杜の木漏れ日

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山の木を植えた野筋のある庭

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先月より取りかかっていた三種町の庭が完成しました。
もともとある傾斜地に山の木を植え、山道風の小道で回遊する庭です。

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寒風石の溶岩を畳んだ山道。
モルタルを使わず、厚い石をかみ合わせるように組んでいます。

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山道の園路はパーゴラへと続きます。
パーゴラには既存のバラを移植、このバラの門が畑と庭の結界です。
手前は、既存の枕木を利用してつくったベンチ。

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このベンチはリバーシブルとなっています。
庭仕事をしながら、畑仕事をしながら、いつでも一休みできる場所です。

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斜面に植えた山の木。
ミズナラ、ヤマモミジ、ハシバミ、アオハダ、カマヅカ、クロモジ、ムラサキシキブなど、作庭地周辺に自生する樹種を植えています。

山堀りの木や自社の畑で育てた山の木たちですが、雪で鍛えられているせいか、みな根元が曲がり、枝も片側にしか付いていない木がほとんどです。
そのような木たちを、付かず離れずといった感じで寄せ植えしています。

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上空に制限はないので、空に向かってのびのびと枝を伸ばさせます。
里山などの傾斜に生える雪国の山の木は雪圧で根元が曲がり、日の光を求めて上方や前方へと枝を伸ばしながら幹も前傾していきます。
そんなイメージで植えています。

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山の木は山にあるように植える。
剪定で木を庭に合わせていくのではなく、できればその木の個性をそのまま生かせる舞台(庭)を用意してあげたい。
植えた木から、その木が生えていたであろう山の中を思い浮かべられるような雰囲気をつくれたら素晴らしい。
そんな思いです。
延段と流れ

山道の脇には野筋のような小流れを。
傾斜地からの排水が小さな小川となって流れていきます。
雨の日にだけ現れる、幻の流れ。

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浅い水面に映り込む山の木の枝。

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流れの始まり。
上流から下流を見降ろしています。
既存の芝庭から集まる雨水が流れとなって排水されていきます。

飛石脇を小滝となって流れる水

石組と飛石の間を流れる雨水。
石組の最中に降った大雨で、この部分に水が走り、小さな地崩れを起こしました。
水はここを流れたいのだと思い、この部分を小滝にしています。
この水が石畳の下を通り、野筋へと流れ込んでいきます。

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小滝に使っている小砂利は、採石場の片隅のこんな所から選んできています。
機械で砕かれた砕石は大きさも均一で色あいも自然味に欠けるため、砂から小石までが入り混じった不揃いの物を使います。

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石組に使っている石が自然風化したものなので同質同色、違和感なく庭におさまります。

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小滝からの水は石畳の下から浸み出るように湧き、緩やかに赤土の上を流れていきます。


今回の庭づくりは、工期の半分以上が雨だっただけに完成の喜びもひとしおです。
いつもは、雨が降れば現場を休む「からっぽやみ」の植木屋ですが、今回は雨でも現場に出続けたおかげで、庭の弱い部分がわかりました。
土が水で削られる部分は小石を埋め込んで小滝にし、水が溜まる所は景色にする。
マイナスと思われる部分を長所に変える。
そんなことを、今回の長雨のおかげで思い付きました。

雨が降れば水が集まって溝が掘れ、流れができる。
水で土が削られれば岩盤や砂利が現れ、その上を水が走る。
山の木の有り様も然り、「自然には法があり、法に従って庭をつくる」。
これは、修業時代の師匠から教えていただいた言葉ですが、この「自然の法」というものををあらためて感じた今回の庭づくりです。

「法」という字は「さんずい」に「去る」と書きますが、これは「水が去る」ということで、「水が高い所から低い所に流れるが如く」ということかなと思っています。
自然の法での庭づくりは自分の原点。
里山をイメージさせる自然な庭をとのご依頼でつくった庭ですが、作庭の原点を思い起こさせてくれる機会をいただけたことに感謝です。

Comments 6

紅の葉  

植吉さんへ

植吉さん、こんばんは。
>野筋の流れ
お褒めいただきありがとうございます。
雨が降った時だけ流れる浅い流れですが、残念ながら、人間的な深浅も、この流れに比例しているように思います。

風格という言葉、普段、あまり意識して捉えたことがありませんでしたが、風格は「風の格」、風の格調のことなんですね。
人格、風格とくれば体格。
なんだか、体格ばかりは目立つこの頃です(笑)。

2012/11/27 (Tue) 21:08 | EDIT | REPLY |   

植吉  

風の格

風格ですね。
石にも土にも植物たちにも風が渡って、凛とした格調を作ってゆく。
作庭前と作庭後では時の流れが変わったようです。
ますます人格を深められていますね。
とくに「野筋の流れ」は目から鱗でした。
隈研吾の「負ける建築」という言葉を思い出しました。
いつも紅の葉さんの言葉には、庭師の原点を思い起こさせてくれます。
ありがとうございます。

2012/11/27 (Tue) 06:31 | EDIT | REPLY |   

紅の葉  

台風や大雨は千載一遇

しんぼうさん、ありがとうございます。
流れもあられこぼしも植栽も若衆の仕事です。喜びます。

大雨で石組の間の土が削れた時、しんぼうさんが庭誌今月号の作庭私論に書かれていた中村外二さんの言葉、「台風や大雨は千載一遇。こんな時こそ現場のようすを自分の目で見なあかん。」を思い出していました。
偶然ですが先日、中村さんのお弟子さんとお話しする機会がありこのことを訊くと、やはり本当でした。
しんぼうさんの言葉、「庭屋は山が生み出すものを借りて仕事をしている」、この言葉もまた、身に染みた現場です。
「本物の良さ」を知るためには、山を知り、自然の力を知ることが大切と、あらためて思い知らされました。

2012/11/20 (Tue) 22:20 | EDIT | REPLY |   

しんぼう  

素敵すぎます。
まるで山に迷い込んだような錯覚に陥ります
でも迷い込んだ割には不思議と不安にならない感覚
福岡さんの人柄が存分に表れている空間です
感動です。ありがとうございました

2012/11/20 (Tue) 19:14 | EDIT | REPLY |   

紅の葉  

脇本さんへ

脇本さん、ありがとうございます。雨降りはあまり歓迎されませんが、雨が待ち遠しくなる庭というのも楽しいかもしれません。自然は人間にとって恩恵でもあり脅威でもありますが、できるだけうまく付き合っていきたいものですね。
石組みに使った石は、4トン車で1台ぐらいでしょうか。そんなに大きな石は使っていませんが、土が崩れそうな所に据えていったらこんなふうにおさまりました。これから下草が植わったり落ち葉が落ちたり、あるいは、この庭に合った草などが生えてくれば、石の存在感ももう少しおとなしくなるでしょう。通常の庭では、石を隠さないようにしますが、ここでは土が留まってくれていればいいので、落ち葉の中から石が少しのぞいているぐらいがちょうどいいのかなと思っています。
木も石も、人の作為が見えなくなるぐらい、馴染んでくれたら嬉しいですね。

2012/11/16 (Fri) 23:19 | EDIT | REPLY |   

脇本  

雨の日だけ現れるなんて素敵ですね!

やはり『自然』が自然にその場に留まることが出来ると言う事が良いのでしょうか。
それを見事に活用なされて素敵です^ ^

物凄い石組みの量に圧巻です!!
お施主様もお喜びになったのが思い浮かびます。

またこのお庭が成長していくのも楽しみですね^ ^

2012/11/16 (Fri) 21:56 | EDIT | REPLY |   

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