秋田県立美術館のケヤキについて
2015年09月17日

この間、秋田県立美術館前のケヤキについての感想や提案を書きました。
美術館は平成24年の竣工。
若木のケヤキが本来の自然樹形ではなく人工的な姿になっていることに違和感を持ち、管轄である秋田県に設計コンセプトや管理方針を問い合わせたところ、2階ラウンジ前にある水庭と、ラウンジから見える千秋公園のお堀を一体化させるために、ケヤキは水庭から見えないように低く維持管理する方針であるとのお返事をいただいていました。

これに対して、成長すれば20m以上にもなるケヤキを高さ5m程度で維持し続けるのは無理があるのではないかと、ケヤキを選んだ理由についてお訊ねしたところ、樹種をケヤキにしたのは、「千秋公園のケヤキと『対』にするため」であるとのことで、周囲の景観との調和を考えた選択であることには、大きな共感を覚えました。。
ケヤキは、秋田市の「市の木」にもなっており、ここに植栽されることの『必然性』があると、私もそう思います。
上記の図は、そのコンセプトを図案化してみたものです。
美術館のラウンジからは旧美術館の三角屋根が見え、この三角形をモチーフとしたデザインが新美術館の随所に採り入れられていますが、これは、新旧の美術館の呼応を狙ったもので、これもまた、『対』ということでしょう。
ここで、『対』という言葉の意味について調べてみると、「対」には、
➀二つでそろって一組になるもの。ペア。
②一組をなすもので性質が反対のもの。
③向かい合うこと
④同等であること
などの意味がありますが、②だと、「樹高の高・低」と「樹形の美・醜」が『対』になってしまい、美の展示を行う美術館にはふさわしくない。
④でいう「同等」の高さと美しさを持ち、それが「向かい合う(③)」ことで、「ペア(➀)」になる。
私は、そのように捉えた方が自然ではないかと思っています。

樹木の成長や景観、管理費のことを考えると、ケヤキではない方がよいのですが、上記図は、美術館にケヤキがあることを正当として、前回の投稿で提案したものです。
「水庭とお堀を同一の水面ではなく、二段の滝として見る」というものですが、『対』というお返事を聞き、それをちょっと修正してみることにします。

まずは、正面から見た現況です。

修正案のイメージ。

ラウンジからの現況。

修正案のイメージ。
人工的な並列植栽を、中央付近の木々を左右に移植して、森のような自然風植栽の寄せ植えにするという案です。
こうするこで、千秋公園のケヤキと、「森」ということで『対』になり、木々を寄せ植えすることで既存の木をその場所で活かせる。
かつ、真ん中部分が空くことで、木を大きくしても視界が確保できます。
ケヤキを『対』にするという案は、周辺の再開発に関わった市民の皆さんから出たもので、それを、建築設計者である安藤忠雄氏が採用したものであるとのこと。
であれば、改修することもそれほど難しくないのではないかと思います。
改修には予算が掛かりますが、今後、剪定に毎年予算を掛け、木にも無理を掛けていくことを思うと、木が若い今のうちに行っておいた方が後々のためではないかと思っています。
担当の方の話によると、コンセプトづくりや設計には造園家が入っていないとのことなので、そうした方々からアドバイスをいただきながら、今後のことを考えられたらどうかとお話ししました。
樹木は自然な姿でいた方が健康で、見る人にも心地良さを与えます。
ケヤキがケヤキらしく、この場所で伸び伸びと過ごせることを、心から願っています。
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