事が形として庭に残っていくことは、庭職人としてとても嬉しいものです。
いつ来るかわからない本番のために練習を積み重ねてきた中でのこの仕事、彼にとっても感慨深いものになったことでしょう。

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濡れ縁に座って見た景色です。

土、木、石、苔、シダ、砂利、それぞれに質感の違う者同士が馴染み合い、一つの空間の中で穏やかに繋がってくれています。
狭い敷地の中のただの壁ですが、こうしたわずかなスペースにも地球を感じることができますね。
仕事を終え、ヤングボーイと濡れ縁に腰掛けて見たこの土塀は、土から生まれた自然素材でつくる庭の優しさや温もりを、あらためて私たちに教えてくれているようです。

土が乾いてくればまた風合いも変わってくることでしょう。
時の経過を楽しめるのもまた土塀の魅力ですね。

素晴らしい機会を与えていただいたお施主さんには本当に感謝です。
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FUKU
Author: FUKU
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五感で楽しめる暮らしの庭、創った庭から民謡や童謡が聞こえてきそうな、土地の風土と共にある庭を目指しています。

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Comment(4)

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紅の葉

キタさんへ

キタさん、こんにちは。
土地の素材と既存の下草に助けられて、なんとか完成と相成りました。
完成時にどこまで時の経過を表現し、落ち着きや馴染みを出せるか、とても贅沢なことだと思いますが、作り手として追求してみたいことですね。
また頑張りたいと思います。

2011/05/13 (Fri) 10:52

キタ

コンクリート擁壁が隠れているとは思えませんね。腰石もいい感じで。
また、パクらせてください。

2011/05/13 (Fri) 05:53

紅の葉

鈴ちゃんへ

庭に作られた土塀は、この辺りでは私も見たことがありません(笑)。
でも、土蔵なら見たことがあるでしょう?
石の基礎の上に木や竹で骨を組み土を塗っていくという工法は土塀も土蔵も一緒です。
この辺りでも、石積みの上に竹垣を組み、小屋根の付いたものなどは見かけると思いますが、基礎石積みや屋根は飾りというよりも実用で、雨や雪から垣根を守り長持ちさせるものです。この土塀は工法的にはそんな竹垣と同じで、荒く組んだ竹の隙間に土を塗り込み屋根を付けただけのものです。
栗の柱は青森の三内丸山遺跡でも使われていますが、腐りにくく耐久性が高いので、屋外では重宝です。
今回は景色として骨組みに竹を使いましたが、竹はもともと当地には無いもので、土蔵の骨組みも竹の自生する関東とは違い、この辺りでは木で組まれています。
今回の大地震では物流が滞り生活や仕事にさまざまな影響が出ましたが、こんなことからも、遠くから取り寄せた物に頼るのではなく、身近な地産の物で庭をつくるという原点に帰るべきではないかと、そんな思いを強くしました。
土地の古いものや自然には学べることや活かせるものがたくさんあります。
秋田の気候風土に根差した秋田の庭をつくる。
そんな考えを少しずつ形にしていけたらと思います。

2011/05/13 (Fri) 05:46

鈴ちゃん

こんばんは。

あまりこの辺では『土塀』と言うものは見たことがないような気がします。

『土塀』とは木の塀とはどう違うものなんでしょうか?
基本的な質問で恥ずかしいのですが。
雨や、地震などにも耐えうるものですか?

石が、自然体で、ちょうど良く組み合わされているのが面白いですね。苔や羊歯が動きを出し、また緑が映えますね!それにしても、土を練ったり、石を掘り起こしたり、ちょうど良く組み合わせたり、庭師さんの仕事は体力も頭脳もフル稼働ですね!

2011/05/12 (Thu) 23:19