これからの庭と住まいを考える(地元紙寄稿)

今朝の地元紙に、拙文が掲載されました。

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(クリックで拡大できます)

原文はコチラです。

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「これからの庭と住まいを考える~周囲と調和する緑の住まい~」

先日、東京で開かれた庭のフォーラムに出席してきました(パネルディスカッション「これからの庭を楽しむ」:日本庭園協会)。
「これからの庭を楽しむ」というテーマの元、著名な作庭家や造園家、建築家、環境デザイナー、専門大学の教授、実業家などがパネラーとなり、ジャンルを超えて庭のあり方を考えようというものです。
それぞれの立場から議論が繰り広げられましたが、「自然豊かな山里に庭をつくる時は、周囲の自然景観に合わせることを考えたい。」といった意見には共感を覚えました。
具体的には、近くの山に生える木と同じ樹種の木を庭に植えれば違和感のない庭ができるということです。幸い、発言の機会をいただくことができましたので、少し発展させて、では街なかではどうしたらいいかということを述べさせていただきました。
          
日本には周囲の景観を庭に取り込む『借景』の技法があり、古くから『内(庭)と外(自然)を繋ぐ』工夫がなされてきました。
しかし街なかではそれが難しく、これからは逆に、『外から内に繋げる』といった観点も必要になります。街路樹や公園の緑に庭を合わせ、外の緑を通して住まいを見るのです。
街路樹がケヤキなら庭にもケヤキを植えて同じ木で景色を繋げていくとか、ケヤキと同じ里山の雑木を植えて雰囲気を繋ぐといったこと、あるいは、街路樹が自然樹形なら庭の木も自然樹形にして雰囲気を合わせる、など、街並みの緑と庭を一体化させる景観づくりを市民の側から行っていければ素晴らしい。
そうした意識が広まれば、街を自分の庭と思う心が育ち、街路樹なども大切にされるのではないでしょうか。
海外には、街並みの景観を高める樹木は個人のものでも保全するシステムがありますが、日本でもそうした取り組みが積極的に行われ、街の緑と住まいの庭の両方が良くなることが望まれます。
個人の住まいをつくる中でも公との調和を考え、街なかの家々がパブリックな要素を併せ持つようになれば、住まいづくりそのものが社会貢献になる。
外(公)から内(私)へ、内(家)から外(街)へ、互いの緑の恩恵を分け合いながら、『公私混合』の美しい景観を創り上げていく。
そうした提案を、庭や建築の側から発信していければと思います。

上京中、そんな景観を探してみると、ケヤキ並木に接する敷地に同じケヤキを植え、緑の景観を繋いでいる郵便局を見つけました。
外壁が鏡張りとなっていることから敷地内のケヤキと街路樹のケヤキが共に映り込み、どこまでもケヤキの森が続いているように見えます。
「ケヤキの森の郵便局」と名付けたくなるほどのステキな空間です。

敷地内に街路樹と同じケヤキを植えた施設(調布郵便局前) ケヤキの森の郵便局(調布市)

街路樹の先進地、江戸川区にも寄りましたが、何気ない住宅街の一角にある並木の風景に感動しました。
街路樹と家の距離が近く、外から見ると庭のように見えるのです。
区民の暮らしに街路樹が溶け込んでいるような、とても心休まる光景。

江戸川区 民家に溶け込む街路樹
民家に溶け込む街路樹(江戸川区)
    
写真は、フォーラムで出会った建築家の方からお借りしたもので、私が発言したイメージにかなり近いものです。
東京では大きな木陰をつくる街路樹がとても大切にされています。
夏には40度近くになる首都圏では、樹木の潤いや冷却作用を住まいづくりに取り入れる建築家が多く、この方もそんな考えをお持ちでした(さいたま市オーガニックスタジオさん)。
お話してみると、
「住宅を考える上で、歴史的、文化的な背景、自然環境や周囲の植生、自然条件を考慮に入れることはとても大事なこと。外観や植栽はそのまま街並みに影響する。道路から見ても家の中から見ても『つながっていること』が大切で、緑はそのための重要なファクター。街並みに合う家、街並みになる家を目指している。ブツ切りされる街路樹が多い中、街なかの緑を含んだ住まいに資産価値を見い出せるようになれば、街並みも家ももっと良くなる。」とのことでした。

フォーラムのパネラーには環境デザイナーの正木覚さんもおられましたが、数年前、八森で行われたまちづくりセミナーに講師として来られたことがあります。
この時も、八森の地形や風土に合わせた、環境としての庭のあり方を紹介されておりました。

山に暮らすなら山に合わせ、街に暮らすなら街に合わせる。
人も緑も無理なく暮らせるから心地いい。

東京まで出かけて行き着いたのは、そんな当たり前のことでした。
収穫の秋、実りある出会いをいただけたことに感謝です。           
   
能代市二ツ井町 福岡 徹

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