街路樹剪定勉強会レポート

本当に人が集まるのだろうかと不安でしたが、市役所関係課の皆さま、市議会の皆さま、市民団体の皆さまから20名近くのご参加を得、無事開催することが出来ました。
今回事業担当者からの挨拶。虎の巻片手ですいません。

今日の次第です。
今回の勉強会には、「隔月刊誌『庭』企画・編集 (有)龍居庭園研究所」様からご後援をいただきました。
また、資料提供にご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

実際の枝と写真を使っての剪定説明。
皆さんに「剪定は何のために行うと思いますか?」と質問しながら、本来、木には剪定は不要であること、切らないことも管理のうちであることをお話し、剪定とは、人と木、木と木が共生するための調整法であることを説明しています。
また、「透かし」と「刈り込み」を実演しながら、その剪定法の目的と、その剪定をすれば枝がどう伸びるのかも実物で見ていただきました。
刈り込み剪定とは、切られることで萌芽する木の性質を利用し、ボリュームある人工的な樹形をつくるために行うもので、落葉広葉樹の街路樹にこの刈り込みをすれば、ますます枝葉が増えて落葉が増えるということを、わかっていただけたのではないかと思います。

芯が乱立したイチョウを下から見上げた写真。
ブツ切りした数年後には枝が混み合って、こんなクモの巣状態になるという説明をしています。
「こんなふうになると、いくら職人でもどうやったらいいか真剣に悩む。手が止まる。新聞の街路樹剪定の記事なんかではよく、『手馴れた手つきで剪定』なんてことを書いているが、そんなことはありえない。自分の引くノコギリで木の一生が決まるのかと思うと、ノコギリを持つ手が震えるのだ。木は正直。下手な剪定はそのまま木に表れる。」というようなお話をしています。
こんな風に悩む中での判断も技術のうちなのですが、現在の役所の剪定は、業者に悩むという仕事をさせません。
悩むのは、木に対しての愛情と誠意、植木屋の責任と誇りがあるからです。
ブツ切りは、樹形を崩し、木の生理を狂わせ、木を弱らせ、落ち葉を増やし、毎年のブツ切りに予算を使わせるという悪循環を招きます。
「悩むこと=予算が掛かる」ですが、無駄な予算を掛けないためにも、ブツ切りは絶対してはいけないのです。
この項では、高田造園設計事務所さんの「樹木剪定は何のため」という資料を使わせていただきました。
(高田さんの記事はコチラですhttp://www.takadazouen.com/newsletter/newsletter_01.html)

腐りの入らない切り方を説明しています。
実際の枝で、樹皮の切り口が再生している所、再生しかけている所、雑な切断により再生できずに腐りが入っているところなどを見てもらいました。
この項では、植吉さんのHPの記事、「理想的剪定法(CODIT理論)」と「樹木に空洞が出来る理由」を資料として説明させていただきました。(植吉さんの記事はコチラですhttp://www.uekichi.net/niwaarekore/index.htm)

剪定法の説明後、能代の街路樹の現状を見ていきました。
今年5月、萌芽後に剪定された県道のイチョウ。
芽出し後に落葉樹の枝葉を大量に切るということが、どれほど木にダメージを与えるかということを説明しました。

能代に残る自然樹形のイチョウ。
担当課の方の話によると、昨年、会で行った市長対談を活かし、このような自然樹形のイチョウには手を付けないようにしているのだそうです。
対談の成果が実際に生かされていることを知り、嬉しい限りです。
それにしても、能代にイチョウが多いのはなぜでしょう?
ここで、国県市道とも、これだけ能代にイチョウが多い理由を参加者の皆さんに聞いてみましたが、能代地区に住まれている方でも、それを知る方はわずかでした。。
能代にイチョウが多いのは、能代がこれまで何度も大火に会ったことなどから、防火樹のイチョウを植えたということがあります。
防災のために植えた木を防災のためと短く切り、防災の役を果たさない姿にしているのは本末転倒です。
木の生理を考えない剪定を行うことで木が弱り倒木の危険が増し、事故へと繋がるのでは、何のための防災なのかわかりません。
なぜ能代にはイチョウが多いのか、日本海中部地震の日に防災訓練などを行うように、大火に会った日などに、市民の皆さんに伝えることも必要なのでは?ということも、ここでお話しました。

11月の官庁街での落葉掃除。
「ゴミのない美しい街を作る運動」として市が行うイベントですが、
「落葉はゴミなのか?世界遺産白神山地の落葉は宝物と言うのに、道路に落ちる葉をゴミと言うのではあまりにも心が貧困。能代はただ白神山地を活性化や商売の道具として利用しているだけと思われても仕方がない。落葉をゴミと言う子供は居ない。こんな機会に、落葉に対するねぎらいの気持ちや樹木への感謝の気持ちを市民に伝えなければ、いつまでたっても苦情が来るだけだ。」
など、ちょっと厳しいこともお話しました。

市立図書館前のプラタナス。
この図書館の官報名は「プラタナス」と言いますが、このプラタナスは以前ここにあった能代高校の校庭の木を残したもので、それがこの官報名の由来となっています。
大事な木だったら大事にしなければなりません。
こちらの管理は教育委員会とのこと、今回の勉強会は課同士の連携を図ることも目的としていましたが、てっきり公園課の管轄と思い、教育委員会さんには案内していませんでした。
でも、こんなことからも、連携の必要性を感じていただけたかと思います。

先進例として紹介した江戸川区の広報です。
この区には街路樹係という街路樹専門の係があって、業者の実際の技術審査をしたり、この広報誌のように区民に緑の大切さを伝えることもしています。
ただ苦情を受け付けてブツ切りするのではなく、樹木の素晴らしさを伝えなければ、街路樹に対する理解は広がりません。
業者の技術を高め、区民の意識を啓蒙するこの区の方針は素晴らしいと思いました。
直接担当課の方とお話しましたが、あまりのレベルの高さにこちらが驚きました。
(江戸川区の広報誌はコチラですhttp://www.city.edogawa.tokyo.jp/kouhou/h20/200810/200810_8.html)

これも先進例。
秋田県五城目町の街路樹です。
国県町道ともにケヤキで統一され、管理も全て町が行っています。
住民の苦情にはやはり苦慮されているそうですが、そんな中でも、ケヤキをケヤキらしく、景観に配慮した管理を行なっているそうです。
こちらは直接役所にお邪魔して来ましたが、県内にこれほど樹木の知識に詳しい役人さんがいるとは思いませんでした。
突然の来訪にもかかわらず親切にご対応くださり、写真まで提供していただきました。

男鹿市役所前の県道のプラタナス。
元はブツ切りのようでコブが出来ていましたが、今は枝を張らせ、枝先を切らない柔らかな剪定に変えています。
能代の県道のプラタナスは真夏に葉を残さずに切るような剪定ですが、同じ県の仕事でも、各地でいろいろと違うようです。
市役所に入って聞いたところ、男鹿は観光地(国定公園)なので景観にも配慮しているとのこと、能代は世界遺産の街です。

雨が小降りになったので、外に出ます。
中で説明したことを、実際の街路樹で確認していきました。
「いくら透かしでやっても、切り過ぎると木は荒れる。荒れているのは木が植木屋に「お前の手入れはヘタクソだ。」と言っているのだ。この木を剪定したのは私。私が木から怒られているんです。」と言うような話をしています。
この後、意見交換となりましたが、担当課や商店会の方のお話から、街路樹が夏祭りの運行等の支障になるということなど、能代の街の事情というのもわかりました。
そんな中で、木をどう活かしていくか、前向きな話が出来たのではないかと思います。
今後また、このような機会を持ちましょう!ということで、今日の勉強会、これにて終了です。
皆さん、本当にお疲れさまでした。
3時間ぶっ通しで喋り続けたせいか、喉がカラカラ、もうクタクタですが、集まっていただいた皆様と、一緒に会をつくり上げたみんなへの感謝でいっぱいです。
たった半日の勉強会でしたが、ここまでの道のりを思うと、開催できたことだけでも感慨無量のものがありました。
最後になりますが、今日の挨拶の虎の巻です。↓
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ご挨拶
今日はお寒い中、せっかくのお休みのところご参加いただきまして誠にありがとうございます。
今日の勉強会は、私ども能代山本郡内の若手造園関係者の勉強会である「緑の景観を考える会」の主催となりますが、私は、今回の事業を担当させていただきます福岡と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
普段は現場で地下足袋を履き鋏を握る職人ですので、実はこのような形で喋るのは一番苦手とするところです。
虎の巻片手の進行になると思いますが、どうかお許しください。
始めに、簡単にこの会の説明をさせていただきますが、この会は別名を「庭の会」とも言います。
会員4人の小さな会ではありますが、庭の勉強と共に、自分たちの技術や知識をふるさとのために活かせたらという思いで、現在さまざまな活動をしております。
昨年は、強剪定が繰り返される市内の街路樹の管理のあり方などについて、ランチミーティングを利用して、市長さんや担当課の課長さんたちとお話させていただき、改善策などを提案させていただきました。
その提案の中には、樹木を傷つけ、景観を壊す、植えた木よりも大きな植栽支柱の改善も入っておりましたが、その後に会で開催した支柱講習会では、市役所や自治会の方にもお声掛けして、富根地区の公園の百数十本を全て直させていただきました。
また、この講習会での内容は、昨年新設された二ツ井の体育館の公園の植栽にも活かされました。
とても小さなことですが、小さなことをきちんとやるという所に本質があります。
この醜い支柱も全国の公共工事で行われていることですので、能代がこのようなことを全国に先駆けて取り入れたということは大変素晴らしいことではないかと思っております。
支えは脇役で黒子ですから目立ちませんが、この二つの公園に行くことなどがありましたら、目を留めていただければ幸いです。
会場の目の前にはイチョウの街路樹がありますが、こちらもまた、私どもの会が、地域局のご協力を得ながら奉仕で試験剪定をさせていただいている所です。
通行の支障になる枝の剪定など、毎月の点検や枝の伸長の観察、落葉掃除などをさせていただいております。
今日はこの街路樹をテーマとした勉強会ですが、この問題もまた全国的な社会問題となっております。
最近は能代でもこの問題に関心を持たれる方が増え、この夏に畠町のプラタナスがブツブツに切られてしまいましたが,真夏に葉を一枚も残さずに切ることの異常さに疑問を抱いた一市民の方から北羽新報さんに投稿がありました。
この記事が発端となって、9月市議会では、多分、能代では初めて街路樹のことが質問として取り上げられたのではないかと思いますが、「市は、市内の街路樹管理について国や県と連携しているか。剪定の基準はどういうものか。」という質問がありました。
また、このような一連のことを受けて、先月には北羽新報さんが一面2面で大きく、「問われる街路樹の管理」という記事を書かれました。
私どもの会では、このような世論の盛り上がりを今だけのもので終わらせず、実際の街並に活かしていただきたいとの思いから、今回の勉強会を企画するものです。
ありがたいことに、今日は多方面からさまざまな方がお見えです。
この問題は課や自冶体を越えなければ解決できない問題ですので、今日は皆さまが連携して協議する場としても企画しております。
能代の街路樹を美しく街に存在させていくためにはどうしたらいいかということを前向きに考えて行く勉強会にしたいと考えておりますので、日頃の上下関係などに関係なく、忌憚の無いご意見をお願いしたいと思います。
最後になりますが、今日の北羽新聞の記者メモに八森の酒蔵さんのことが書かれていて、「この仕事に命を掛けている。」という言葉に感動しました。
同じく自然素材を扱う職人として、我々4人もまた、この仕事に誇りを持ち、命を掛けています。
今日の勉強会でお話しすることはすべて、我々が日々の仕事の中で、命がけで木と接してきた経験の中から得た知識と技術です。
我々が命がけであるように、木もまた、命がけで生きています。
現行の国の方針では街路樹は電柱や標識と同じく道路の付属物という扱いですが、まずは、木は生きていること、人間と同じ命ある生き物であるということを頭に入れた上で、今日の勉強会に臨んでいただければと思います。
世間知らずの若い職人4人がなけなしの小遣いを持ち寄って開く勉強会です。
なにかと行き届かない所ばかりかと思いますが、本日はどうかよろしくお願いいたします。
以上
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