杜の木漏れ日

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「都市型自然樹形を考える ―街路対応型樹形に関する一考察― 上」

本日付の北羽新報に拙文が紹介されました。
今回は、いつもと書き方を変え、論文調で書いています。
下記に原文をご紹介いたします。

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「都市型自然樹形を考える ―街路対応型樹形に関する一考察― 上」

街路樹の支障と自然樹形維持の課題

限られた空間の中で枝を伸ばす街路樹は、車や人の通行、電線等の支障になることが多く、これらの解決として剪定が行われる。イチョウなど、落葉高木の本格的な剪定は専門業者によって冬場に行われるが、軽度な支障剪定は専門外の作業者により随時行われることが多い。通行支障などの場合は、車道にはみ出た部分の下枝を短く切り揃えることが多く、支障とならない他の枝とは剪定法が異なってくるため、樹形の統一感が損なわれる時もある。樹木の剪定法は、枝先を切り揃えて整形的な人工樹形を作る「刈り込み」と、枝先を切らずに柔らかな自然樹形を活かす「透かし」に大別される。枝先を切らないことを最大の特徴とする透かしに枝先を切る刈り込みを併用すると、樹形全体のまとまりが弱くなる。市内の街路樹は数年前から自然樹形維持に変わり、透かし剪定が行われるようになったが、支障となる部分には枝先を止める剪定も見られ、こうしたところに道路環境で自然樹形を維持していくことの難しさがある。

支障剪定による特徴樹形は、市役所前のイチョウなどを見るとわかりやすい。このイチョウ並木の下枝は七夕運行の支障として毎年短く剪定されるが、伝統文化の支障を考慮した樹形は珍しく、能代独特の街路対応型樹形とも言える。反面、支障剪定は難易度の低い技術との認識が持たれやすく、専門経験に乏しい作業者が従事する場合など、木を傷めてしまうケースも少なくない。このことは電線支障剪定にも言えることで、樹体を傷付けない適切な剪定法への理解が望まれる。

能代の街路樹は国県市道とも強剪定(ブツ切り:刈り込みと同じやり方)が主流であったが、市が景観や木の生理に配慮した自然樹形管理へと方針転換したことを機に、県管理の街路樹でも見直しが行われるようになった。街路樹が置かれている環境は植物の生育に大変苛酷で、多くの制約を強いられる。そうした中で、街路樹を自然樹形に維持していくことはとても難しい。しかしながら、自然樹形維持ができなければ街路樹はその役割を果たすことができず、制約と共生させながらも、自然に近い形で街なかに存在させていかなければならない。その街路に最もふさわしい樹姿を考え、しかも、なるべく予算を掛けずに適正管理を継続できる方法を模索していくことが、今後の街路樹管理の課題としてある。

自然樹形維持の目的と街路対応型樹形の模索

街路に適した自然樹形維持を模索するにあたり、「自然樹形」の意味を考えてみたい。自然樹形を辞書引きすると「樹木固有の樹姿」と出てくるが、対義となる「人工樹形」からもわかるように、自然樹形とは人の手が入らないその木本来の姿のことを言う。能代の街路樹で一番多いイチョウを例に取ると、イチョウは本来斜め上方に枝を伸ばす性質があり、市内では市民プール前のイチョウ並木などがそれに近い(写真1)。剪定で形作られる街路樹の多くは水平角度の枝で仕立てられることが多いが、こうした庭木の感覚で行う樹形づくりは樹木本来の自然味を薄れさせ、徒長(枝)を誘発させることから毎年の剪定を余儀なくされる。樹木は、その木の特性を活かして手を入れると余計な枝を出さず樹形も乱さない。自然樹形維持を行う利点はこうしたところにもあり、剪定頻度を下げられることによって管理費を少なくできる。自然樹形維持を行うための最良の方法は無剪定管理であるが、制限のある街なかでこれを行うには、樹木を大きく育てられる環境整備が必要になってくる。景観重要樹木に指定される日本大通りのイチョウ並木(横浜市)や街路樹百選にも選ばれる表参道のケヤキ並木(東京都)などは、道路や歩道を広く取り、人と木が共生できる空間づくりを行っている点が素晴らしい。

イチョウ固有の特性が残された、自然樹形に近いイチョウ並木(能代市市民プール前)
自然樹形に近い市民プール前のイチョウ(能代市)

そうした中、狭い街路でも出来る限り自然樹形に近い形を保とうと、都市型自然樹形とでも言うべき、街路の条件に合わせた独自の形を決め、維持管理を行っている自治体もある。専門大学の監修の元、東京都江戸川区が作成した街路樹指針(「新しい街路樹デザイン」江戸川区HP参照)を見ると、「扁平樹形」や「片枝樹形」といったタイプの樹形が出てくるが(図1)、これは、制限のある側の枝を短く切る代わり、支障とならない側の枝は伸ばせるだけ伸ばすというもので、大田区田園調布(東京都)のイチョウ並木などは片枝樹形の典型例といえる(写真2)。

能代市二ツ井町   福岡 徹

街路対応型樹形のスタイル(片枝樹形:江戸川区街路樹指針「新しい街路樹デザイン」より) 
街路対応型樹形のスタイル(片枝樹形:江戸川区街路樹指針「新しい街路樹デザイン」より
歩道側を短くし車道側に枝を張らせる田園調布の[片枝樹形」 
歩道側を短くし車道側に枝を張らせる田園調布の[片枝樹形」

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