山形市の露地完成
昨年来、建築に合わせて進めていた山形市の露地が、このほど完成を見ました。
下見から3年越しの完成なので、とても感慨深いものがあります。

露地口(寄付き)から見る外露地の景色。
こうして見ると、建物が、庭の景色を考えてつくられていることを感じます。
庭と建物が一体となることを「庭屋一如」と言いますが、家が庭に寄り添い、庭が家に寄り添う。
建築の方がそれを意識されていることを、とても有難く思いました。
正面の立石は既存の石を組み直したものですが、大人2人で動かすのがやっとの、とても重い石です。
ご先代が苦労して据えられたものだとお聞きし、この石を、茶室へと誘う道標として据えました。

右手にある袖垣は、改修前の建物を解体した時に出た壁土を譲り受け、土壁にしたものです。
昔の家は、身近にある土地の素材で作られていますが、土壁は、調湿効果はもちろん、家を建て替える時など、再生してまた使えるのが魅力です。
こうすることで、その家の命を、何百年も繋いでいくことができます。
物を大切にする日本の心がここにありますが、繰り返し使うことで味わいも増し、時を超えて、家族の心を繋いであげることができると思っています。
この茶室をプロデュースされたのは古民家を手掛ける大工さんなので、土地の地味や家族の心の温かさを感じられるような、そんな庭づくりを目指しました。
この袖垣は勝手口の目隠しとしてつくったものですが、建物の形が見える前につくったので、部屋からどんなふうに見えるかわかりませんでした。
こうして見ると、室内の壁とも同系色なので、違和感なく、建物と庭を繋いでくれているように思います。

袖垣はリバーシブルとなっていて、裏面は建仁寺にしています。
勝手口のタタキ部分ですが、茶事の時は、外腰掛としても使用できます。

袖垣の前の水盤は、昔の碾き臼を転用したもの。
お施主さんお手持ちの逸品を、水盤に見立ててみました。
「見立て」は、古い物や使わなくなった物に新たな命を吹き込むというお茶の心ですが、全く違う役どころを与えるという、作り手の創造力が試される仕事でもあります。
水景にするもよし、花びらや葉っぱを浮かべて楽しむのもよし、軒先なので、水鉢を置けば、冬の蹲踞代わりにもなるでしょう。
いろんな使い方を楽しんでいただければと思います。
今回は、もともとここに植えられていた菖蒲を植え戻しましたが、直線的な古材の切石(山形県産の高畠石)を使っているのは、沢を渡る八つ橋のイメージです。
露地口(里)から沢を渡って山を登り、渓流沿いに降りてきた所に茶室がある。
そんなイメージです。

露地口周辺の雨落。
碾き臼の水盤が水源となり、枯れ流れ(雨落)に注いでいくというイメージです。
雨落ちに敷いた小石は土中から出てきた石を洗ったものですが、すべて活かすことができました。
柱の束石も川石なので、建物と庭が繋がってきたようです。

中門手前の伝い。
この辺りが、主客が挨拶を交わす迎付の場となります。
景石や飛石のほとんどは庭から出てきた物を活かしていますが、延段(石畳)は、山形県産の川石を使っています。
土地の物は土地の空気を吸っているので、馴染みがよいのです。
露地はその地の里山の風情を表すものと言われることから、出来る限り、地産の物を使いました。
ご家族が張られた苔も馴染み、庭の雰囲気を高めてくれています。
延段脇の小さな崖は、解体した壁土に、現場の土を合わせてつくった、版築工法による土留めです。
自然素材なので少しずつはがれていくと思いますが、庭の中では風化も景色。
カンスゲがかぶさってきて、なかなかいい味を出してきました。

中門付近。
竹垣などで仕切ると庭が硬くなるので、枝折戸のみにしています。
足元の枯れ流れが、外露地と内露地の結界になります。
ちょうど、ヤマツツジの花が咲いていました。
この庭のヤマツツジは、里山の自然味を高めてくれる大切な役目を担っています。
露地に花の咲く木は不適とも言われますが、雪国では、そこまで硬く考えると植える木が無くなります。
茶室も露地も、決まりごとがあるようでいて、席入りの所作に不都合が無ければ、ある程度のことは許されます。
一番大切なのは、亭主の茶道観。
決まり事と思われていることより、そこに合わせたものにすることが大事だと考えています。

山形県産の原石に水穴を穿った蹲踞も、この庭に来て1年。
徐々に、庭の色に同化してきています。
役石もすべて既存の物なので、組んだ当初から落ち着いた風情がありました。
苔むした石は、これまでの庭の歴史です。
その積み重ねが、これからも続いていくようにと、石を組んでいきました。

内露地の景。
蹲踞が水源となり、枯れ流れとなって庭を降りてきます。
手前から4番目の飛石は、解体された家の柱の土台だったものです。
縁の下で50年以上家を支えてきた石。
家の歴史を見てきた石を庭に活かせることを、とても嬉しく思います。
かなりの石の数ですが、水鉢以外は既存の石や土中から出てきたものを活かしています。
そこにある物で庭をつくり、足りなければ土地の物を使う。
これが、庭づくりの原点です。

茶室からの眺め。
張り出した土庇が庭の景色をつくってくれています。
手間を惜しまない、大工さんの真骨頂。
仕事あがりに、お施主さんがお茶を点ててくださいました。
庭を見ながらのお茶は、格別の趣です。
こうして、家の中から庭をゆっくり眺めるのが夢だったとお聞きし、夢のお手伝いができたことを嬉しく思いました。

枯れ流れの中にはこうしたものもあります。
これも、お施主さんお手持ちの碾き臼で、ここでは沢飛びとして使いました。
土中から、欠けた瓦も出てきたので、それを合わせています。
サクランボをイメージした、ちょっとした遊びです。
解体した壁土を活かしたり、遊び心のある見立てを入れたり、露地の雰囲気を壊さない程度に、そこにある物を活かす工夫をしてみました。
四季折々の木々の変化はもとより、そんなことでも、茶席の会話が弾んでくれればと思っています。
露地ではありますが、茶事を行わない時は普段使いの庭です。
木も石も草も、もともとこの庭にあったものばかり。
ご家族さまには、これまで通りの庭を楽しんでいただくことが、一番だと思っています。
これにて作庭も千秋楽。
幾久しく、庭を楽しんでいただければ幸いです。
下見から3年越しの完成なので、とても感慨深いものがあります。

露地口(寄付き)から見る外露地の景色。
こうして見ると、建物が、庭の景色を考えてつくられていることを感じます。
庭と建物が一体となることを「庭屋一如」と言いますが、家が庭に寄り添い、庭が家に寄り添う。
建築の方がそれを意識されていることを、とても有難く思いました。
正面の立石は既存の石を組み直したものですが、大人2人で動かすのがやっとの、とても重い石です。
ご先代が苦労して据えられたものだとお聞きし、この石を、茶室へと誘う道標として据えました。

右手にある袖垣は、改修前の建物を解体した時に出た壁土を譲り受け、土壁にしたものです。
昔の家は、身近にある土地の素材で作られていますが、土壁は、調湿効果はもちろん、家を建て替える時など、再生してまた使えるのが魅力です。
こうすることで、その家の命を、何百年も繋いでいくことができます。
物を大切にする日本の心がここにありますが、繰り返し使うことで味わいも増し、時を超えて、家族の心を繋いであげることができると思っています。
この茶室をプロデュースされたのは古民家を手掛ける大工さんなので、土地の地味や家族の心の温かさを感じられるような、そんな庭づくりを目指しました。
この袖垣は勝手口の目隠しとしてつくったものですが、建物の形が見える前につくったので、部屋からどんなふうに見えるかわかりませんでした。
こうして見ると、室内の壁とも同系色なので、違和感なく、建物と庭を繋いでくれているように思います。

袖垣はリバーシブルとなっていて、裏面は建仁寺にしています。
勝手口のタタキ部分ですが、茶事の時は、外腰掛としても使用できます。

袖垣の前の水盤は、昔の碾き臼を転用したもの。
お施主さんお手持ちの逸品を、水盤に見立ててみました。
「見立て」は、古い物や使わなくなった物に新たな命を吹き込むというお茶の心ですが、全く違う役どころを与えるという、作り手の創造力が試される仕事でもあります。
水景にするもよし、花びらや葉っぱを浮かべて楽しむのもよし、軒先なので、水鉢を置けば、冬の蹲踞代わりにもなるでしょう。
いろんな使い方を楽しんでいただければと思います。
今回は、もともとここに植えられていた菖蒲を植え戻しましたが、直線的な古材の切石(山形県産の高畠石)を使っているのは、沢を渡る八つ橋のイメージです。
露地口(里)から沢を渡って山を登り、渓流沿いに降りてきた所に茶室がある。
そんなイメージです。

露地口周辺の雨落。
碾き臼の水盤が水源となり、枯れ流れ(雨落)に注いでいくというイメージです。
雨落ちに敷いた小石は土中から出てきた石を洗ったものですが、すべて活かすことができました。
柱の束石も川石なので、建物と庭が繋がってきたようです。

中門手前の伝い。
この辺りが、主客が挨拶を交わす迎付の場となります。
景石や飛石のほとんどは庭から出てきた物を活かしていますが、延段(石畳)は、山形県産の川石を使っています。
土地の物は土地の空気を吸っているので、馴染みがよいのです。
露地はその地の里山の風情を表すものと言われることから、出来る限り、地産の物を使いました。
ご家族が張られた苔も馴染み、庭の雰囲気を高めてくれています。
延段脇の小さな崖は、解体した壁土に、現場の土を合わせてつくった、版築工法による土留めです。
自然素材なので少しずつはがれていくと思いますが、庭の中では風化も景色。
カンスゲがかぶさってきて、なかなかいい味を出してきました。

中門付近。
竹垣などで仕切ると庭が硬くなるので、枝折戸のみにしています。
足元の枯れ流れが、外露地と内露地の結界になります。
ちょうど、ヤマツツジの花が咲いていました。
この庭のヤマツツジは、里山の自然味を高めてくれる大切な役目を担っています。
露地に花の咲く木は不適とも言われますが、雪国では、そこまで硬く考えると植える木が無くなります。
茶室も露地も、決まりごとがあるようでいて、席入りの所作に不都合が無ければ、ある程度のことは許されます。
一番大切なのは、亭主の茶道観。
決まり事と思われていることより、そこに合わせたものにすることが大事だと考えています。

山形県産の原石に水穴を穿った蹲踞も、この庭に来て1年。
徐々に、庭の色に同化してきています。
役石もすべて既存の物なので、組んだ当初から落ち着いた風情がありました。
苔むした石は、これまでの庭の歴史です。
その積み重ねが、これからも続いていくようにと、石を組んでいきました。

内露地の景。
蹲踞が水源となり、枯れ流れとなって庭を降りてきます。
手前から4番目の飛石は、解体された家の柱の土台だったものです。
縁の下で50年以上家を支えてきた石。
家の歴史を見てきた石を庭に活かせることを、とても嬉しく思います。
かなりの石の数ですが、水鉢以外は既存の石や土中から出てきたものを活かしています。
そこにある物で庭をつくり、足りなければ土地の物を使う。
これが、庭づくりの原点です。

茶室からの眺め。
張り出した土庇が庭の景色をつくってくれています。
手間を惜しまない、大工さんの真骨頂。
仕事あがりに、お施主さんがお茶を点ててくださいました。
庭を見ながらのお茶は、格別の趣です。
こうして、家の中から庭をゆっくり眺めるのが夢だったとお聞きし、夢のお手伝いができたことを嬉しく思いました。

枯れ流れの中にはこうしたものもあります。
これも、お施主さんお手持ちの碾き臼で、ここでは沢飛びとして使いました。
土中から、欠けた瓦も出てきたので、それを合わせています。
サクランボをイメージした、ちょっとした遊びです。
解体した壁土を活かしたり、遊び心のある見立てを入れたり、露地の雰囲気を壊さない程度に、そこにある物を活かす工夫をしてみました。
四季折々の木々の変化はもとより、そんなことでも、茶席の会話が弾んでくれればと思っています。
露地ではありますが、茶事を行わない時は普段使いの庭です。
木も石も草も、もともとこの庭にあったものばかり。
ご家族さまには、これまで通りの庭を楽しんでいただくことが、一番だと思っています。
これにて作庭も千秋楽。
幾久しく、庭を楽しんでいただければ幸いです。
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