杜の木漏れ日

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空間に伸ばす~制限のある庭でも枝を伸ばす方法~

今週は、落葉樹の冬季剪定を行っています。
道路や隣地などに枝が越境したり、樹木が大きくなって木同士が接触を起こしてきたりなど、あまり広くないスペースで成長した樹木はコンパクトに樹形縮小(ブツ切り)されることが多いですが、一度に木を小さくすると翌年は徒長枝ばかりが出て樹形を乱します。
徒長枝が大量に出るということは、樹木が栄養をつくるための枝葉が不足しているということで、一度に枝を切り過ぎているということです。
今回は、切る所は切っても残す所は残すという、樹木が養分生成を行う力を確保させながら、庭の景観にも配慮するという方法の紹介です。

ザクロ1 ザクロ2

道路に越境するザクロの木。大きな車が通れば枝が折れるかもしれません。
また、屋根からの落雪もあるので、雪の多い年は家側の方の枝も折れてしまうでしょう。
かといって、屋根下で丸坊主にするのも格好悪い。。
さて、ではこの木はどこに枝を伸ばせるのかを考えると、前後は駄目でも、上方と左右なら空いています。
ということで、前後の枝を幹元から外し、上部は切り詰めずに残しました。

ザクロ3 ザクロ4

正面から。
前側に出ていた太い枝を数本抜くと、このぐらいになります。
左右の枝は、左側のウメモドキにかぶさる枝を1本だけ剪定しています。
今後、樹高を下げたくなった時などは、これから出てくる左右に伸びる枝を育てながら、徐々に、上に伸びる枝と交代させていきます。

サクラ1-1 サクラ1-2

隣地近くにある桜の木。
越境はそれほどでもありませんが、今年枝が伸びれば、境界を越えるでしょう。
建物側に太い枝が向いているとすぐそこから伸びるため、そうした枝を幹の付け根で剪定します。
建物側には伸ばせない分、空いている左側の空間に枝を張らせていきます。
また、あまり背が高いと風の影響を受けるため、今後、徐々に樹高を下げていくことになるでしょう。

五城目 街路樹

こちらは五城目町にある「片枝樹形」のケヤキですが(わかりやすいように写真を反転させています)、このようなイメージで、枝を伸ばしていきます。

サクラ3 サクラ4

建物側に向いた太い枝をすべて幹元から切ると、木に登るための足場が無くなるので、越境しない角度の小枝が付いている太枝は残していきます。
右の図は、弘前公園の桜フォーラムの際のスライド資料ですが、太い枝や幹を切る場合は、太い枝の1/3程度の枝を残すと腐食が入りにくいと言われています。
またこの場合、水平に切ると枯れ下がりを起こすため、残す枝と平行角度で剪定します。

サル3 サル4

庭の中央付近にあるサルスベリ。
四方に枝を広げていますが、後ろにはクロマツがあり、枝同士が接触を起こしています。
クロマツは隣地に近く、越境する枝を切らなければなりません。
そして、このままどちらの枝も伸びるとどうなるかというと、サウスべりの枝のほうが勝ち、松の枝が弱っていきます。
松は仕立て木なので、剪定すれば元の大きさまで小さくなりますが、松の上にサルスベリの枝がかぶさったままだと、日照不良を起こすでしょう。
サルスベリはこれまで刈り込まれていたようですが、開花する夏ごろには枝が伸びているので、今と同じ状況になります。
このままでは同じことの繰り返しになるので、松側のサルスベリの太い枝を3本、幹から抜くことにしました。
その代わり、残した枝は刈り込まずに、支障の無い家側の方に伸ばしていきます。

サル1 サル2

正面から。
後ろ側の枝を抜き、枯れ枝を外しただけなので、樹冠は変わりません。
ここから枝を伸ばし、自然樹形へと導いていきます。(参考 サルスベリの自然樹形

サル5

後ろ側から見た所です。
サルスベリの後ろにはマツやツバキも見えますが、このぐらい空間ができると、彼らも少し息を付けるでしょう。

サル6

枝を短く切り詰めていたサルスベリを、同じやり方で再生したものです。
今回剪定した木も、3年もすればかなりやわらかな姿になっていくでしょう。
維持する庭は変わらない雰囲気を楽しめますが、育成する庭は、木々の生長に楽しみが持てます。

モミジ3 モミジ4

最後は、境界際のモミジです。
このモミジは、カイズカイブキとクロマツに挟まれるようにあり、すぐ後ろは隣地。
3方に枝を伸ばせない状況にあります。
でも、前方と上方は空いている。

モミジ1 モミジ2

ということで、越境する側の枝と左右に伸びる枝を幹から抜き、残した枝は切り詰めずに前方上方に伸ばすという、シュッとした体形になりました。


自然界の樹木は、互いに共生できる樹種同士でバランスを取り合いながら共存していますが、庭はそうではないことの方が多く、
境界や建物、成長度合いの違う他の木などと共存していくための調整として、「剪定」という方法があります。
窮屈になる所は多少の我慢をしてもらいつつも、全部を窮屈にするのではなく、木がのびのびできる所も作ってあげる。
今回は、冬に行う落葉樹の、そんな方法をご紹介しました。

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