ドウダンツツジの透かし その後

剪定前の写真を再掲します。
手を入れる前は丸く刈り込まれていた1mぐらいの木。
背景が少し寂しかったことから、徒長枝をそのまま伸ばして背丈を高くし、目隠しの役目を持たせることにしました。

剪定後。
「刈り込み」という剪定法は、枝の萌芽を促して枝葉を密生させ、整形樹形にボリュームを持たせるやり方ですが、混み合った状態で枝を伸ばすと枝がか細くなり、雪や風で折れやすくなります。
高さを出すということは風の抵抗も高まるということなので、多少の枝抜きを施して内部に空間をつくり、採光や風通しを良くすることで枝の強度を高めていきます。
刈り込みの木は枝が絡み合っているため、そうした「絡み枝」を『野透かし』の要領で抜いていきますが、一度に枝を抜きすぎると不定芽が大量発生し、互いに絡むことで支え合っていた枝が倒れたりということも起こります。
樹形変えは一回にしてならず。
剪定量を加減しながら、段階的に手を入れていきます。
刈り込み物は内部に枯れ枝が多いので、それらも剪定。
時間にして、1時間程度の作業です。

2年目の冬。
もともとの樹冠(丸い形だった頃の姿)から1.5倍ほどの高さに成長しました。
樹形を整えることはせずに、前年に残した絡み枝を付け根から数本外すだけ。
所用10分程度の作業。

そして、3年目の今年も軽く枝抜き。
ひょろひょろだった枝が徐々にたくましさを増し、のびやかな姿になってきました。
樹高も人の背丈程度になってきたので、目隠し効果もかなり出てきています。
目線の高さに枝葉の混んだ木があると圧迫感を受けますが、透かしで適度な空間を作っていると目線が抜けるので、そうしたこともありません。

裏側から見ると、枝の流れや内部の空間の様子がわかります。
丸くて背の低かった木が、すらっとした株立ち状の木になってきました。
玉物の刈込は、上に伸びようとする樹木の力を抑える方法ですが、ここではそれを抑えずに、上に伸ばしてあげています。
外側から細かく手を入れると時間が掛かりますが、枝抜きは木の裏側から行うので、時間の短縮にもなります。
手を入れる時間が短くなるということは植木屋の掛ける手間が少なくなるということで、経済的な管理ができていくということでもあります。
今回は、所要5分。
年々手を入れる時間が掛からなくなってきています。
透かしは手間が掛かると思われがちですが、目指す形になれば仕上がりも早い。
そして、このドウダンの目指す形は「自然樹形」。
丸い形になる前の本来の姿に戻してあげること、木がのびのびとして、そこでなりたい姿にしてあげることが目的です。

こちらは、3年間の枝の生長を表したもの。
作庭後何年も経つと、木が大きくなったり枯れるものも出たりと、いろんなことがあります。
そうした時、毎年同じ手入れを繰り返すのではなく、状況に合わせて樹形を庭に合わせていくということも大切なこと。
「切る」のではなく、「伸ばす」ということも庭の手入れのうちということです。
このドウダンの上に差し掛かるモミジの枝も、剪定せずに右方向に張り出させています。
数年後に家から見た時、ドウダンとモミジの枝が織りなす緑のカーテンができていれば素敵。
その状態を理想として、少しずつ手を入れていければと思います。
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