山に還る庭

今春に作庭させていただいた井川町のお宅。
里山にある家に、里山にある樹木を植える。
その土地に生える身近な樹種を、山にあるように植える。
庭というよりは、山。
山に還る庭。

そんなイメージで、小さな森をいくつもつくり、6つの森の集合体が家を取り囲むような、そんな雰囲気の庭でした。


そしてこの庭にも秋が訪れ、やがて葉が落ちる頃。




庭の前後に、新たな森が二つ増えました。

もともとが、石の無い土地。
石の無い所に石を持ち込むのも不自然だから、庭石も石積みも何もない。
ただ、そこにある土を掘って山を盛り、木を植えるだけ。
山と山ができれば、その間は沢になる。
その沢が、庭に集まる水を受けて流す。
ただ、それだけの庭。
この庭には、何の飾りもいらない。
芽が出て花が咲き、実がなって葉が落ちる。
そして、そんな森に鳥たちがやってくる。
それだけで十分で、それがこの庭の魅力。


土が悪くても土は捨てず、生きた土に戻すために、水と空気が動けるような手助けをする。


急斜面には、敷地で間伐された枝葉を利用して柵(しがらみ)を組む。
庭にしみ込んだ水や山の絞り水が土中を抜け、柵からしみ出て沢に注ぐ。
木の根が張れば、土は自然に落ち着いていく。
柵が腐れば土に還り、その頃には草や木の根が入り込み、土を抱き込んでくれているだろう。

木が育てる環境ができれば、後は自然に任せる。
剪定も雪囲いもしないし、要らない。
なぜなら、ここは山に還る庭だから。
八つの森に囲まれた木の家。
鳥が訪れ、風が舞えば、木々は自然に増えていく。
末広がりのごとく、森はまだまだ広がるでしょう。
来年の芽吹きが楽しみです。
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