杜の木漏れ日

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木への思いやりを表す樹形~ 『片枝樹形』のケヤキ並木(秋田県五城目町)~

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先日、五城目町のケヤキ並木を通りました。
こちらのケヤキ並木はこれまでにも何度か紹介していますが、夏場は緑のトンネルがとても心地よく、県内で最も素晴らしいケヤキ並木だと思って見ています。

五城目ケヤキ街路樹

昨夏、同じ個所を反対側から撮ったものです。

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この通りのケヤキは、歩道側の枝を短く、車道の上空に大きく枝を伸ばすという、とても特徴のある姿をしていますが、
このような樹形を「片枝樹形」と言います。

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同じ木の夏の姿です。

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こちらは、東京都田園調布の銀杏並木ですが、こちらもトンネルを形成しており、やはり片枝樹形となっています。
街路樹は一度に多くの枝を切り、全体的に小さくされる傾向がありますが、この片枝樹形というスタイルは、越境支障の出る側の枝を短く剪定する代わりに、支障の出ない方の枝は伸ばせるだけ伸ばし、樹木の生育(養分生成)に必要な枝数を確保してあげるという、樹木の健康に配慮するやり方です。

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同じ通りの夏の姿。

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同。枝数を多く残していると、これほどの木陰ができます。

建築限界 (1)

こちらは東京都江戸川区のケヤキ並木ですが、みごとなトンネルを形成しています。
街路樹は道路に面して植えられるため、車や人の通行支障とならないように、「建築限界」という規制があります。
江戸川区や五城目のケヤキ、田園調布のイチョウも、この建築限界をクリアさせながら、伸ばせる空間に枝を伸ばさせ、緑豊かな景観と夏場の木陰を創り出しています。

奥入瀬ブナ林

こちらは奥入瀬渓谷から八甲田山に向かう途中のブナ林ですが、江戸川区のケヤキ並木とよく似ています。
トンネル状の片枝樹形はこうした自然林の姿を思わせますが、制限のある街なかでいかに樹木の自然らしさを活かし、緑豊かで自然な雰囲気をつくれるか、街路樹の最も大きな役目である木陰を確保しつつ、樹木の生育に負担を掛けないやり方ができるか、この片枝樹形はそうした知恵と工夫によって生み出されています。

なにげない街なかでこうした樹形を見かけると、人が樹木と共生しようという意識や優しさを感じて、とても嬉しくなります。
枝が多いということは落ち葉が多いということですが、こうした樹形が存在しているということは、この街の人々が街路樹に理解を示し、この環境を受け入れているということです。

広報1
広報2

こちらは、五城目町役場さんから提供いただいた写真と広報ですが、夏場にケヤキ並木の木陰で憩う人々の姿は、街路樹の理想です。
驚いたのは、この並木は40年前に、町民の皆さんによって植えられたものとのこと。
街路樹は行政主導で植えられることが多いため、「役所が勝手に植えた木で迷惑している」という思いが持たれやすく、苦情の対象になりがちです。
でも、自分の手で木を植えれば街路樹に思いがこもり、街路樹を自分の庭として見る感覚が育つ。
公のものを自分のものと思える感覚は、ふるさとを大切に思う愛郷心を育みます。

この街の木の姿には、人と街路樹の共生を考える行政と、街路樹のある暮らしを楽しむ人々の思いが反映されています。
五城目町の街路樹の素晴らしさは、行政と人々の思いやりの素晴らしさだと感じました。


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