杜の木漏れ日

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落葉樹の冬季剪定3(イチョウの更新)

イチョウは街路樹や公園などによく使われる木ですが、寿命が長く大木になることから、神社やお寺などの広い敷地に植えられてきました。
時々、民家の庭先でも見かけますが、サルスベリのようにブツ切りされている木がほとんどです。
街路樹同様に、庭では居場所が無いように見えるイチョウですが、大きくなるイチョウを自然に近い姿で庭に存在させるにはどうしたらいいのか、いろんな工夫を試しています。

イチョウ剪定前1-1 イチョウ剪定後1-2

写真は、7,8年ほど前に強剪定されたイチョウで、その後手つかずだった木(左)を、3年前に枝抜き(右)したものです。
この時は切り詰めは行わずに枝張りや樹高を維持、林立する芯を1本にしました。
また、切り過ぎによる異変を回避するため、剪定量は5分の1程度に抑えています。

イチョウ剪定前2-1 イチョウ剪定後2-2

この木は、その後3年間放任したところ、芯梢が成長して、以前に芯止めされた箇所も目立たなくなり、かなり柔らかい樹形になってきました(左)。
樹高は、2mほど高くなったでしょうか。

そんな中で、先日、将来的にこの木をどの程度の大きさに維持するかを、施主さんと話し合う機会がありました。
広くない庭で木を大きくすることを心配されており、樹高を低くする方法として、この形のまま全体的に小さくするやり方と、樹高を下げて枝張りを残すやり方の二つを提案、後者の方法で段階的に樹高を下げていくことになりました。
イメージとしては、イチョウが老木化して丸い樹形になったような姿です。
樹高を下げるということは芯を切り詰めるということですが、木への影響や美観を考えて、少しずつ下げていくことにしました。

イチョウの更新1 (2) イチョウの更新2 (2) 

庭にはもう1本イチョウがありますが、この木は3年前の改造の際、移植できる状況になかったことから、思い切って根元から切り詰めました。
樹高6m、胸高直径で10㎝ほどありましたが、伐採では無く、再生のための萌芽更新です。

イチョウの更新3 (2)

翌年、根元からヒコバエが発生。

イチョウの更新4 イチョウの更新5

3年後、ヒコバエは6本の株となり、樹高も2mほどに成長しました(左)。
このまま放任すると、枝数も増えて、幹同士が混み合います。
適度な空間を持たせるように間引きを行い(右)、今後は株立ちのイチョウとしてこの庭で生きていきます。

根元から切ったのは、薪を採るための里山の雑木更新と同じ理屈ですが、株立ちに変えることで山の木の多いこの庭にイチョウを馴染ませ、直幹から他幹に変えることで成長力を分散させるという寸法です。
これからまたヒコバエが出てきますが、方向の良いものは残していき、木が適度な高さを超えた時、旺盛な幹を抜いて、低い幹と更新していきます。
里山の更新は15~20年周期で行われるそうですが、あまり木が太くなってからだと、このような更新も難しくなるようです。

DSCN4674.jpg DSCN4663.jpg

こちらは、先週に剪定したお宅のイチョウですが、真上に電線があることから、3年前に芯を切り詰め、樹高を下げていました。
この時もまた、剪定量を加減したので徒長が少なく、今回は軽く枝抜きする程度ですみました。
このイチョウは壮幹ですが、周囲の木との間隔も狭く、互いに枝が交差するような枝配りをしています。

幹下げ角度X 幹下げ角度 イチョウ芯切角度 

幹を下げる時は、水平角度で切ると枯れ下がりを起こし、残す枝も、幹の3分のⅠ程度の太さが必要と言われています(左)。
真ん中は、弘前の剪定講習会の時のスライドですが、この理屈の図解です。
右写真は上のイチョウのUPですが、上記の理論を踏まえて、この位置や角度で剪定しました。
幹が太いとカルスが巻くことが難しくなってきますが、現在でも切り口はそのままで、腐りは入ってきていません。


広くない民家の庭で、大木化するイチョウを維持するのは難しいことです。
そんな中でも、庭の雰囲気や木の生理を考えながら、できるだけ自然に近い姿にしてあげたい。
自然界では、木が自分で自分の姿を環境に適応させますが、人工の自然である庭では、人が庭に適した姿にしてあげなければなりません。
そして、その木の大きさや形が、家族の暮らしと共生できるものでなければならない。
そのための、いろんな工夫を試みています。

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紅の葉  

脇本さんへ

脇本さん、こんばんは。
脇本さんは、木の気持ちになって、木に手を入れてあげているのですね。これは、当たり前のことのようでいて、なかなかできないことです。
木の側に立ち、木のことを第一に考えてあげられる植木屋になりたいと思っていますが、それができない場面もあり、日々葛藤の毎日です。
木の側に立ち人の側に立ち、その間で思い悩むのが植木屋の仕事なのかなと思っていますが、これはきっと、植木屋でいる限り、永遠に続くのでしょう。
つくる時は木を切らなくてもいい庭を目指しつつ、すでにある庭ではできる限り木が木でいられるよう、これからも見守っていきたいと思っています。
植木屋は、植えた木から教えられ、木の手入れをする中で植木屋として育てられると言われた方がおりました。私も、そうありたいと思っています^^。




2013/12/29 (Sun) 23:37 | EDIT | REPLY |   

脇本  

毎日手入れをしながら日々、『この木はこの庭でどのように在りたいのか』と考えながら手入れをするようにしております。
紅葉さんの記事はとても勉強になります。
いつも植木屋としての考えを(勝手に)教えて頂いております(笑)
ありがとうございます。

来年も益々のご繁栄をお祈りいたします。

2013/12/29 (Sun) 21:23 | EDIT | REPLY |   

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