杜の木漏れ日

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うどん

唐突だけれど、もともと、滑舌がいいほうではない。
声質が低いこともあり、阿吽の呼吸であるはずの妻でさえ、私の話を聞き取れないことがある。

舌が滑らかなのが滑舌だとしたら、口下手の自分は、全くもって滑舌が悪いということになる。

どちらかというと、喋るより書くほうが好きだ。
これは、流れの中で話をうまくまとめられない歯がゆさから、しっかり自分の意志を伝えるための手段として、自分は書く方を選んでいる。

と、これまではそんなふうに自己分析していたのだが、最近、それは話の構成やとっさの言葉選びが苦手というよりも、この滑舌の悪さに原因があるのかもしれない。

というわけで、ここでうどん。
今日、食堂でうどんを食べた。
食べたというより、頼んだ。

この店のうどんは結構気に入っている。
ここのうどんにはいつも、がっこ(漬物)とご飯が付く。
それも、うどんを頼む大きな魅力の一つだ。

で、うどんが出てきた。
ご飯が、茶わんではなくどんぶりに入っている。
しばらく来ないうちに、随分サービスが良くなった。

見れば、うどんはどんぶりではなく土鍋。
もう秋だし、うどんも鍋焼きに変わったのだろう。

土鍋の蓋を開ける。
出てきたのは、豆腐とホルモンとこんにゃく。
豆腐とホルモンとこんにゃく?
そうか、煮込みうどんだな。

レンゲでスープを一口。
味噌味だ。
そうか、味噌煮込みうどんか。
実は大好きなのだ。

そして、うどん。
箸を鍋底まで下ろし、うどんを掬う。
うどんを掬う。
掬う。
・・・掬えない。

塗り箸はやはり滑る。
この店はエコだから、割り箸ではなく塗り箸なのだ。
そんな所も気に入っている。

元々が左利き、ただでも箸を使うのが下手だ。
右手で掬うのは無理、引っ掛けるようにして掴む。
掴む。
…掴めない。

引っかける。
…引っかからない。
まったくもって、引っかかりもしなければ掴めもしない。

ここで気付く。
もしかして、うどんそのものが入っていなかったりして。
そもそも、うどんなのかこれ?


そういえば、飯の量が多いな。
ということは、これは煮込み定食か?
それとも、肉鍋定食?

煮込みも肉鍋も、うどんとはかなりかけ離れた音感だ。
一体、店の人には何と聞こえたのだろう?

店の人とは普通に世間話もし、会話も成り立っていた(と思う)。
肝心の、うどんだけが通じていなかったのか。

それにしても、自分の滑舌の悪さも、とうとうここまで来たか。
滑舌が悪すぎると、舌鼓も打てない。

滑舌が悪いと、うどんではなく舌も愚鈍になる、ということでオチです。

いつもは木のことを書く植木屋ですが、今日はこんな気の抜けた話ですみません。
最後までお付き合いくださり、どうもありがとうございました(笑)。

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