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秋田県能代市で作庭を行う福岡造園のブログです。 日々の仕事や活動等の最新情報を載せていきます。

街路樹サミットに参加して 上(地元紙寄稿記事)

2016年02月11日
街の緑6 講演など 0
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遅くなりましたが、11月のブログで告知しておりました「街路樹サミットin立川」が先月の9日に開催され、東京都立川市の昭和記念公園まで出かけてきました。
2月9日付の地元紙にそのレポートが掲載されましたので、報告を兼ねて紹介したいと思います。

samittto 1

kakudai.jpg(クリックで拡大できます)
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街路樹サミットに参加して 上

日本初の街路樹サミット
1月9日、国営昭和記念公園花みどり文化センター(東京都立川市)を会場に、「街路樹サミットin立川」が開催されました。
このシンポジウムは葉画家の群馬直美さんの発案によるもので、「街路樹」を冠したサミットは日本で初めて。
それが、公共樹木を管理する行政や専門学会、関連業界の側からではなく、緑を愛する一市民の呼びかけで実現したということに、大きな驚きと意義を感じています。
サミットは「街路樹葉っぱの詩」という群馬さんの個展と併せたものですが、ブツ切りや伐採が相次ぐ街の木たちの行く末を按じ、木も人ものびのびと暮らせる未来を願って企画されました。
当日は、そうした思いに共感する150名近い人たちが、北は秋田県から南は山口県まで、定員をはるかに超えて会場を埋め尽くしました。
その顔ぶれは、国・県・市の行政職員の他、造園家や作庭家、景観デザイナーなどの造園関係者、都市の緑や自然を考える環境団体、緑に関心を持つ議会議員や一般市民など多種多様。この、職域や地域を超えた街路樹の集いが、日本の緑文化の発信地で開催されたことも、とても意義深いことでした。

1上の➀


基調講演「街路樹を考える」~大都市東京の管理システム~
街路樹サミットは、2つの基調講演とパネルディスカッションの二部構成で行われました。
第一部では、東京都江戸川区で街路樹管理に携わられた西野哲造氏(現公益財団法人えどがわ環境財団)が講演。
街路樹を取り巻く課題を上げながら、区の方針や取り組みを紹介しました。

4上ー④
(街路樹に関する課題 西野氏のスライドより)

〇江戸川区の取り組み
江戸川区は東京23区で最も街路樹の多い所ですが、課題を解決するための機関として、官民学が参画する「街路樹のあり方検討委員会」を発足。
そこで作成された管理指針をもとに、街路樹と公園の一元管理、街路ごとの目標樹形(姿や大きさ)の設定、プロポーザルによる事業者選抜と選抜事業者への継続管理委託、剪定の際の仕様確認(見本剪定)の徹底と事業者に対する定期的な技術審査や評価の実施、伐採木や落ち葉を捨てずに利活用する緑のリサイクル、歩道の根上がり対策、緑のボランティアの育成、HPや広報誌を使った緑の啓発など、多様な施策が展開されています。
区内には公園や緑道も多く、隣接する街路樹と一体的な計画管理が行われていることから、それぞれの緑がバランスよく調和しています。一般的に、街路樹は緑化の専門知識を持たない道路の課が計画し、公園管理の部署との連携も少ないことから、公園と街路樹の景観的な繋がりが悪かったり、公園の緑が自然でも街路樹がブツ切りになっていたりなど、統一感を欠いた街並みになることが多く、こうした江戸川区の体制は非常に参考になります(参考「東京街路樹紀行4江戸川区)。
また、一般的な街路樹では、虫が発生すると木を丸坊主にしたり薬剤散布で対処したりしますが、江戸川区ではこまめな点検により発生源の枝を剪定するなど、早期の対処で拡散を防いでいます。
虫を殺す薬は人間にとっても毒。沿道住民や歩行者に健康被害が及ばないような配慮を行っていることも、江戸川区の優れている所です。
時々、駅前の街路樹がムクドリ対策で丸坊主になっている都市も見かけますが、江戸川区では鳥の習性を研究し、枝切りの対処は一時的なものにしかならないことから、「夜の間だけムクドリとの共生を」と区民に理解を求めるなど、動物との共棲を考える優しさもあります。
(※江戸川区の病害虫防除 ムクドリ対策

〇街路樹は街の顔であり、住む人の心を映す鏡
区の街路樹はとても丁寧に手を入れられていますが、これは、そこに予算を掛けられる理解が市民や議会にあるということで、美しい緑の街並みは、官民業の意識が総じて高いということの証です。
そして、こうした多岐に渡る取り組みは、管理システムの充実と、それを理解できる専門職員の積極育成によって支えられています。
江戸川区には、全国各地から視察や研修が絶えず、講演依頼も多いとのこと。今回の講演は、区の緑のスポークスマンとして啓発に関わってきた、西野氏ご自身によるお話。終始笑顔で話されていたご様子に、緑とふるさとが大好きな気持ちがあふれていました。

                                    能代市二ツ井町 福岡徹 (福岡造園代表作庭者)
3上ー③
(講演をする西野哲造氏)

※参考 江戸川区の街路樹(江戸川区役所HP)、緑の先進地視察

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FUKU
Author: FUKU
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