杜の木漏れ日

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街路樹観察日記 ―緑の防災効果と樹木の生理を考えるー 中

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本日付の北羽新報に、「街路樹観察日記 中」が掲載されました。

原文を以下にご紹介いたします。

※新聞記事では、編集によって語尾や繋ぎが変わっているところもあります。
※下記に添付の写真は、このブログ用に追加したものです。

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街路樹観察日記 ―緑の防災効果と樹木の生理を考えるー 中

樹木は、葉の光合成によってつくられた養分で生命活動を行っていますが、自然状態の木は生きるために必要な量の枝しか出さないのに対し、強剪定により大量の枝葉を失った木は幹や枝のいたる所から一斉に芽を吹き出させます(これを不定芽といいます)。
元の葉の量が木にとっての適量だったのですから、木は以前の光合成量を取り戻そうと必死に芽を吹かせるのです。

このような枝は、枝の出る場所によって「徒長枝」や「幹吹枝」、「ひこばえ」などと呼ばれ、いずれも勢いが強く上に伸びるのが特徴ですが、急激に枝を伸ばす分、枝自体の強度は弱く、葉の重みで下がったり風で折れたりしやすくなります。
樹木の枝は、その木特有のリズムを持って根から幹、太枝から細枝へと自然に繋がっていきますが、幹と同じく上方に伸びる幹吹枝やひこばえと違い、途中で切られた太い枝から立ち上がる徒長枝は特に弱く、これは、流れるように繋がる樹木の芯力の方向が横から縦へと急激に変化することから木の体幹の力が伝わりにくく、しなやかに風を受け流すことができないのではないかと思って見ています。

このような弱い枝を出さないためにも、枝を切る時にはけして途中で切らず、根から幹、幹から太枝、太枝から細枝へと繋がる柔らかな枝の流れを殺さないよう、角度の良い枝を残していくことが大切で、そのためには、その木本来の自然樹形をよく観察するということが大事です。

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強剪定されて数年後の木(右)と、自然樹形の木(左)の枝数の違い


街を見回ると、今年は例年よりも「枝下がり」が多いように見受けられます。
これも剪定の影響ですが、枝下がりは一斉に出た不定芽が成長し、通常よりも密集して枝葉を伸ばすことから枝同士が絡み合い、絡み合うことで互いを支え合っていたものが、剪定によって絡みが外されたことにより支えを無くし、枝自身の重みで下がるという理屈です。

では絡み枝はそのままにしておけばいいかというとそうではなくて、このような枝をそのまま成長させるとますます枝葉は増え、手の施しようが無いほど混んでいきます。
現在行われているイチョウの樹形再生はこの枝抜き(透かし)という作業ですが、一度に外す枝の量を加減し、段階的な剪定を行っていくことで不定芽の発生を抑え、角度の良い丈夫な徒長枝は切り詰めずにそのまま残す「野透かし」を行うことなどで枝の強度を維持できれば、新たな徒長枝の発生や枝下がりを回避できるかもしれません。


IMGP1705.jpg IMGP1706.jpg 剪定しない自然形のイチョウは枝の強度が高く、雨を受けても枝下がりを起こさない(二ツ井町)
剪定で枝下がりを起こした木(左)
剪定を加減し、枝下がりを最小限に抑えた例(真ん中)
無剪定の木は雨を受けても枝下がりを起こさない(右)


歩き進むと、市道のイチョウ剪定に遭遇しました。
作業をされていた方に聞くと、幹吹枝を取り除く剪定を行っているとのこと、ここで木の側に立って考えてみると、強剪定後に出た枝を切られるということは生きるための力を奪われるということになります。
現代の樹木医学ではこのような事態を考慮して、新たに出た枝は木の養分確保のために残し、樹勢が回復し枝が充実してきた時に外す、という考え方になっているようです。

東京都江戸川区の街路樹指針には「片枝樹形」という街路対応型樹形がありますが、これなどは、通行や建造物の支障により車道あるいは歩道側に枝を長く伸ばせない場合などに、伸ばしても支障とならない側の枝を極力残すというもので、これも木の養分確保を考えた配慮です。
専門大学や樹木医の指導を受けながら管理を進める先進地では、このように、健康状態の木に対しても、木への負担を少なくしようと配慮しています。

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七夕運行の支障となるため、道路側を短く歩道や樹間の枝を残した、能代の街路対応型片側樹形。剪定量を加減し、野透かしを行ったことから徒長も最小限に抑えられている。


次に県管理の県国道を見てみます。
県道(畠町)のプラタナスの剪定は、例年夏場に行われています。
数年前、中和通りや国道101号のイチョウも新緑の頃に強剪定を受けましたが、葉のある時期の強剪定は木にどのような影響をもたらすのでしょうか。

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真夏に強剪定される畠町のプラタナス


樹木は夏から秋にかけて盛んに光合成を行い養分を蓄えますが、この養分は翌年の春の芽出しに使われます。
木は芽を出すことでかなりのエネルギーを消耗しますから、芽出し直後の強剪定は木に相当なダメージを与えます。
葉を出さなければ光合成を行えず、木はやむなく芽を出しますが、そんな状態を、「木は切ってもまた枝を出すから大丈夫」だとか「切られても枝を出す木は逞しい」などと思っている人間の勝手な思い込みがどれだけ木に負担を掛けているか、この状況が、木が「死んたぎ難儀している」状態であることに、私たちは気付いてあげなければなりません。

また、夏場の剪定は、新芽が成葉となり、これから光合成を活発化させようという時期ですから、木に来期の養分生成を行わせないということを意味します。
樹木は茂らせた葉によって自らの体を暑さから守っていますから、葉という日除けを失った木は直射日光をまともに受け、木陰が無くなったことでますます上昇する路面の熱までも受けて弱ります。
上下からの熱でフラフラになりながらも木は生きるために芽を出しますが、「弱り目に祟り目」とばかりに、そんな弱った状態に虫や病気が付き、そこで一生を終えてしまう木もあるのです。

二ツ井町 緑の景観を考える会 福岡 徹

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