柵(しがらみ)と枝流れ

昨年、庭の表面と地中の水を逃がすために掘った沢。
こちらの庭にはこうした沢が4本走っていますが、敷地に集まる地下水や雨水のほとんどが沢へと集まり、庭奥へと誘導されていきます。

おかげで、庭内に水がたまることは無く、併せて行った土壌改良の効果もあり、木々は1本も枯れることなく芽吹きの季節を迎えました。

こちらの沢は、土壌改良を行わずに、粘土質残土を盛っただけの状態ですが(昨年3月に撮影した造成時の写真です)、今回は、この山にも木を植えられるように、土壌の環境改善に着手しました。

根が張れるためには、土がやわらかく、酸素を取り込めるような状態になっていることが大事ですが、土が自然の力でやわらかくなるためには、空気に触れさせることが一番。
そうした状態をつくるために、土を切った断面に柵(しがらみ)をつくっていきます。
沢の反対側には草が生えてきていますが、空気に触れて細かくなった土が斜面をこぼれ落ち、そこから生えてきたものでしょう。
硬い粘土の壁には草も生えることができませんが、土が細かく、やわらかになれば草が生え、その草が土を留めてくれるようになります。

まずは、杭打ち。

杭は、昨年、施主さんが敷地内から伐り出していた孟宗竹を利用します。
乾燥して、いいあんばいにヒビが入っていますが、このヒビが、地中に空気をもたらしてくれます。

柵は、割竹を使うときれいに仕上がりますが、ここは山なので野趣的に。
今冬剪定した枝を利用して、太い枝や細い枝を、バランスよく組み込んでいきます。
枝の厚みは20~30㎝程度ですが、この枝が土を受け止め、、表面や地中の水を排水させてくれます。

完成です。
柵の上部は道にして、残土の山との境にも溝を掘って枝を入れ込み、山から流れてくる水を受けて下流へと導きます。
枝でつくった流れなので、「枝流れ」ですが、この枝もまた、柵と同じく土留めの役をしてくれています。

道の両側や残土の山にも竹を差し込み、地中へと空気を送り込みます。

こちらは、同じ敷地内に昨年作った柵ですが、柵の周囲に草が生えてきています。
これは雑草ではなく、土を止めるための「役草」。
新たな柵の周囲にも、こうした役草がやがて生えてくれるでしょう。
そして、土が軟らかくなった暁には、ここにも植樹を行い、柵が腐った後でも、木々の根が伸びて土を留めてくれる。
人力でここまで行うのは大変でしたが、土壌改良材なども混入しないこの山が、自然の力で木が育てる環境に変わっていくのが楽しみです。

完成の後、昨年に提供していた落葉を、枝流れにこぼれてくる土留めとして敷き詰めました。
雨で写真がぼやけましたが、なんとなくいい雰囲気ですね。