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地元紙寄稿「花、夢、緑のまち 能代市(下) -けやき公園の木々は語りかける―」

2012年10月09日
街の緑2(緑の提案と啓蒙:地元紙・専門誌掲載記事) 0
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                               (右写真クリックで全文閲覧できます)

今朝の北羽新報に、寄稿の「下」の部「けやき公園の木々は語りかける」が掲載されました。
下記に原文と写真を紹介します。
(※ 紙面の都合で掲載にならなかった写真も載せています。)


「花、夢、緑のまち 能代市(下) -けやき公園の木々は語りかける―」

「けやき公園を景観重要樹木に」との提案を行いましたが、けやき公園の木々は今、どのような状態にあるのでしょう。先日、県内の樹木医を公園に案内、枝枯れの目立つ国道101号のケヤキ(街路樹)の状態について尋ねると、芯梢部の枝枯れは根の状態に問題があるとのことで、土壌改良の必要性を指摘していました。根は酸素を必要とし、酸素は水(雨)と共に土中に入りますが、歩道のアスファルトがそれを妨げているとのこと。土面にある公園内のケヤキには枝枯れが少ないことから、このような環境の違いが木の健康状態に表れているようです。
また、この街路樹のケヤキは、太い枝が途中で切り詰められたことにより、切られた所から枯れ下がりを起こし、幹内部へと腐朽が進行しています。このような枝枯れは幹の空洞化を招き、樹勢の衰弱や樹体の強度を低下させます。強度が不足するということは強風などによる枝折れや幹折れ、倒木などを引き起こすということです。対策としては、適正位置までの切り直しを行い、カルス(癒傷組織)が再生しやすいような処置を行なうことが大切ですが、この機会に、地下部の改善も含めて、樹木医などの専門家に調査を依頼されてはいかがでしょう。

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(左)芯梢に枝枯れが目立つケヤキ公園の街路樹 
(右)枯れ下がりを起こしているけやき公園街路樹の枝

公園に移動すると、庁舎に面した道路沿いのケヤキが電線の周囲で強く切られていました。つい最近切られたようですが、枝が裂けるような無造作な剪定が行われているため、せっかくの風格ある景観を台無しにしています。景観面ばかりでなく、真夏の強剪定は落葉広葉樹の樹勢に多大なダメージを与えます。この切り口はやがて腐朽し、空洞化を引き起こすでしょう。市道の街路樹に対しては、関係者間で電線との共生が協議され、理解を深めるための剪定講習が行われるなど良い方向に進んでいただけに、今回のブツ切りはとても残念なことです。街路樹と公園は隣り合うものですから、お互いの管理課同士が連携し、電線との共生を共通認識としていくべきです。能代の公共剪定では、作業前の仕様確認(見本剪定)や途中検査が行われていないようですが、これをしっかりと行うことでこの事態は防げます。電線支障剪定は電気業者が行っていると思いますが、専門外の業者が剪定に当たる際はなおのこと、市の公園担当者が現場に立ち会い、作業指示を行うなどの対処が求められます。

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(左)電線で分断されるケヤキ  
(真ん中)電線の下でブツ切りされたケヤキ 
(右)無造作な剪定により枝が裂けたケヤキ

けやき公園で一番大きなケヤキには幹に大きな空洞がありますが、木は空洞の両側を肥大させることで自身の強度を高め、倒木を防いでいます。よく見てみると、この空洞部の中には根が見えます。これは「不定根」と呼ばれるもので、桜などによく見られるものです。この根は空洞の中を地下まで降りていて、根から取り込んだ養分を地上部に届ける役目をしています。幹が割れることは木にとってとても大きなダメージですが、木はそれでも生きようと必死に頑張っているのです。このような木の姿は、私たち市民に大きな勇気と生きる力を与えてくれます。

朝日を受け、神々しいまでの力強さを誇る大ケヤキ
けやき公園の大ケヤキ

「景観重要樹木」の指定を受けるためには、適正管理を行うことが条件の一つです。今の管理レベルでは無理ですが、今後の良好管理をここで確約し、もしこの指定をクリアできれば、他の公共木にも適正管理の常識化を図ることができるかもしれません。そのためにも、腐食を防ぎ樹木の再生を早めるCODIT理論の導入を、申請の文言に大きく掲げていくことが必要になるのです。この理論は、桜日本一の弘前城公園でも成果を上げ、近代街路樹発祥の地の横浜市でも共通仕様書に定められています。能代市は、いまだこの理論の導入に消極的ですが、人為による不適正剪定が木を傷めていることを理解し、早急な手立てを行わなければなりません。このけやき公園の木々たちは、数百年もの間、私たちを見守ってきてくれました。声なき木の語りかけに耳をそばだて、この緑の遺産を未来の子供たちに残してあげましょう。
 能代市二ツ井町 福岡 徹
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FUKU
Author: FUKU
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