杜の木漏れ日

ARTICLE PAGE

「ふんわり」とした庭 ~介護施設につくった三色花壇の庭~

DSCN8898.jpg

今月初めに着工した、介護施設の庭が完成しました。
写真は、打ち合わせで訪れた時の玄関前の様子です。
壁に設けられた円窓に公園のイチョウが見えますが、土間に差し込んだまあるい光が、まるで満月のよう。
イチョウの葉影が、うさぎさんのようにも見えますね。
光と緑を取り込むこの演出は、これだけでもう庭です。
玄関先にこの暖かなお月さまを見つけて、心がほっこりするのを感じました。

DSCN9092.jpg

上の円窓は壁の裏側から見たものですが、表側にあるのが、この施設のマーク。
🌸🌸」という3つの文字が、それぞれに「赤、青、橙」の三色になり、それを「🌸(花)」が繋いでいます。
そしてその「ふ・あ・り」を乗せる波(線)と、それらを包み込む楕円。
これが、今回の庭づくりの、大きなキーワードとなっていきます。

DSCN8903.jpg

施工前です。
背景に公園があるという、素晴らしいロケーション。
庭には草花が植わっていますが、この草花たちが、「🌸🌸を彩るヒロインになります。

DSCN9154.jpg DSCN9156_20141117105814597.jpg

ということで、こんなイメージ図と立面図ができあがりました。
平面的には、「」の三色の石で花壇をつくり、それを道(波線)で繋ぎます。
立面的には、幅が狭くて奥行きのある庭を、花壇に段差を付けながら奥まで見通せるようにします。
平面立面で空間に広がりを持たせ、実際の面積より庭を広く見せようという寸法です。
そして、忘れてはならないのが雪の対策。
冬期の除雪を考えて、雪の置き場と、雪の影響を受けないような花壇配置を工夫します。

1

完成した庭です。
図面は現場で進化するもの。
机上のイメージが、作り手の創作心と素材の力によって、こんなカタチになりました。

2

小道を挟んだ手前の石積みが「橙」の花壇、中ほど右手が「赤」の花壇、その向こうが「青」の花壇です。
みな、楕円の形を基調としていますが、この三色の花壇は、すべて、県内産の山石を積んだもの。
居ながらにして、ふるさと秋田の山並みを感じられるようにしてみました。

DSCN9119.jpg

庭の始点はコンクリート土間ですが、庭地盤との段差が30㎝近くあるため、踏み石を置いて、砂利式のスロープで降りられるようにしました。
最初が橙の石積み花壇になっているのは、円窓のあるオレンジの壁との繋がりです。

この橙の石は、柱状に剥離する特徴があり、その形状を活かして、ランダムに、縦や斜めに組んでいます。
直接、石山(採石場)に足を運び、周辺の様子も見ていると、その石が山の中でどんなふうになっているのかがかわかりますが、そうした石の性質に合わせた積み方です。
小道も石積みと同質の小砂利なので、穏やかに素材が繋がったようです。
来春に花が植われば、玄関先がさらに明るくなることでしょう。

室内から

赤の花壇。
男鹿寒風石の溶岩を積んだこのコーナーには、ジューンベリーやナツハゼなどの実のなる木と、マンサクやヤマモミジなどの、紅葉がきれいな木を寄せ植えしています。
手前にはお手持ちのレンゲツツジも加わり、オレンジの多いこの施設に、季節の色を添えてくれるでしょう。
野趣的な石積みに合わせて、樹木や下草もまた、山にあるように。
里山の雰囲気になれば、野鳥たちも遊びに来てくれるかもしれません。

足元の苔は施設の駐車場に生えていたものですが、根の乾燥や土の流失防止、景色の引き締めなど、いろんな役を担ってくれています。

DSCN9070.jpg

庭の中央部。
砂利道から、レンガ敷きのテラスに変わりますが、レンガの色合いは、奥に見える建物外壁のベージュと、玄関のオレンジに合わせています。
できたばかりの庭ですが、それほど真新しさを感じません。
そこにあるものを使っているのと、そこに合わせた色合いを選んでいることが、庭に落ち着きと調和をもたらしてくれているように思います。

DSCN9069_20141118115939182.jpg

レンガテラスの中にある、プランター式のモニュメント。
打ち合わせの際に、「『ふあり』は『ふんわりとした』という意味で、利用者さんにゆったりと過ごしていただきたい。」とのコンセプトをうかがっていましたが、その『ふんわり』を形にしてみました。
色土を地層のように突き固めたものですが、ふわっとした感じを楽しんでいただければと思います。

DSCN9100_20141118131544cb1.jpg

ちなみに室内からは、こんなふうに見えています。
イメージ図の段階では、庭の始点付近に道標式に置いていましたが、施主さまから除雪の状況をうかがい、この場所に落ち着きました。
レンガ敷きも、このモニュメントに合わせて、斜めに振っています。

DSCN9074.jpg

青の花壇。
こちらは、層状剥離する石を横積みにし、棚田のように二段にしています。
ここは施設のホールに面しているため、利用者さんに最も近い場所。
色とりどりの草花で飾り、楽しんでいただきます。

庭に面したコンクリート通路は、この場所が最も高く、庭地盤から60㎝以上あります。
そのまま草花を植えると視界に入らないため、花壇を高めることで、ホールからも見えるようにしています。
また、この位置に水道があり、ここから裏庭に繋がるため、枕木の階段で近道を作りました。

DSCN9128.jpg

通路に面した部屋からの眺め。
この日は小雪がちらつく日でしたが、壁とレンガのオレンジが、寒い季節に暖かさをもたらしてくれています。

DSCN9122_20141117171330a02.jpg

こちらは、円窓の裏側に向かう道。
グレー系の寒風石を使ってますが、裏道なので目立たないように、コンクリート土間と合わせた色の石にしています。

DSCN9064_2014111717133480c.jpg

わずかなスペースですが、ここでも花植えを楽しめるように、既存の枕木を敷いて道にしています。

庭の空いている部分には、来春、花が植わる予定です。
今から春が待ち遠しいですね。


最後になりますが、完成のご挨拶で施設に上がらせていただいた時、心惹かれる絵との出会いがありました。

DSCN9106.jpg DSCN9125.jpg

影絵作家の藤城清治さん作、男鹿市の赤神神社五社堂を描いた絵です。
絵の中の曲がりくねる山道の様子を見た時、今できたばかりの庭がここにある!、と驚きました。
この庭には寒風山の石も使っているため、峠道を表した庭の小道とオーバーラップして見えたのかもしれません。
この絵を見て、なにか、できるべくしてできた庭というか、はじめからこうなることになっていたような、とても不思議な気分になりました。

け^き

こちらは、能代市の、「長崎デイハウスふあり」さんの庭です。
写真は、作庭中に誕生日を迎えたスタッフへの、ふありさんからのプレゼント。
とても楽しく、勉強になる庭づくりでした。
いろいろとお気遣いいただきましたことに、心から感謝いたします。



Comments 0

Leave a reply