杜の木漏れ日

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落葉樹の冬季剪定1(サルスベリの自然樹形)

雪囲いも一段落し、落葉樹の剪定に回っています。
当地では、冬は木を切るものではないといった風潮がありますが、これは、冬期に切ると寒害を受ける常緑樹のことで、落葉樹は葉が落ちた冬場が剪定の最適期となります。

なぜ冬がいいのかというと、この時期の樹木は夏場の光合成で得た養分を最も多く蓄えているからです。
養分量が多いということは木の抵抗力も高いということで、加えてこの時期は木が活動を休んでいる時期でもあり、木への負担が最小限ですむということがあります。

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写真は、先日剪定したサルスベリ。
枝先を止めるやり方を枝抜き剪定に変えたものですが、3年経過して、徐々に柔らかな樹形に戻りつつあります。

サルブツ切り1 サルブツ切り3

サルスベリは、一般的に左写真のように小枝のほとんどを毎年同じ位置で切るやり方が一般的です。
右写真は、左写真のように切った木の枝が伸びた状態ですが、この切り方を繰り返すと、ゴツゴツとしたコブがたくさんでき、ブツ切りの街路樹のような姿になります。
この剪定法は、勢いの良い徒長枝を出させることで花を大きく咲かせるやり方ですが、芽の付いた枝のほとんどを切り落としてしまうため、枝が密生して出てきます。

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花を大きくする剪定は多くの剪定本などで勧めており、植木屋さんの間でも「サルスベリは短く切る」といった固定観念が昔からあります。
それがいつの間にか、「サルスベリの剪定とはそういうものだ」とか「短く切らなければ花が咲かないんだ」という先入観になり、本来のサルスベリの姿を忘れてしまっているようにも思えるのです。

写真はあまり手を入れていない自然形のサルスベリですが、サルスベリは放任していても花が咲きます。
花は多少小さくとも、これがサルスベリの自然な状態なら、あるがままの姿に美しさを見つけてあげたいもの。
人為的に大きくした花より、柔らかな枝先に咲く、楚々とした風情を楽しみたいものです。

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上の木の冬の姿です。
今年は枯枝と隣地越境の枝を外し、軽く枝抜きを行いました。
独特の曲がりを持つ柔らかな枝ぶりが、冬の青空に映えます。
こうした姿も、サルスベリの魅力です。

サルブツ切り2

このサルスベリの列植は公園に植えられたものですが、こうした所では、夏場の木陰を確保するためにも、短く切らずに枝を広げさせた方が良いように思っています。
ブツ切りすれば毎年の剪定を余儀なくされ、経費も掛かります。
狭い場所ではあまり大きくすることができない場合もありますが、空間に余裕のある所では、木の持つ自然性を尊重し、枝張りを出してあげたいと思っています。

サルブツ切り3 サル再生

左写真のような状態の木でも、枝抜きで方向の良い枝を残して伸ばし、絡み枝などを外していけば、数年で右のような姿になります。
ただし、枝を伸ばしていけば元の状態より1m以上は枝が長くなるので、あまり大きくしたくない時などは太くて長い枝を間引いて樹高を下げるか、良い下枝が出てきた時に更新していきます。


細い枝を切る程度なら、木の生育にはさほど影響を与えないと言われていることから、樹木医が書く剪定本などでもブツ切りを勧めているものもあります。
しかし、全ての枝を切り詰めれば葉の肥大や紅葉の遅れ、枝の徒長や不定芽の発生など、木に異変が起こるのはどんな木でも同じことで、それが木の生理です。
毎年切っているサルスベリには葉が大きなものが多く、密生して出てくる枝に大きな葉が隙間なく付けば、通風が悪くなるのは当然。
それが、病気や虫の付く原因にもなり、頻繁に薬剤散布をしなければならなくなる。
昔から当たり前のように行われてきたこのやり方には、そんな矛盾もあります。

花を取るか自然な姿を取るか、サルスベリの手入れは好みが分かれるところですが、この木の姿を見れば、その植木屋さんがどんな考えで庭をつくり、木に手を入れているのかが一目でわかります。
私は、木が自然に近い姿でいることが木にとっての健全で、そうした姿が一番管理費も掛からないと思っています。
そんなことを考えて、サルスベリに対しても、雑木などと同じく自然形管理をお勧めしています。


書店に並ぶ剪定本なども時々見ますが、園芸家の方や昔からの植木屋さんが書く本では花付きを優先するため、ほとんどが短く切るやり方を勧めています。

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そんな中、最近出た本で、サルスベリの自然形を勧めているものを見つけました。
こちらの本
この本では、コブを作ったサルスベリの姿は情けなく、自然に枝を伸ばすと花が付きすぎずに、優美な幹のラインと楚々と咲く花が楽しめるとしています。
書店に置かれていますので、一度ご覧ください。

Comments 2

福岡  

jirou 様へ

ご訪問ありがとうございます。
写真を拝見しました。
説明に「1863 - 1868」とありますが、幕末の頃の写真でしょうか。
樹木の判別は、葉の形や色、樹皮の色や質感、枝の付き方や全体の姿など、その樹木固有の特徴が見分けの目安になりますが、件の木は、極度に枝切りされた状態であることやモノクロであるために、そのどれもがわかりにくく、判別がとても難しいです。
この木が植栽されたものなのか自生したものなのかもわかりませんが、撮影地は「Hara Matchida」という所であるとのこと、もし自生樹であれば、周囲の野山などにも見られると思うので、土地の植物に詳しい方に訊かれてみれば、何か手掛かりが得られるかもしれません。
もしかすると、剪定の仕方が手掛かりになるのかもしれませんが、この時代の剪定方法や、この土地の造園技術などもわからないため、土地の造園史に詳しい方に訊かれた方がよいかと思います。
お力になれず、大変申し訳ありません。

2016/10/12 (Wed) 03:24 | EDIT | REPLY |   

jirou  

なんという樹

この写真の右の端にある木は何という樹でしょうか、ご教示ください・
http://www.getty.edu/art/collection/objects/241193/felice-beato-the-town-of-hara-matchida-british-1863-1868/

2016/10/11 (Tue) 21:14 | EDIT | REPLY |   

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