久喜市街路樹視察団をお迎えして―能代にも緑の条例を 下
2012年08月25日
本日付の北羽新報に、「久喜市街路樹視察団をお迎えして―能代にも緑の景観条例を 下」が掲載されました。
(小さい方の画像はクリックで拡大できます)
下記に原文をご紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久喜市街路樹視察団をお迎えして―能代にも緑の景観条例を 下
街路樹条例等、街の緑を保全する条例について調べたところ、青森県十和田市にその実例がありました。
十和田市の「官庁街通り」は四列の赤松と吉野桜で構成されるみごとな街路ですが、その景観の素晴らしさから、「日本の道百選」にも選ばれています。
市内の道路沿いや中央分離帯には、その昔、防風林として植えられた赤松が街道の並木のように林立していますが、官庁街通りはそれらの延長のように植栽されていることから、赤松林の景観がどこまでも続いているように見えるのです。
この通りは市道ですが、並びには県の庁舎や公園も隣接、その敷地内には同じく赤松や桜が植えられています。
実際に行ってみましたが、赤松と桜の景観が緑地の垣根を越え、縦横に連続していることで、街並みにみごとな統一感をもたらしていました。
管理者が違えば樹種も樹形も変わってくるものですが、ここでは管理者の違いを越えて、緑の統一がなされているようです。赤松は十和田市の木でもあるとのこと、これは、同じく防風目的で植栽された風の松原を有し、街路にも、市の木である黒松を植えてきた能代とよく似ています。
この官庁街の桜を観察すると、弘前公園の桜同様、腐りが入りにくく樹皮が再生しやすい剪定法(CODIT理論による剪定法)が行われていることが判ります。
切り口には墨汁入りの殺菌剤が塗られ、切り口を目立たなくする景観的配慮も施されていることから、これらの管理には樹木医が参画しているか、弘前との交流があるのではないかと感じました(この剪定法は今春、能代市にも導入を提案、先送りとなっています)。
視察後、十和田市役所でお話しを伺ったところ、やはり専門の樹木医が管理に携わってきたとのこと。能代の街路樹管理は、旧市時代に公園課から道路課へと移行されましたが、課に樹木知識を持つ職員がいなかったことなども、能代がブツ切りを招いた大きな要因です。
東京都江戸川区の街路樹も以前は公園課の管轄でしたが、道路に付随する物は道路の課が担当した方が効率的な業務を行えるとの考えで、街路樹係という専門職の部署を課内に設けたそうです。
十和田市でも、道路自体は道路課の管轄ですが、街路樹管理には専門知識が不可欠であることから、公園の担当課が管理に当たっているとのこと。通りの景観に統一感があるのは、公園と街路樹の両方を同じ課が行っているということからくるものでした。
江戸川区では、街路樹、公園樹、施設の緑とも、それぞれに管理課が違いながらも美しい状態に保たれています。これは、庁内に統一された管理指針があり、緑の景観は連続するものという共通認識を各課が持っているからです。
能代では、同じ市管理でも、隣り合う街路樹と公園樹とでは、同樹種同樹齢のものでも大きさや形が全く違います。
これは庁内に緑の統一指針や連携が無いことを表しています。江戸川区には街路樹条例はありませんが、明確な景観ビジョンと管理指針があり、それを実行できる専門職が常在していることから、街の緑が良好に保たれているのです。
十和田市には、以前から「緑と花のまちづくり推進条例」があり、十和田湖町との合併後、条例が改められたようです。
国立公園には厳しい景観規制がありますから、(十和田湖や奥入瀬渓流を有する)十和田湖町との合併により、さらにこの条例の徹底化が図られたのかもしれません。
職員の方は「街の規模が小さいから出来たこと」と謙遜されていましたが、一市一町での合併や人口が6万人程度ということでは能代と同じ、国立公園の十和田に出来て世界遺産の能代にできないわけがありません。
能代も以前は、適正な緑化管理がなされていたそうです。それがいつの間にかブツ切りへと衰退し、木に釘が打たれても誰も気づかないような意識レベルにまで落ちていった。
専門職も不在、条例もビジョンも管理指針も関係課の連携も無く、緑の啓蒙も行わない能代では、また元のブツ切りに戻ることは目に見えています。
そろそろ能代にも、緑の条例が必要なのではないでしょうか。
条例制定は、能代が二度とブツ切りを起こさないための抑止になるばかりでなく、市民の景観意識を高め、能代が緑を大切にしていくことを内外にアピールできる絶好の機会にもなるはずです。
久喜市では現在、街路樹の管理指針を作成中とのこと、久喜市議団は今回の能代視察をもとに、次回市議会で一般質問をされる模様です。
久喜市議会では、過去の議会議事録を見ても、盛んに街路樹に関する質問がなされています。
同じ会期中に、街路樹に関する様々な問題提起や提案が各会派から出されるのです。
能代市議会で、全会派から緑の景観条例案が出されたら素晴らしいと思っています。
緑陰が有り難いこの季節、9月市議会ではぜひ、緑の話題で盛り上がってほしい。そんなことを願って、この寄稿を終わります。
能代市二ツ井町 福岡 徹
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご精読ありがとうございました。
旧能代市時代から続いた街路樹のブツ切りは、それをチェックできなかった能代市議会にも責任の一端があります。
市民の苦情の元である街路樹を取り上げることは、議員にとっての踏み絵かもしれません。
しかし、本当に自分の街を愛するのなら、逃げずに目を向け、改善へと導いていただきたい。
一市民ができることには限りがあるのです。
選挙で選ばれた議員だからこそ、街を変える力がある。
能代市議の皆さんには、能代の底力を見せていただきたい。
そんなエールをこめて、今回の原稿を書きました。
この記事を読み、9月市議会で緑の話題を取り上げる議員さんが1人でもおられたら嬉しく思います。


下記に原文をご紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久喜市街路樹視察団をお迎えして―能代にも緑の景観条例を 下
街路樹条例等、街の緑を保全する条例について調べたところ、青森県十和田市にその実例がありました。
十和田市の「官庁街通り」は四列の赤松と吉野桜で構成されるみごとな街路ですが、その景観の素晴らしさから、「日本の道百選」にも選ばれています。
市内の道路沿いや中央分離帯には、その昔、防風林として植えられた赤松が街道の並木のように林立していますが、官庁街通りはそれらの延長のように植栽されていることから、赤松林の景観がどこまでも続いているように見えるのです。
この通りは市道ですが、並びには県の庁舎や公園も隣接、その敷地内には同じく赤松や桜が植えられています。
実際に行ってみましたが、赤松と桜の景観が緑地の垣根を越え、縦横に連続していることで、街並みにみごとな統一感をもたらしていました。
管理者が違えば樹種も樹形も変わってくるものですが、ここでは管理者の違いを越えて、緑の統一がなされているようです。赤松は十和田市の木でもあるとのこと、これは、同じく防風目的で植栽された風の松原を有し、街路にも、市の木である黒松を植えてきた能代とよく似ています。
この官庁街の桜を観察すると、弘前公園の桜同様、腐りが入りにくく樹皮が再生しやすい剪定法(CODIT理論による剪定法)が行われていることが判ります。
切り口には墨汁入りの殺菌剤が塗られ、切り口を目立たなくする景観的配慮も施されていることから、これらの管理には樹木医が参画しているか、弘前との交流があるのではないかと感じました(この剪定法は今春、能代市にも導入を提案、先送りとなっています)。
視察後、十和田市役所でお話しを伺ったところ、やはり専門の樹木医が管理に携わってきたとのこと。能代の街路樹管理は、旧市時代に公園課から道路課へと移行されましたが、課に樹木知識を持つ職員がいなかったことなども、能代がブツ切りを招いた大きな要因です。
東京都江戸川区の街路樹も以前は公園課の管轄でしたが、道路に付随する物は道路の課が担当した方が効率的な業務を行えるとの考えで、街路樹係という専門職の部署を課内に設けたそうです。
十和田市でも、道路自体は道路課の管轄ですが、街路樹管理には専門知識が不可欠であることから、公園の担当課が管理に当たっているとのこと。通りの景観に統一感があるのは、公園と街路樹の両方を同じ課が行っているということからくるものでした。
江戸川区では、街路樹、公園樹、施設の緑とも、それぞれに管理課が違いながらも美しい状態に保たれています。これは、庁内に統一された管理指針があり、緑の景観は連続するものという共通認識を各課が持っているからです。
能代では、同じ市管理でも、隣り合う街路樹と公園樹とでは、同樹種同樹齢のものでも大きさや形が全く違います。
これは庁内に緑の統一指針や連携が無いことを表しています。江戸川区には街路樹条例はありませんが、明確な景観ビジョンと管理指針があり、それを実行できる専門職が常在していることから、街の緑が良好に保たれているのです。
十和田市には、以前から「緑と花のまちづくり推進条例」があり、十和田湖町との合併後、条例が改められたようです。
国立公園には厳しい景観規制がありますから、(十和田湖や奥入瀬渓流を有する)十和田湖町との合併により、さらにこの条例の徹底化が図られたのかもしれません。
職員の方は「街の規模が小さいから出来たこと」と謙遜されていましたが、一市一町での合併や人口が6万人程度ということでは能代と同じ、国立公園の十和田に出来て世界遺産の能代にできないわけがありません。
能代も以前は、適正な緑化管理がなされていたそうです。それがいつの間にかブツ切りへと衰退し、木に釘が打たれても誰も気づかないような意識レベルにまで落ちていった。
専門職も不在、条例もビジョンも管理指針も関係課の連携も無く、緑の啓蒙も行わない能代では、また元のブツ切りに戻ることは目に見えています。
そろそろ能代にも、緑の条例が必要なのではないでしょうか。
条例制定は、能代が二度とブツ切りを起こさないための抑止になるばかりでなく、市民の景観意識を高め、能代が緑を大切にしていくことを内外にアピールできる絶好の機会にもなるはずです。
久喜市では現在、街路樹の管理指針を作成中とのこと、久喜市議団は今回の能代視察をもとに、次回市議会で一般質問をされる模様です。
久喜市議会では、過去の議会議事録を見ても、盛んに街路樹に関する質問がなされています。
同じ会期中に、街路樹に関する様々な問題提起や提案が各会派から出されるのです。
能代市議会で、全会派から緑の景観条例案が出されたら素晴らしいと思っています。
緑陰が有り難いこの季節、9月市議会ではぜひ、緑の話題で盛り上がってほしい。そんなことを願って、この寄稿を終わります。
能代市二ツ井町 福岡 徹
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご精読ありがとうございました。
旧能代市時代から続いた街路樹のブツ切りは、それをチェックできなかった能代市議会にも責任の一端があります。
市民の苦情の元である街路樹を取り上げることは、議員にとっての踏み絵かもしれません。
しかし、本当に自分の街を愛するのなら、逃げずに目を向け、改善へと導いていただきたい。
一市民ができることには限りがあるのです。
選挙で選ばれた議員だからこそ、街を変える力がある。
能代市議の皆さんには、能代の底力を見せていただきたい。
そんなエールをこめて、今回の原稿を書きました。
この記事を読み、9月市議会で緑の話題を取り上げる議員さんが1人でもおられたら嬉しく思います。
- 関連記事
-
-
地元紙寄稿 「花・夢・緑の街能代市 」(上)~緑の基本計画への提案~ 2012/10/08
-
繋がる街路樹の輪 2012/09/01
-
久喜市街路樹視察団をお迎えして―能代にも緑の条例を 下 2012/08/25
-
久喜市街路樹視察団をお迎えして―能代にも緑の条例を 上 2012/08/23
-
「緑の先進地に学ぶ木に優しい剪定法」北羽紙寄稿文 2012/03/29
-