杜の木漏れ日

ARTICLE PAGE

書く者の悩み

植木屋が持つのは鋏やスコップだけれど、人並みにペンも持つ。
現場で仕事をしてナンボの職人だけれど、時には思いの丈を語る。
人前で話すのは苦手なので、必然、書くことの方が多くなる。

自分の仕事は、庭をつくり、庭を守ることだ。
庭の素材は、草木や石、土、水などの自然素材。
その自然素材はどこにあるのかというと、山や川。
だから自然に、山や川を見、環境のことにも頭がいく。
植木屋の習性で、街なかを歩けば、庭の木や公園、街路樹にも目が向く。
その街路樹が、いつの間にか木の姿ではなくなっていた。
それがとても悲しくて、書くことだけではおさまらず、口下手なのに、地元行政に改善を話し続けた。
話すだけでは伝わらないから、自ら木に登り、見本を示した。
そんなことを続けるうちに、とても時間は掛かったけれど、ふるさとの街の木は今、木の姿を取り戻しつつある。

書くことにも話すことにも責任が要る。
無責任なことは書けないから、いつも、自分ができることしか書かないし、書けない。
書くだけなら誰にでもできる。本当にできるのかと言われることもあるけれど、自分がやってきたことはできる。
でもそれを、他人が同じようにできるかといえば、そうではない。
植木屋なら誰にでもできるかといえば、そうではない。
動ける環境や、それに関わる積み重ねが無ければ、自ら動いて街を変えることはできない。
社会的な行動にはリスクが伴う。
植木屋としてふるさとの木を守りたくても、声を上げ、行動を起こせば、現状を良しとする役所や市民、業界を敵に回すことになるかもしれない。
それはそのまま、自分の生活に跳ね返ってくる。
動きたくても、しがらみの中で動けない同業が全国にはたくさんいる。
そんな声が届く度、つらくなる。

そんな自分が今、造園業界の意識向上をとの依頼で、全国版の専門誌に街路樹の連載を書いている。
動きたくても動けない同業に、動けば変わると、叱咤激励しなければならない。
バカになって動いたから自分のふるさとは変わったけれど、変わるまでは本当に苦しくて孤独で、茨の道だった。
成し遂げれば信用になるが、行政や業界に立ち向かえば、そんなしこりは後々まで残る。
全国に向けて書くことはとても光栄だけれど、誰かが立ち上がらなければ変わらないのだけれど、自分と同じような思いはしてほしくないと思う。
生活を捨ててまで立ち上がれとは言えないし、そんなことを押し付ける権利も無い。
原稿に向かう度、いつもそんな葛藤が湧き出して、手が止まる。

植木屋の意識が高まり、いくら腕が上がっても、それを活かせる環境が整っていなければ、街路樹は変わらない。
最近は、街路樹の剪定やブツ切りの再生法を紹介する本も出てきたけれど、いいやり方を紹介しても、行政に予算が無ければできないし、行政が方針を変えなければできない。
行政の施策は市民の要望でもあるから、そこから変えなければできない。
役所職員にも意識のある人はいるけれど、役所の中にも様々なしがらみがあるだろう。
これまでよしとしてやってきたことを変えるには、それなりの大義名分も要る。
植木屋がいくら頑張っても、行政が変わらなければ、街の木は良くならない。
街の木の姿には植木屋の意識や技術がそのまま表れるけれど、それは行政の方針でもあり、市民の要望をそのまま映している。
そこから変えなければ街路樹は変わらないし、変わったら、二度と元に戻らないような体制を作らなければならない。
それを変えるのは、われわれ植木屋ではない。

世論を変えられるのはメディアであり、行政を導くのは議員の仕事だ。
植木屋ができるのは、自らの仕事で手本を示し、日々の仕事を通して緑の大切さを伝えること。
そんな中で、実現能力のある方々に気付いてもらえる機会をつくる。
変わるための切っ掛けをつくることなら、植木屋にもできる。

連載も、残すところあと1回。
最後の原稿に向かう中、そんな気持ちで書こうと思っている。

Comments 2

越麻呂さま  

紅の葉

越麻呂さん、ありがとうございます。
人が人を変えることはできないが、自分が変わろうと思えば、人は変わることができる。
昔、和尚さんからそう言われたことがありました。
もし、動こうとする、変わりたいと思っている人がいたら、そうした方々の肩を押すことぐらいはできるかな、と思っています。
「世の中を変えるのは、若者とよそ者とバカ者」と言われますが、バカ者である自信はあります(笑)。
まだ、「これでいいのか~?」と悩んだりしますが、いつかバカボンのパパのように、「これでいいのだ~!」と言えるようになりたいものです^^。

2014/04/07 (Mon) 23:01 | EDIT | REPLY |   

越麻呂  

私も、書くことと自分の仕事や行動を通じて、いろいろ伝えられることができると思っています。いつも志を高くもって、頑張っていきたいです。

2014/04/07 (Mon) 22:31 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply