杜の木漏れ日

ARTICLE PAGE

樹木の枝張りと根張りのバランス~木が必要とする土の量や面積を考える~

根2

能代市けやき公園内にある、樹齢300年の大ケヤキ。

根1

樹高が20mを超える大木が何百年もの風雪に耐えて立つためには、大きな枝張りと同じぐらいの根が必要です。
地上部を支えられるだけの力が地下部に無いと、木は倒れてしまう。
自然界では、木が自分の力で地上と地下のバランスを取って生きていますが、人間社会で暮らす木は、必要以上に枝を切られたり、道路や建物の工事で根が大幅に切られることもあります。
樹木は、根と幹、枝、葉とすべてが繋がっているので、人間による外圧で地上と地下の生育バランスが崩れると、木が衰弱したり枯死に至ったりします。
最近もそうした例を目にしたことから、今回は、木が健康に生きていくためにはどれだけの根張りが必要で、どれだけの土が要るのかを、様々な事例から考えてみることにしました。

根3

このケヤキは、けやき公園の中で最も大きな木ですが、園内から道路側に大きく前傾しています。
これだけ大きな枝張りを持つ木が、傾いた状態でも立っていられるのはなぜか。
木自身が、下枝を反対方向に張らせて重心を取っていることもありますが、傾きと反対側に長く大きな根を張らせ、前に倒れようとする力を根が引き戻しています。

根追加

こちらは、冬季、深い雪に包まれる鳥海山麓の渓流に生えるモミジですが、こうした傾斜に生える山の木もやはり前傾していて、根を谷側には伸ばさず、山側のほうに張らせてバランスを取っています。
このような傾斜面では、下方(谷側)からの力は掛からず、雪などの外圧が上から掛かるので、それに耐えるためにも、木は山側のほうに根を多く張らせるのです。
この、大きく前傾するけやき公園の大ケヤキの根にも、そうした力が働いていることでしょう。

DSCN0342_2015012409213341a.jpg

この木の裏側ですが、背中が大きく割れています。
自然界でも、落雷や雪で木が裂けたりすることがありますが、昔、なにかの衝撃がこの木に加わったのかもしれません。
このような状態で重い上体を支えていることに驚きますが、この木は、割れた幹を盛り上がらせることで自身の体幹強度を高めています。
木にこのような回復力があるということは、木の活動が正常に行われているということです。

根4

公園外周のケヤキは、幹の半分が大火で焼けて傷んでいます。

根5

傷んだ幹の側には強い浜風が吹きつけるため、樹高20mもあるこの木たちは、上体がかなり反っています。
風の来る方向は道路になっているので、この木たちは踏ん張ろうとする根を伸ばすことができません。
では、なぜこの木は立っていられるのでしょう。

根6

風の来る方向に大きく下枝を張らせて風力を分散させていることもありますが、根を左右に張らせることで木同士が地中でがっしりとスクラムを組み、風に負けないように踏ん張っているのでしょう。

根19

こちらは、以前にモミジの木を移植した時のものですが、活着率を高めるために根を切らないように掘り取ったところ、土留め際に沿って根が長く伸びていました。
同じように、土留めの前に植えられているけやき公園外周の木も、このような状態になっていると思われます。

根20

このモミジの木の周りには他の木もあり、隣り合うモミジの木とハナミズキの根が組み合っていました。
こうした様子を見ると、木々は地中で互いに根を組み合わせることで、お互いが倒れないように協力し合っていることがわかります。

根20

一般的に、木の根張りは、木の枝張りと同じぐらいあると言われていますが、障害物の無い所のモミジを掘ってみたところ、枝張りよりも少し広い程度の根張りでした。
ということは、大きくなる木を植える時は、大きくなった時の枝張りと根張りを想定して、それと同じぐらいの土の面積を用意してあげればいいということです。

根23

こちらは、井川町にある天然記念物のケヤキですが、敷地と同じぐらいに枝が張っています。
樹齢300年以上と思われますが、樹勢も良好、伸び伸びと枝を張れるだけの土壌条件が整っているということだと思います。

根21

こちらは、こうしたことを踏まえて、土の面積を広く取って植えたケヤキです。
植栽後20年が経過し、枝張りが土留めと同じぐらいまで伸びてきましたが、根も同じぐらいまで伸びてきていることでしょう。
茶色い楕円は、今この大きさの木を植える場合の根鉢の大きさですが、公共工事などでは根回りに入れる土や土の面積が少なく、できれば、将来的な枝張りを見越して、土の面積を決めたいところです。

根24

写真は、昨年、能代市内の街路樹が伐採された時の地元紙の特集記事ですが、伐採の原因の一つとして、成長した木の根が路面を持ち上げるなどの、「根上がり」による被害も上げられています。
この記事では、その回避策として、単独の植え枡を繋ぎ、連続する植栽帯に変えて土の量を増やすことの提案もなされています。
これは、この通りは歩道の幅が広いため、はじめから樹木の成長を見越した植栽計画を立ててていれば根上がりは防げるという主旨の私の提案ですが、こうした道路改修の時などに植栽基盤の改善も図られれば、既存の街路樹を街に存在させることはできると思っています。
管理者である県の回答では、予算的にも工法的にも可能とのこと。
植え枡式の多い街路樹では、今後も根上がり被害は必ず起こります。
こうした道路改修の時などに改善対策を行えれば、一石二鳥のことが行えるので、今後はぜひ、採り入れていただきたいことです。

全国には、こうした広い植樹帯を設けて、街路樹を大きく維持している所がありますが、次に、その一例を紹介します。

根7

根8

根10

根9 (2)

上から、自然樹形を誇る横浜市日本大通りのイチョウ並木、整形樹形が美しい神宮外苑のイチョウ並木、「日本の道百選」にも選ばれる杜の都仙台の定禅寺通りのケヤキ並木、神社の木を街路樹として保存した山形市内の街路樹です。
山形市の街路樹は樹齢200年以上、他の3つは樹齢100年前後ですが、これらに共通しているのは、はじめから木が大きくなることを想定して、それに必要な土の量と面積を確保して計画されているということです。
前後の幅は狭くても、樹木は横方向に根を伸ばせるため、根上がりなども防ぐことができます。
また、全面に下草が植えられていることから、根の乾燥防止にも役立っていることでしょう。

根11

こちらも日本大通りのイチョウ並木ですが、木と木の間隔が近ければ、木同士が根を組み合うこともできるので、樹高が高くても、風の抵抗に耐えることができます。
自然樹形の木は木の中に適度な空間があり、その中を風が通ることができるので、この日本通りの方式はとても参考になります。

根12

こちらは数年前に作庭した庭ですが、道路と住宅の狭いスペースを土壌改良し、植樹帯のように樹木を植えています。
道路にはあまり枝を出せませんが、上方と横方向には枝を張らせることができ、根も張らせることができる。
庭というよりは、民地内の街路樹といった扱いです。

根15

こちらは市内のプラタナスですが、かなり傾倒しています。
歩道下が根を張れるような状況にあるかどうかわかりませんが、この樹高と枝張りを支えられるほどの根の張りが無く、道路側に大きく傾いたのではないかと思われます。

根16

こちらは、施設内にある樹齢300年ほどのケヤキ。
夏場に半分程度の葉が枯れるという異常事態が起こりました。
この年に駐車場整備が行われたとのことですが、木に対しての土の面積があまりにも狭く、舗装工事によって根が大幅に傷ついたことが予想されます。
樹木にとってどれほどの土が必要なのか、大木を支える根はどれだけ残すべきなのか、計画の際には、慎重に考えなければなりません。

根18

こちらは、東京都内で見た、道路の真ん中に残されたご神木です。
木の下の土の高さと道路の高さがかなり違いますが、道路計画の際、樹木に必要な根周りの土を広く残し、周辺の道路を整備したようです。
ご神木を残そうとする地域の人々の愛情や、専門知識でそれに応えた道路管理者の熱意が感じられる木の存在でした。

根17

こちらは、能代市内にもある、中央分離帯のケヤキ並木。
このような状態が、街路樹を健康に街に存在させるための、理想的な姿です。


以上のことから、樹木が生きていくためには枝張りと同等の根張りが必要で、四方に根張りを取れない状況にある場合は、二方三方に相当の根を伸ばせるスペースの確保が大切だということがわかります。

根13

道路の都合上、歩行路を十分に取れない場合もあり、植樹帯の施工が難しい時もありますが、そうした時は、透水性のある素材で舗装を行うなど、根に雨が入るような工夫をし、酸素が行き渡るようにする時もあります。
写真は、能代市のけやき公園隣接の街路樹ですが、この道路整備の際にも、そうした配慮がなされました。
この写真は2008年撮影のものですが、街路樹の上部の枝に枯れ込みが入っているのがわかります。
公園も街路樹も、もともとは一つの敷地に植えられていたケヤキですが、それぞれが区分けされてから20年以上経ち、土壌環境の違いが、樹勢にこれほどの差を起こさせたのかもしれません。

土の量や面積の確保と共に大切なのは、樹木の根が張りやすいような土壌改良や排水処理。
これは、庭でも公園でも街路樹でも同じで、緑地設計を行う際の基本です。

緑のまちづくりを行う多くの自治体が「人と緑の共生」を掲げていますが、人と緑が共に生きていくためには、どうすれば木が生きやすいのかを考えてあげることが大切。
木も、人と同じ生き物で、木にも、生きるために必要な条件がある。
木を植える時、木の周りに手を入れる時に、考えてあげたいことです。

※ けやき公園の経緯  旧能代市広報 「街路樹として残るケヤキ」

Comments 0

Leave a reply