杜の木漏れ日

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樹木医さんと緑の街歩き

昨日、鹿角市の熊谷樹木医にお願いし、私の管理する庭の木や能代市内の街の木を見ていただきました。
熊谷さんは理科の先生をされていただけに植物学に精通され、小学校の校長先生や剣道の師範もされるなど文武両道の良識者でもあります。
保存樹や天然記念物に指定される樹木などは教育委員会が管理するなど、緑の街づくりには文化的教育的な視点が必要。
能代では学識経験者による提言がほとんどないことから、教育者であり緑の専門家でもある熊谷さんには、ぜひ一度、能代の街を見ていただきたいと思っていました。
いろいろ見ていただいたことなどをご紹介したいと思います。

はじめに、現在うちで管理に入らせていただている二ツ井庁舎の黒松から。
松は桜などの落葉広葉樹とは切るポイントが違うことから、その確認をしていきます。

keyakibaku.jpg kuromatubaku1.jpg kuromatu2.jpg kuromatu3.jpg

左から2枚目、黒松の枝を幹の付け根から落とす時は、3枚目にある指の位置が剪定位置となり、それにしたがって切ると右写真のようになります。
一番左の写真はケヤキの枝枯れの様子ですが、幹が盛り上がっている部分で枯れが止まっているのが判りますが、このラインが剪定位置で、ここで切ると内部への腐朽がしにくく、傷口もふさがりやすいのです。
落葉樹と針葉樹ではこの幹の盛り上がり方が少し違って、落葉樹の方がすそ野が広く、針葉樹は盛り上がりの部分がそれほど目立たず、切る位置も、幹から少し離れた所になります。
傷口をふさぐのはカルスという癒傷組織ですが、松はこの組織の力が弱く、樹液がその役目を果たすとも言われています。
しかし、カルスが巻きこむ力は弱くても、この部分に腐朽を防ぐ防御壁があることから、剪定位置はこの辺りということになります。


bunnka sakura

次に、能代市街まで飛び、昨年剪定した文化会館の桜の再生状況を見てみます。

2011年3月 2012年2月 bunnkakaikannsakura1.jpg<

左から、剪定時(1年半前の3月)、今年の3月(1年後)、そして、半年たった今の様子。
よほど樹勢がいいのか、どんどんカルスが巻きこんできています。
1年に2センチ近く巻いてきているので、あと2,3年でこの切り口はふさがるでしょう。

不適正な切り口sakurakare_20120924142550.jpgnanakamafura.jpg

切り方の角度が悪かったり(左)、枝を残し過ぎたり(真ん中)、または盛り上がり部分まで切ってしまったりすると(右 市道のナナカマドの「フラッシュカット」)、きちんと切ってあげれば5年で切り口がふさがるものが、10年掛かったり、あるいは巻き込めないまま幹の内部まで腐りが入ります。
これは、枝の位置によって巻き込む力の強い場所と弱い場所、腐りをブロックする場所とブロック出来ない場所ががあるということを示しています。
この理論こそ、樹木医が採用するCODIT理論です(植吉さんのサイト記事より)。

これらの剪定痕を比較して見ると、CODITを意識して剪定すれば木の傷口も早く治り、木の強度も増していくことを確信できます。
能代市にはCODIT理論の採用を提案、今後の剪定による検証が必要と先送りにされていますが、意識して観察を行っていれば、この理論の確かさはすぐに解るのです。

sakura kosukasiba koukasiba2.jpg

文化会館の桜を見て回ると、左写真のような樹液が流れている状態を良く目にしました。
樹木医さんによると、これはコスカシバの食害に対抗するため、木が樹液を出して抵抗、虫と戦っているところなのだそうです。
右写真は同じ木の葉の様子ですが、葉が乾いたように萎れかかってきています。
コスカシバは養分の通り道となる木の形成層を食害するため、その影響が出て来ているようです。

pura1.jpg

さて、場所を移動して今度は日吉町の街路樹へ。
フラッシュカットにより内部まで腐りが入り、空洞化したプラタナスです。

フラッシュカットにより幹の内部に腐食が進行、空洞化したと思われるプラタナス 日吉町切断位置が深く防御層を傷つけている。角度が適切でないことからカルスが均等に負けていない

プラタナスは通常、白緑色の幹肌をしています。
この木は幹の成長が止まっているらしく樹皮が動かないことから、茶色い皮がそのまま付いているようです。
この空洞部分の下は白緑色をし、上部は茶色い皮が付いているのが判りますが、この空洞部を境に木の成長に違いが出ているようです。

gairojyu gomibako kannban2.jpg kannban_20120924151859.jpg

途中、嬉しいものを見つけました。
以前は左写真のように、街路樹の幹に巻かれていたゴミ看板が改善されていたのです。
この看板は、木の幹から立て札式へと変わり、そして今回、新設されたゴミ箱へと移されていました。
市に景観向上や樹木保護のために、街なかの木への看板類の移設を提案して3年ぐらい経ちますが、こうして変わってきていることを目の当たりにすると、言いにくいことを勇気を持って発言してきた甲斐があったと、本当にうれしく思います。

keyakikouen1.jpg

さて、最後はケヤキ公園。

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写真からも、上部に枝枯れが目立つのが判ると思いますが、芯梢等、上部の枝枯れは地下部の異常によって起ります。
やはり、この木たちが道路に面していることにより、根の生育に異常をきたしているようです。
根の周囲は歩道のアスファルト面で覆われていますが、根に必要な酸素は雨と一緒に土中に入ることから、それが供給されにくい状態となっています。
これは、周囲が土になっている公園内のケヤキと比べて見れば一目でわかります。
木と木の間のアスファルトを剥ぎ、土壌改良を行って土で繋げるか、歩行に支障の無いような網板式の路盤に替えるなどの措置を行えば、改善の余地はあるかもしれません。

keyakikouenn3.jpg

国道101号に面したケヤキ公園の街路樹は県管理ですが、これまで、枝の途中で切る詰めるなど、不適正な剪定が行われてきたことによる腐朽も目立ち、こんなことも、巨木の樹勢を弱める原因となっています。

keyakikouen4.jpg

庁舎側に面するケヤキは、残念なことに、電線支障により強く切られていました。
正面の白い建物は、現在存廃が議論されている市文化財の議事堂ですが、国道を曲げてまで残したケヤキ公園の木の異常に気付く人は少ない。
市は、基本的に議事堂解体の方針ですが、市民の声の高まりによっては保存も考えるとのこと。
街の木の保存については議会なども関心が低く、声が高まるどころか声すら上がらないのが実情です。

keyakikouen5.jpg
keyakikouenn2.jpg

無残にも、電線の下では、落葉広葉樹に最も不適な真夏に太い枝を切り、枝が裂けるほどの無配慮な剪定が行われていました。
2年前の秋、市が電力会社に大掛かりな電線支障剪定を許したことにより、再生過程にあった市道の街路樹は壊滅的な被害を受け、それまで掛けてきた2年分の管理費を台無しにするという事態が起きました。
それを踏まえ、市、県、電力、電話、造園等の関係者が集まり、電線と街路樹が共生するための方法を探る連絡会議が持たれ、今冬、市から街路樹の剪定委託を受ける造園団体が電力会社向けに電線と共生する剪定法の講習会を開くなど、良い方向に向かって来ていただけに、今回のこの剪定はとても残念に思います。

今回は公園の木で電話線の支障のようですが、公園と街路樹では担当課が違うものの、街路樹と公園は隣り合わせにあるのだから、問題を共有するべきです。
庁内にしっかりした共通認識が無いからこんなことが起こる。
もうこのようなレベルの低いことは、これで終わりにしていただきたい。
この機会に、能代市は真剣に考えなければなりません。


ということで、熊谷樹木医と共に、半日、能代の街を歩きました。
熊谷さんは、木を見るたび、「お~、この木は頑張っているな」、「この木はかわいそうだな」と、木の気持ちになって木を診ていました。
木も、人と同じく命ある生き物です。
みながそんなふうに思えれば、能代の木々ももう少し良くなるのではないかと思います。

熊谷さん、遠く鹿角から、本当にありがとうございました。
今回教えていただいたことを活かしていけるよう、多方面に働きかけていきたいと思います。

Comments 4

紅の葉  

Re: 樹木医チャレンジしてみませんか!?

鈴ちゃん、うちでもお盆前に剪定に回ります。木の都合を取るか人の都合を取るか、どちらを優先するべきかで悩みますが、これを仕事とする以上、お客様の都合が優先です。が、それでも木のことを考えて、夏場は軽い手入れにしています。
「木の迷惑」ということを考えると、剪定はしない方がいいんです。木は人から手を入れられなくても生きていけますし、切られれば切られるどおかしくなりますから。

>この分で行ったらジャングルになりそう
この間紹介した「大きな木のある街」という小学生の絵のコメントに、「私はジャングルに住みたい」と書いてました(笑)。人間はもともと森の中の住人だったから、そんな遺伝子が残っているのでしょう。森で暮らしていたから、人は身近に木を植えるんだそうですよ。

> 樹木医にチャレンジしてみませんか?
私は、□(資格)より○が好きなんです(笑)。もし樹木医になるとしたら植木屋をやめてからかな。まずは庭師になることが目標です。せっかくのお願いなのに、ボウシ訳ありません(笑)

2012/09/26 (Wed) 09:25 | EDIT | REPLY |   

鈴ちゃん  

樹木医チャレンジしてみませんか!?

うちも、お盆が近くなると、庭師さんが来て、松の木をはじめ庭の大きくなった木々をCUTします。そして最後は、やっぱり「サッパリしたなぁ♪』と言う感想を持ちます。お盆のお客様を迎える準備でもあるわけです。

でも、それは、樹木にとっては迷惑行為だったのですか!?
それにしても、嫁になった頃は小型だった木々が、私の背丈を越し、見上げるような大物に?なっています。この分で行ったらジャングルになりそうで心配です。

樹木医にチャレンジしてみませんか?
能代に樹木医がいたら能代のためになります。
無理なお願い、ボウシ訳ありません(笑)

2012/09/25 (Tue) 23:36 | EDIT | REPLY |   

紅の葉  

Re: Re: 樹木のお医者さん

鈴ちゃん、こんばんは。
樹木医試験の問題集を見たことがありますが、私にはサッパリでした(笑)。
秋田県でも、15人ぐらいしかいないんですよ。
あんな難しいことのわかる人たちは、やはりエライ人たちだなと思います。

>樹も生きているんだなぁ
そうですね。
人間が傷付くと血を流すように、樹木は切られると樹液を出します。
だから、樹液の出る夏などは、あまり木を切りたくないんです。
剪定は床屋と同じように思われている所があって、夏に枝を切ると「サッパリした!」なんて言葉を聞きますが、木は茂らせた葉っぱで暑さをしのいでるんですよね。
坊主頭の人は夏に帽子をかぶると思いますが、夏の剪定は木から帽子を取り上げていることになるんです。
本当に、木にはボウシ訳ないというか、そんなことはボウシませんというか、真夏の強い剪定は防止しなければなりません。
真面目な話なのに、最後はこうなってしまいました。
返す返すも 、ボウシ訳ありません。

白いプラタナス、今度見てみますね。

2012/09/25 (Tue) 22:00 | EDIT | REPLY |   

鈴ちゃん  

樹木のお医者さん

人間にお医者さんがあるように、樹木にもお医者さんがいても不思議ではないですよね。
樹も生きているんだなぁ、と、当たり前のことながら感心しました。虫と対抗して、樹液を出しているなんて、人間がばい菌に対して、白血球を増やすのと同じ理屈ですよね。もっと、樹の気持ちになって、町の木々を守ってあげたいですね。

総合体育館の通りのプラタナスの幹の皮が剥げて真っ白になっているのが気がかりです。あれは、正常なんですか?(私は、あの迷彩柄の衣装がお気に入りなんですが。)

2012/09/25 (Tue) 00:39 | EDIT | REPLY |   

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