杜の木漏れ日

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「都市型自然樹形を考える 街路対応型樹形に関する一考察 下」

本日付の北羽新報文化欄に、下の部が掲載されました。

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「下」では、「」で紹介した街路対応型樹形のスタイルを能代に応用し、能代独自の都市型自然樹形をつくることを提案しています。

原文はコチラです。

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「都市型自然樹形を考える 街路対応型樹形に関する一考察 下」

街路対応型樹形の応用


街路対応型樹形のスタイル(片枝樹形:江戸川区街路樹指針「新しい街路樹デザイン」より) 江戸川区街路樹指針「新しい街路樹デザイン」より

扁平樹形」や「片枝樹形」といった一見変則と思われる樹形は、現代の街並みに樹木を適応させる画期的な方法として注目される。従来の樹形づくりには四方の枝の長さを均等に保つという固定観念があるが、そうした考えから脱却し、その場に適したものを生み出していく発想は大いに参考になる。この理論で特筆すべきは、樹木の生理に対して具体的な配慮を行っている点にある。樹木は一気に枝葉が少なくなると樹体内の養分バランスが崩れ、紅葉の遅れや不定芽の発生などの異変を引き起こす。自然樹形維持の透かし剪定を行っても一度に枝数を減らし過ぎるとこうした弊害が起こることから、剪定前後の木の状態が変わらないような配慮が大切になる。樹木の養分生成量を考えて枝葉を残すという木への気遣いは、能代の緑化管理には無い。こうしたことを能代で応用するにはどうしたらいいか、次の官庁街(市道)の街路樹を例に考えてみたい。

①七夕対応型樹形

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電線がなく七夕運行が行われる市役所前のイチョウに応用すると図2のようになり、片側樹形の変則形となる。市庁舎のある歩道側は枝を伸ばし、車道側下部の枝は車両通行や七夕運行を考慮して幹元から外す。道路側の支障枝は毎年枝の途中で剪定しているが、枝を途中で切らずに幹の付け根から外しておけば、翌年の剪定は不要になり管理費を抑えられる。切り口からは萌芽がするが、度を超えた剪定をしない限り大量発生することもなく、こうした芽は幹吹枝となって上方に伸びていくことから、しばらくは道路支障を起こさない。この樹形は、進行方向から見ると車道側の下枝が欠けて見えるが、歩道から木の正面を見ると自然樹形になり、イチョウの自然な雰囲気を残すことができる。この方法は国道101号や中和通りのイチョウにも応用できる。

車道側の下枝が短く切られる街路樹(国道101号)
車道側の下枝が刈り込まれる街路樹(国道101号 2012年12月撮影)

②電線対応型樹形(逆さ銀杏型)

2009.jpg → 電線支障剪定
数年前、電線支障との共生を考えて電線周囲の枝を元から抜いて透かした街路樹(能代市役所向かい)と、その後に行われた電線支障剪定のブツ切り

市庁舎向かいのイチョウ並木は電線支障があり、高電圧線の下や他の電線周りの枝が煩雑に刈り込まれ、樹形が硬い雰囲気になりやすい。扁平樹形や片枝樹形は横方向に対して行われるが、こうした電線支障には、思い切って幹の更新を行うなど縦方向の対処を行って樹高を下げ、直幹型から双幹型などの横張りのある姿に変えることで毎年の支障剪定の手間を省き、管理費を抑えることができる(図3)。写真3は、京都市西本願寺の「逆さ銀杏」大潟村の銀杏ロードの果樹樹形を参考に試行したもので、図3のやり方の実例となる。

sakasa3_20130131172717.jpg 京都市西本願寺の逆さイチョウ
銀杏ロード1
果樹樹形に仕立てられた大潟村銀杏ロードのイチョウ。低い位置から枝分かれさせた後は自然生育に任せ、ほとんど剪定を行っていない。
zu2.jpg 図3 幹の切り下げを行って樹高を下げ、電線支障を数年間回避する方法IMGP2908.jpg 大潟村のイチョウの樹形をヒントに樹高を下げた同じ並びにある街路樹 他の木が毎年電線支障剪定を受ける中、この木は4年間剪定を受けなかった。

太い幹を外すやり方は木に負担が掛かるため、段階的に位置を下げていくこと、他の枝は切らずに枝張りを残すこと(木陰や樹木の養分生成の確保)、腐りの入りにくいCODIT理論を元にした剪定法で行うことなどが肝要になるが、これについては弘前城公園の桜の更新法"が参考になる。逆さ銀杏型はイチョウ本来の樹形にはならないが、枝先を切らないことを市の自然樹形の定義として位置付けたい。能代は大火対策として防火樹のイチョウを植え続けた経緯があり、大火を経験した街として、街なかにイチョウを残していく価値は大きい。逆さ銀杏は「水吹き銀杏」の別名もあり、京都大火の際に水を吹いて街を守ったという伝説を持つ。逆さ銀杏型の特徴樹形が並ぶ街路は全国にも例がなく、こうしたことを由来として取り組めば、能代がなぜ街にイチョウを植えたのかという元を後世に残すことできる。木の生理や景観のみならず、伝統文化や防災にも配慮し、街の活性化にも繋げていくことができれば素晴らしい。能代方式の都市型自然樹形として、全国に能代の応用力を知らしめる機会にならないか。

IMGP0615.jpg 弘前城公園の桜剪定会で紹介された幹の切り返し法IMGP5303_20130131171756.jpg
弘前城公園の桜で行われている幹の切り返し

終わりに

この8年間、先進地から学び、能代の街の緑を観察する中で、どうしたら少ない予算で現状を改善できるのかを考えてきました。一つのことが解決しないまま新たな問題が次々と起こりますが、問題や制約こそ、能代が本物の緑の街に生まれ変わるためのチャンスだと捉えています。緑の価値を守ることを理念に掲げる「能代市緑の基本計画」の策定を目前に控え、大型七夕の計画が進行する今、伝統文化と緑の文化をどう共生させていくか、能代の緑をどんな風に守り、次代に残していけばいいのか、今年はそんなことを真剣に話し合える年になるでしょう。様々な機会に緑の議論がなされることを願って、本稿を終えたいと思います。

能代市二ツ井町   福岡 徹

Comments 2

紅の葉  

脇本さんへ

脇本さん、明けましておめでとうございます^^。
昨冬、宇都宮の街なかを通った時にもブツ切りを見かけました。
予算が無いのか、施工者の技術の問題なのか、そうした剪定仕様なのか、あるいは仕様が無いのか、発注側に技術を審査できる人がいないのか、ブツ切りが起こる原因は様々です。
広々とした街路に木を植えれば何の問題もないのですが、そうしたことを考えず、大きくなる木を狭い街路に植えるとブツ切りせざるおえなくなるようです。
予算に余裕があった頃にどんどん緑化を進め、木が大きくなった頃に手入れの予算が取れなくなり、落ち葉の苦情で切る。
全国的に、そうした傾向にあるようです。
地域の人の意見を聞いて木を植えればよかったのですが、大した方針も無く行政がなんとなく?木を植えた所では、街路樹はかえって迷惑な存在になっています。
当地では、度重なる大火の対策として防火樹のイチョウを植えたのにもかかわらず、植えた側の行政もそこに住む市民もそのことを忘れてしまったことからブツ切りが起こりました。
なぜ街に木を植えるのか、なぜここにこの木を植えるのかの理由を伝えて来なかったからです。
数年前、商店街の活性化対策として街路樹植栽の計画があり、樹種選択会議に招かれたことがあります。
その際に言ったのが、「土地の気候風土に合う木(寒さ、潮風、自生樹、街の歴史等)。自然状態で放任しても電線に障らない木。市民に喜ばれる木。落ち葉の文句を言わないこと。なぜ木を植えたのかの理由を残すこと」で、これを条件に数種類の木を提案、その中から選んで木を植えたということがありました。

秋田市内にも、さほど広くない通りにメタセコイヤの街路樹を見つけ、驚いたことがあります。
やはりブツ切りでしたが、きっと、早く大きくなる木を植えて街路の姿を作りたいと思ったのでしょう。
栃木の雄大なメタセコイヤの並木を見てみたいものです。
栃木といえば栃の木、土地の木を植えた、その地ならではの街路樹も見てみたいですね。
ドラえもんの「のび太」は、のびのび育つ子なんだそうです。
木も子供も、伸び伸びと育てられる環境を作っていきたいですね。

2013/02/01 (Fri) 19:49 | EDIT | REPLY |   

脇本  

栃木もまだブツ切りが多いような気がします。環境緑化の街と唱える地区でもケヤキがブツ切りにされているのを目にしました。

しかしニュータウン周辺では自然樹形が維持されたメタセコイア並木なども存在します。

なぜこのような差異が生まれるのかわかりませんが、私も微力ですが街路樹の必要性を説いていきたいと思います。

2013/02/01 (Fri) 18:31 | EDIT | REPLY |   

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