地元紙寄稿「水吹き銀杏に会いに行く」
2012年11月08日

今朝の北羽新報に拙文が掲載されました。
11月1日のブログでも紹介した「西本願寺の逆さイチョウ」のことを書いたものです。
イチョウの特質や、街の木への理解が深まる一助になれば幸いです。
原文を下記にご紹介いたします。
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「水吹き銀杏」に会いに行く
京都市西本願寺の境内には、「逆さ銀杏」と呼ばれる天然記念物の大イチョウがあります。樹齢4百年ほどの木ですが、梢がまっすぐ上に伸びる通常のイチョウと違い、横に枝を張った珍しい樹形をしています。根っこを天に広げたような姿をしていることから「逆さ銀杏」と呼ばれているそうです。能代市役所の向かいにも、比較的低い位置で枝分かれし、電線を分けるようにして伸びるイチョウの街路樹がありますが、これは電線対策として、大潟村の銀杏ロードにある果樹樹形のイチョウを参考に、意図的に作られたものです。逆さイチョウはこれらの木をさらに特徴化させた樹形をしていますが、この樹形もまた、剪定によって作られたものです。樹木管理に携わる者として、ぜひ一度その姿を見てみたいものだとずっと思っていたところ、念願かない、この木に会ってくることができました。
朝5時半の開門を待って訪れた西本願寺では、広い境内を探すまでもなく、逆さイチョウの堂々とした姿が目に飛び込んできます。そろそろ黄葉が始まろうとしていた時期ですが、お寺の雰囲気や本堂から聞えてくるお経も手伝って、神々しいまでの存在感を誇っていました。目測ですが、樹高は10mほど、枝張りは、優に30mは超えているでしょう。木の高さよりも横幅の方が3倍以上もあるのです。この驚くべき枝張りを支える幹は直径にして約2m、高さ2m前後の低い位置から、太い横枝を四方に張らせていました。所々に太い枝を切った跡もありましたが、天然記念物級の木ともなると、やはり樹木医などの専門家が管理に参画しているのでしょう。切り口の角度や殺菌剤の色などを見ると、弘前公園の桜同様の処置がなされていることがわかります。
逆さイチョウは、別名を「水吹き銀杏」とも言い、江戸時代中期の「天明の大火」の際、火の粉を浴びながらも水を吹き出し、お寺を守ったという言い伝えが残っていますが、お寺などにイチョウの木が多いのは、この木が仏教と共に中国から渡ってきた木であることと共に、このような火災から建物や人々を守るために植えられているのかもしれません。能代の街路樹で一番多い木もイチョウですが、これは、この木の「防火樹」としての効果に着目し、大火対策として植えられたものです。イチョウは保水性の高い木で、枝や幹が厚いコルク質でできています。高温状態になった時には、熱せられた水分が表面に出てくるという性質があることから、火事などの際、大きな効力を発揮するのです。イチョウは関東大震災の火災でも生き残り、神戸の震災の時も火災の延焼を食い止めました。このような話からも、耐火や防火の特質をもつこの木の素晴らしさが解ると思います。このイチョウの特質や能代に植えられた目的は後世に伝えていくべきことですが、能代にはまだ、それを記したものが無いようです。市広報や市HPなどで紹介すれば、イチョウの木への有難みも増し、落ち葉の苦情も少しは減るのではないかと思っています。
火災が起きた際、イチョウの木は必ず市民の命を守ってくれるはずです。能代のイチョウが水を吹く事態は避けたいものですが、落ち葉掃除のこの季節、人知れず街を守ってくれているこの木たちの特質に感謝し、ホウキを動かしたいと思うこの頃です。
二ツ井町 福岡 徹
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