枝の「付け根」とカルスの成長
本屋さんや図書館に行ってみればわかると思いますが、専門書やプロが書いた本などでも、これが明記されている本は意外と少ないのです。
少ないということはまだ認められていないということなのではないか、本当にそうなのか、などと、そんな疑問も出てくるのではないかと思いますが、私自身も実は、この理論と出会った時にそう思いました。

剪定見学会で皆さんに紹介した公園内のケヤキです。
左側の枝は、採光不足などの自然淘汰により徐々に枯れていった枝のようですが、この、枯れが止まっているラインをよく見てみてみると、枝の付け根の部分の幹が少し膨らんでいるのがわかります。
従来の剪定は幹のラインに沿って真っ直ぐに切るやり方で(フラッシュカット)、幹や枝のラインをより美しく見せるために、この膨らんだ部分も切っていました。
しかし、このような自然状態の枝枯れでこの膨らみ部分が枯れずに残っていることを見ると、この部分までが幹で、ここは残さなければならないということがわかります。
以前は、切ったことを感じさせないように切り口を見せない角度で切り、枝や幹の流れるようなラインを見せることにこだわっていた私ですが、この理論を知り、実際に山に入って自然の木を観察したり、きれいに剪定された庭の木やブツ切りされた街路樹などに腐食が目立つことを見るにつけ、この理論の正しさを感じるようになりました。

これは、昨年の剪定会の時に手入れした枝です。
意識して枝切りした右側はカルスが巻いてきていますが、比較として、以前に切り残された枝をそのまま残した箇所は、カルスに動きがないことがわかります。

これも、昨年剪定した枝ですが、切り残されていた枝を適正位置まで切り戻したものです。

一年経ってこのようになりました。
カルスの幅は最大で2センチ程度はあり、かなり勢いよく巻いてきています。
カルスが巻き込む力は木が健康であることが第一で、地上部の枝葉が作る養分によって形成されると言われています。
このことからも、ブツ切りされた街路樹などに幹の腐食が目立つのは、適正位置での剪定が行われないことと併せ、木の光合成量の確保を考えずに枝葉を極限まで落としてしまうことから樹勢が衰弱し、カルスの形成力が弱まっているということではないかと推測します。
街路樹などは一気に枝を短くされたり枝抜きされたりしますが、できれば太い枝を落とす時などは、全ての枝を短くするのではなく、支障が無いほうの枝はできるだけ残すなどの配慮をしてあげれば、カルスの形成力も高まるということを、今回の見学会でもお話しさせていただきました。

剪定痕のアップです。
カルスの巻き方としては、欲を言うと、上下の部分が少し薄いですね。
均等な幅で再生するには、もう少し角度の付け方に配慮がいるようです。
木は本当に正直です。
1ミリ単位の微妙な誤差が、こんなところに現れてきます。
カルスの成長は1年経ってみなければわからないことですが、今年剪定した箇所が来年どうなっているか、昨年のものは2年経ってどうなっているのか、今後も観察していきたいと思います。
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