街路樹サミットに参加して 下(地元紙寄稿記事)


地元紙に掲載となった「街路樹サミットに参加して 下」です。
下記のその原文をご紹介します。
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街路樹サミットに参加して 下

パネルディスカッション「命の尊厳」
第二部では「街に木を植えるのは何のため」をテーマに討議。
司会進行は、造園専門誌で街路樹問題を提起してきた豊藏均氏(隔月刊誌『庭』前編集長)。
パネラーは、
埼玉県久喜市で全国初の街路樹条例を提案可決させた石川忠義県議(前市議)、
子育て世代向けの冊子で街路樹問題を取り上げ、地元行政に提言を行ったフリーライターの大武美緒子氏(さいたま市)、
造園や社会奉仕団体で街路樹の啓発を行う作庭家の河合耕一氏(富山県)、
そして、基調講演者である西野哲造氏と私を加えた5人。
編集者として、議員として、子を持つ母として、団体役員として、行政関係者として、一植木屋として、市民にも様々な立場があり、置かれた立場でできることがあります。ここでは、パネラー各自の活動紹介と共に、ディスカッションを行いました。

街に木を植えるメリット
討議は、豊藏氏の「街路樹は法令上『道路の付属物』となっているが、街路樹に使われる「維持・管理」は建造物に使う言葉。樹木には『保護・育成』を使ってあげたい。人間と同じ『命』ある街路樹のあり方を考えていきましょう!」との言葉を皮切りに、「なぜ街に木を植えるのか」についてパネラーが発言。
〇街路樹は『街並み景観の創造、木蔭の創出、ヒートアイランドの緩和、歩行者を守る日傘や雨傘の効果、吸塵、防火、防音、都市の雨水を浸透させる排水機能』など多様な役割を持つ。私たちはその恩恵を享受しながらも、樹木が生きるために必要な「落葉」の生理に理解が向かない。この啓発として、地元で「街路樹感謝祭(落ち葉掃除)」を開催、5年目の昨年は造園業界を巻き込み、全県一斉開催を実現した」(河合氏)
〇「街に木を植えるのは、庭に木を植えることと同じ。自分の街を自分の庭だと思えば、街路樹にも自分の庭の木同様の愛着がわく(福岡)」。
河合氏の「街路樹感謝祭」には大きな拍手が起こりました。富山県の落ち葉掃除は、「木々への恩恵に感謝して」をテーマとする能代市官庁街落ち葉掃除がヒントになっているそうです。

木は切るために植えたのか
〇剪定には「刈り込み」と「透かし」があり、街路樹の効果を活かすには「透かし」が最善(河合氏)。
〇チェーンソーで太い枝を切り落とされる木を見るととてもつらい。行政の対応は誠実だが、いつもそうなる。木はなぜ街なかで枝を伸ばせないのか。手足をもがれたような木の姿を、わが子にどう説明したらいいのかわからない。(大武氏)
〇むやみな剪定を規制する街路樹条例は僅差での可決で、多数のクレームが市民から寄せられた(石川氏)
樹木を生き物として見る感覚が大切で、必要として植えた樹木の必要性を説く条例に多くの反対があることに驚きました。
街路樹の意識変換
〇「条例に『適切な樹種選択』を盛り込み、街路樹を「自然生態系の一部」と捉えて樹種や大きさに多様性を持たせ、街路樹から街路樹へと野鳥が移動できるような環境を目指した」(石川氏)
〇「街路樹を里山と同じような視点で見てあげたい」(大武氏)。
久喜市の条例は、同種同大の高木を等間隔で植える従来の街路樹には無い発想で、街路樹は里山同様に人の暮らしと自然を繋ぐ媒介。生態系としての緑を繋ぐ考え方に『エコロジカル・コリドー(生態的回廊)』がありますが、街路樹を大きな緑の一部として捉えた時、そうした役割も大切になっていくでしょう。
終わりに

質疑応答では活発な意見が続出、
「街路樹の落ち葉を堆肥化して活かす自治体もある」、
「街路樹の日を設けたい」、
「私の街の街路樹も悲惨。なんとかしたい」、
「地元でもこうした機会を作りたい」、
「市民の行動で街路樹が変わることを知った」、
など、参加者の関心の強さと熱気が伝ってきました。
すでに地元で活動を始めた人もいると聞いて、サミットの思いが全国に飛び火したことを感じています。
今回の「街路樹サミットin立川」は、2010年に能代市民プラザで開催された「小さな街路樹サミットin能代」という展示が原型、プログラムには「けやき公園」の写真が使われています。
また、パネラーの大武氏は登山専門誌の取材で白神山地や七座山を訪問、石川氏も能代の街路樹視察に訪れるなど、能代市にとっても非常に縁の深いイベントとなりました。
最後に、このサミット開催に向けて、厳寒の能代に足を運ばれた群馬直美さんに、心からの感謝を申し上げてレポートを終わります。
福岡徹 能代市二ツ井町 (福岡造園代表者作庭者)
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「街路樹サミットに参加して」、上・中・下のご精読、まことにありがとうございました。
「世の中を変えるのは、若者・ばか者・よそ者」と言いますが、これは緑のことでも同じことで、会場には、多くの若い方々や緑に一生懸命思いを注がれている人たちがたくさん集まられていました。
中にばかりいると、井の中の蛙になり、同じことの繰り返しになります。
「よそ」とは外のことで、第三者の視点が必要だということ。。
外に出て学び、外の人たちと触れ合うことで刺激になって発想が変わり、そうしたよそ者感覚で学んだことを地元に還元し、ふるさとに合わせた方法を編み出していけばいいのだと思います。
「若者・ばか者・よそ者」の三者に共通するのは『高い志』。
今回のサミットで、志高い皆さまとご一緒させていただけたのは、本当にありがたいことでした。
最後に、そんな皆さまとの記念写真を紹介して、サミットの報告を終わります。

※写真撮影 長澤隆志氏(街路樹サミット撮影スタッフ)
※今回紹介したサミットのレポートはごく一部です。
サミットに参加された静岡県の造園家、ナインスケッチ代表の田中俊光さんが、とても丁寧に、サミットの様子をまとめておられますので、ぜひこちらもお読みください。→田中さんのブログ記事「2016街路樹サミット in 立川」
また、Facebookでも、サミットに参加された方々がたくさんの記事を投稿されていますので、ご覧ください→#街路樹サミット。
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